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2006年3月12日 (日)

ax lightness ORION

orion_vr




AXライトネスの禁断のブレーキORION
誰か試した勇者はいるのだろうか?日本にも何人かはいそうだね。

とりあえず、2006年3月現在、フルカーボンのブレーキを市販しているのはax lightnessだけだ。ここ数年やたらめったらカーボンパーツを投入してきているCampagnoloでさえ、ブレーキのカーボン化には手を出していない。GIANTもカーボンブレーキを名乗るブレーキを一応出している(確か完成車組み付けのみで単体販売はしていない)が、実際はアルミで出来た本体にカーボンを被せただけの文句なしのパチモンだ。GIANTはそうでなくてもパチモン扱いされているのだから、世界最大の自転車メーカーとして本格派のパチモンを売るのはやめた方がいい(2008年追記:その後本当にやめた)と思うぞ、老婆心ながら。 

とにかく、カーボンパーツにかなり積極的なカンパでさえ手を出していない分野に、ax lightnessはまず世界初の市販フルカーボンブレーキキャリパー「PERSEUS」を発売して皆の度肝を抜き、それに飽き足らずこのORIONも出して来た。

ペルセウスを実用化した実績の上に作ってきただけに更に突っ込んだ作りで、軽量ブレーキとして名高いあのZERO GRAVITY 0G-05ですら前後合計168gあるのに前後合計で100gを切ってしまい、僅か97gしかない。もう水に浮きそうな勢いである。これはびっくりだ。
ただ、気になる点もある。何を隠そう0G-05は私の愛用ブレーキでもあるのだが、これはまだ効く。ZERO GRAVITY BIKESが自称する「DURA-ACEよりも効く」は当社比と呼ばれているところのウソだが、日常使用にも耐えるだけのストッピングパワーとコントロール性があるのは間違いない。たぶん、DURA-ACEの、しかもBR-7800と比べなければ何の不満も感じないと思う。そのくらい完成度は高い。私はZERO GRAVITY Brakeを大変高く評価しているのだが、これはこのブレーキが軽いだけでなく、機能的に落としたところがないからだ。軽量を目指したブレーキなのだから省いても良さそうなクイックリリース機構がちゃんとついていて、しかも05、06とこのクイックで開く量を毎年のように増やす改良を施しているとか、機能を落とすことで軽くする方向には決して向かわない姿勢が好きだ。

ax lightnessの発表ではORIONもただ軽いだけではなくブレーキとしてちゃんと機能するらしいが、これも自社発表であり、さすがにここまで軽いとものがブレーキだけに不気味だ。そして78DURA-ACEから交換なら一気に200g以上軽くなるが、ZERO GRAVITYから交換となると70gしか軽くならない。なんだか勿体ない。

ただ、造形的にわりとイケてるのはポイント高いと思う。ZERO GRAVITYのブレーキはCNC削り出しオーラを全身から放っている点こそポイント高いが、ちょっと肩がいかったような造形で、横や斜めからはそれなりにいけるが正面から見ると微妙に間抜けだ。

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やはりブレーキアーチは肩がストンと落ちている方が格好いいと思うのはCampagnoloのスーパーレコードを見て育った世代だからか?その点ORIONはスマートな造形である。

ORIONから話が逸れるが、軽量ブレーキには

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こんな物凄いの(正直、これは見た目キモチ悪い)もあったりして、自転車趣味の中でも軽量化は大変濃い世界である。ある領域を超えると1g削るのに1000円ノリになってきて、加速度的に費用がかかる。

高いロードバイクをしてよく「バイクが買える」「車が買える」と素人衆がたまげるわけだが、まあ正直なところ「そんなつまらないものと比べて金を出していない」のだな、自転車乗りは。

完成車価格100万円ナリ、Armstrongが山岳ステージで勝つために作られた軽量バイクMadone SSLxだって、私程度でも乗れば良さは分かる。あれは久々に感動した。簡単な理屈だ。軽くてかつ力が逃げないように作られている自転車は、同じ力ならより楽ちんに前に進む。とてもわかりやすい。そしてMadone SSLxは決して市販車最高価格ではない。

ガソリン焚いて走ってるモノと違って出力が100%自分持ちであるこの世界では、パワーアップのためと称して重くする事は許されないのである。重くなった分だけ余計にガソリン焚いて馬の数増やしとけばノープロブレム、とは行かないのだ。そのようなゴマカシはきかない。故に、車であればF1、二輪であればモトGPの世界でしか使われないようなクラスの製品であるORIONのようなモノが市販までされてしまうのである。

もっとも、これには
UCIの規定 1.3.007(形式)
の、

自転車およびその付属品は、サイクリングをスポーツとしている人が使うために販売されたか、又は販売できるものであること。特定の目的(競技記録など)のために特別に設計された自転車は認めない

も大きく影響しているとは思うが。自転車競技の場合、非市販品の使用はその時点でもうレギュレーション違反なのである。普通の人は興味もないだろうからあまり知られていないが、オリンピックのトラック競技で使われたレーサー、あれも実際に買えるんですよ奥さん!ちゃんと売ってるんです!いやこの表現は適切じゃなくて、売ってないと違反なんですハイ。この規定のお陰で、自転車乗りだけが金さえ出せばRC211Vに乗れるような恩恵に与れる。どんなバイク好きでも、自分が世界最高レベルのライダーでない場合、RC211Vに乗るにはホンダからRC211Vの供給を受けられるくらいのレベルのモトGPチームを作ってしまう必要がある。1年毎に億単位の金がぶっ飛ぶ。これが自転車なら買えばいいのだ。買って意味があるかどうか別として、Armstrongが駆ってLe Tour de FranceのTTを勝利したTREK TTXもオリンピックの団体追い抜きで日本ナショナルチームが使用し銀メダルを獲得したLOOK KG496も本当に市販している。市販しなければならないルールだからだ。

ORIONの存在も、自転車乗りだけが与れる贅沢の一つなのである。

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コメント

いつも、楽しく、興味深く拝見させて頂いております。
レース現場に携わっていたものとして、UCIの規定 1.3.007は、恥ずかしながら始めて知りました。
これでいくと、ミシュランが契約チームに供給しているチューブラーは、UCIのレギュレーションに抵触しますね。
なんせ、1本パンクしたらその分を取っておいて、必ずミシュランに返却しないと次のタイヤが供給されないそうで、決して市場には出回らないシステムになってます。
TOJ2005の富士山ステージで、実際にシマノレーシングの板東サン(監督)のコメントです。
クリンチャーを全面展開しているミシュランですが、契約チームの多くは、他社にOEMさせたミシュランカラーでマーク入りのチューブラーを使用しています。

投稿: 筑紫@ | 2006年10月16日 (月) 03:03

筑紫@さん、はじめまして。
これからもよろしくお願いします。
いずれ何らかの目的でメンテ依頼をさせていただくかも知れませんので、その折りはよろしくお願い致します。

ミシュランのチューブラー問題についてですが、あれはミシュランが作っていないのが公然の秘密ですね。パナソニックのミルラムスペシャル(これはゴミタリア製のOEM確定)と同じくゴミタリア製とされていますが。思うに「ミシュランは市販商品を購入し、それにミシュランマークを入れているだけである」と説明して非市販品使用禁止規制をクリアしているのだと思います。

投稿: LIVESTRONG 9//26 | 2006年10月19日 (木) 21:43

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