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2006年3月10日 (金)

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?

あと30年経っても、この作品は輝きを失わないだろう。

奥菜恵、山崎裕太の二人にとっては今のところ生涯最高傑作ではないか。
岩井俊二監督は、まだ一本の45分ドラマに過ぎなかった撮影当時、出演者に

「今しか撮れない」
「二度と出ることはできない」

等と説明していたそうだ。子供だった出演者たちにその意味は全く分からなかったようだが、まさにその通りだろう。リメイク不能の作品である。
出 演者もそうだが、舞台装置として非常に大きな役割を果たしている駅舎は「少年たちは花火を横から見たかった」でも取り上げられているように全面建て直しと なってその面影さえもなく、撮影された校舎も改築済み。ラストで登場する灯台さえ建て直され別のものになっている。この作品の世界に惹かれ撮影現場を訪れ た人の多くがそれらの事実に愕然とし、この作品の世界はこの作品の中にしか残っていない事に気付くのだ。僅かに釣具店が残っている程度である。

「後半は夢の中の話」であるとか筋がむちゃくちゃであるとか一面的に解釈してしまう人が意外といて、残念なことだ。私にすればこの話は最初からずっとおとぎ話である。
ヒロインたるなずなは最初光の中から浮き上がるように現れ、他のクラスメートは全員自分の足で登校してくるのに彼女だけは登校しない。いつの間にか忽然と教室の中に座っている。そしてあのクライマックス。

彼女は何処へ行ったのか?
最初からいなかったのである。

少年期における、本人にさえあやふやで言葉にしたり行動に移したりできない淡い憧れを映像化した存在が彼女なのだ。生ある生をもたない、幻の「像」である。

プールのシーンは映像美が洪水のように溢れ出て、まさに息をするのも忘れるほど圧巻。
たった一度だけ使われるスチルも見事だ。

REMEDIOSの音楽も見事で、歌手としては必ずしも成功しなかった彼女だがREMEDIOSを名乗るようになってからは名曲を数々作り上げた。今でもBGMとしてよく使われる「Island」はじめ、この作品の中に流れる曲たちを「あ、これ聞いたことがある」と思う人は多い筈だ。プールのシーンで使われる「Forever Friends」は、映像の素晴らしさと歌の良さが相乗効果を生んでいる名曲だ。

子供時代にいい想い出がたった一つでもあるなら、何回でも見直せるハートウォーミングな作品。

「セーラームーン」とか「観月ありさ」とか時事ネタが微妙に混じっているが、細かいことは気にしないように。

限られた予算の中でよくぞここまで作り上げたの一言で、岩井俊二の天才が最も迸った作品だと思う。私も地上波放映当時リアルタイムで見たくちなのだ が、これほどの作品が普通に地上波放送されていた時代があったのは、現在のTVを見る限り「かつてそんな奇跡のような時代がありました」になりつつある気 がする。

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