It's Not About the Bike
邦題「ただマイヨジョーヌのためでなく」
21歳のとき自転車ロードレース世界選手権で史上最年少優勝を飾り、その後も順調に活躍中だった1996年、癌にかかっていること、そして既に複数箇所に転移していることが判明。命の縁を垣間見る闘病生活の末に1999年のLe Tour de Franceで世界の頂点に再び駆け上がった男、Lance Armstrongの感動手記。
まあ、闘病ネタは基本的によっぽど脳味噌膿んでない人でなければ誰にでも効くのだけど、もともと世界一男で、病気を克服しもう一度世界一になり、しかも病気になる前よりも強くなった男なのが異色。
Armstrongについてあまり詳しくない人は「Le Tour de Franceを連覇し始めるまえのArmstrongはあまり強くなかった」などと超弩級の寝言を抜かすことが時々あるが、Armstrongが優勝した時の世界選手権ロードには何を隠そうスペインのエースとしてあのミゲル・インドゥラインが出場していて、21歳のArmstrongは当時押しも押されもせぬ世界最強のロードレーサーだったインドゥラインとガチンコ勝負して勝っているのだ。これはただ単に勝ってアルカンシエル(世界選手権勝者だけが着ることを許されるレインボージャージ)を着るより凄いことだ。
それだけの才能の持ち主だったにしても、これだけ闘病したあとでもう一度世界一なんてとても無理。しかしそれどころかパワーアップするのがArmstrong。散々書かれてきた事だが、死の淵をのぞき込む闘病生活を乗り越えた事で精神的に常人離れして強靱になったのが大きいとされている。つまり、辛いことや苦しいことに対して「あの闘病生活の苦しさに比べたらナンボのもんじゃい」と考えられるようになった。一度“死んだ”人間が超人的強さを見せることがあるのは常々指摘されることだが、Armstrongにもこれは完全に当てはまる。
発見時点で肺と脳にも転移済みだったなど、世界の頂点うんぬん以前にあんたよく死ななかったね話で、べつにスポーツ選手じゃなくても一冊の闘病記としてグレート。よくArmstrongの癌について医者が「生存率は1/2」と語ったウンヌンの部分で生存率話が1/3とか20%とかあちこちで上下しているが、この時に告知した医者が後に本音ぶっちゃけたところでは
「既に脳や肺に転移しているなど状況は最悪で、実は生存率は20%すらないような状況だったのだが、本当にそう喋って彼が闘病する気をなくすと何%あってもゼロになってしまうので、あえて高めの数字を告知する事でやる気をださせた」
が真相なのだそうだ。
この画像はもともとNikeのポスターを私がPhotoshopで携帯の待ち受け用にちょちょいとアレンジしたものだけど、写ってるのはLance Armstrong本人。
頭にありますな?凄い切開痕がザックリと。これ、脳癌を摘出した出術痕。
ドラマチックすぎて、2005年まで現役選手だった実在の人物とは思えないくらい波瀾万丈の一代記。同じようにアクシデントから復活し活躍したアメリカ人でもグレッグ・レモンが皮肉屋さんなのと比べると、Armstrongはいかにもテキサス(ものすごいド田舎で、コテコテの古いアメリカ文化が残っている)生まれっぽい人物で、考えてることが分かりやすい。
べつに自転車に興味がなくてもイケる。実際、アメリカでArmstrongブームを巻き起こした本がコレ。
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