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2006年4月18日 (火)

Bontrager Race XXX Lite Carbon Tubular

2005年の春に手に入れていた。
Lance Armstrongも使っていた…と、思われていたホイールだ。

実際は、最初の1シーズンだけこちらを使い、Race XXX Lite 55 Carbon Tubularが実戦投入可能になった時点で、ランスは見た目が同じ「55」の方をもっぱら使っていたようである。Le Tour de Franceでも「ランスが履いているXXX Liteは作りが全く別物で、前後合計1キログラムを切っている」と噂になっていたから、見た目は変わらない「55」の存在はけっこう簡単にバレていた。特に、ランスが山で勝つために折角作った筈のMadone SLやMadone SSLxをランスが山で使わなかったあたりでもう完全にバレバレだった。

何故か?

UCIの規定の中でももっとも有名な規定の一つに競技用自転車の重量は6.8kgを下回ってはならないと決められており、実際計量も行われるので、SSLxに「55」を履かせてしまうと6.8kgを下回って最低重量違反になるからだ。だからランスは普通のMadone 5.9に「55」を履かせる事で最低重量をクリアしたのである。Cannondaleなどは自社の自転車がいかに軽量であるかをアピールする目的もあって、6.8kgを下回る自転車にわざとらしく天秤はかり用の分銅を貼り付けて6.8kgに仕上げレースに出走させた事があるくらい、今の技術力をもってすれば6.8kgは決して下回れない数字ではない。Cannondaleほどわざとらしくなくても、重りを貼り付けて重量調整を行うのはそんなに珍しい光景ではなくなった。SRMのようなパワーメーターを付けたままで走る選手がゴロゴロいるようになったのも、外して普通のコンポにしたら6.8kgを切ってしまうからだ。それこそ本気になって軽量化競争をやり始めたら早晩4kgを切ってしまうだろう。この規定は軽量化競争になって安全が確保されない自転車でレーサーが走らされる事がないようにとの配慮から生まれたものだ。

さて、そんな雲の上でスーパーサイヤ人同士がバトルやってるような話は、多すぎる諭吉の束が唸り声を上げて夜も眠れない家庭に暮らしている訳ではない私には縁がないのでこのへんで置くとして、話をRace XXX Lite Carbon Tubularに戻そう。

あっさり結論を先に書くと、このホイール、大変良くできている。

この手のロープロファイル軽量カーボンホイールの範は、何年間にも渡ってCampagnoloのHYPERONだった。でもカンパもいきなりHYPERONが作れたわけじゃなくていろいろあった。名門でありながら一時は公然の秘密としてフランスのカーボン専業メーカーであるCORIMAからカーボンリムをOEM供給して貰って自社のハブと組み合わせシール貼って売るような事もやって、そんな色々下積みもあってカーボンリムを自社生産するようになり、HYPERONを出しBORA G3を出して名声を獲得した。新興のBontragerがそのHYPERONをサックリと下回る重量を達成したのだからみんな結構驚いた。このへんはもうアメリカンなバカでも足が速い方が勝ち理論とでも呼んだらいいのか、アメリカ人はアメリカの勝利と正義のためには何でもやるところがあるんで、本気になると何するか分からないから怖いと思う一例だ。
Bontragerは、Lance ArmstrongがLe Tour de France7連覇の間ずっと乗車し、またArmstrong自身が数人しかいない株主でもあるTREK(TREKは会社の方針として株式を公開していない)傘下企業である。更にRolfはBontragerの傘下企業である。このへんは買収の歴史だ。で、Rolfが何の関係あるのかと説明すると、Rolfが持っていた独特のスポーク配置の特許を使いたかったBontragerは、特許の使用について交渉を云々かんぬん…とめんどくさい事はやらずにRolfを会社ごと買ったのだ。豪快でアメリカンな解決法だ。Rolfはスポークの配置に関していくつもユニークな特許を持っていたアイデアマンな会社なのだが、Bontragerは優れたものを丸ごと買う方式で自社製品を改良した。現在、Bontragerが販売するホイールのスポーク配置は全部Rolfの考えたパターンである。数を少なく出来るので軽くなるし、空力に優れる。

力わざで何でもごり押しして豪快に改良してしまうアメリカンなやりかたで作られたこのRace XXX Lite Carbon Tubularの欠点は、名前がウルサイ(笑)こととハブがカートリッジベアリングなことくらいだ。手に入れた後暫く使っていなかったのは単に10速化してから使ってみようと思っていただけの事で、深い理由はない。

産業界ではきょうびカートリッジベアリングの使い捨てが常識でカップ&コーン方式のベアリングなど骨董品・化石扱いらしいが、カップ&コーンはユーザーサイドでのフルメンテナンス及び微調整が可能なので、ちゃんとメンテナンスしてやると凄く長く使えるのと、使うグリスの粘度を変えてチューニングしたりとマニアックな良さがある。
当たり前だが、作る側の論理で行くとカートリッジの方が勝負が早い。勝負にならないくらい早い。カートリッジはベアリングメーカーから買ってきてスポンと組み付けたらオッケーだ。カップ&コーン方式のベアリングなど、製造工程が比較にならないほど増えて部品点数も増えて、組み付けにもそれなりに熟練の技術が必要で、生産性はシャレにならないくらい差がある。現実に、自転車界であってもカップ&コーン方式のベアリングを採用している方が珍しい。カートリッジは回転が悪いようなイメージで見るマニアも多いが「んなら回転のいいカートリッジベアリング買えばいいじゃん?」で豪快に解決だ。変に自分でいいの作ろうとか思わずベアリングで喰ってるベアリングのプロに任せとけば専門家が勝手に改良してくれる発想である。実際問題カップ&コーン方式の場合はチューニングに腕も手間もいるが、ポン付けのカートリッジベアリングならヤレた時は単に同等品に部品交換すればよく、チューニングしたければより高性能なものを買ってきて付け替えればそれだけでチューン完了である。それこそ金を惜しまなければ玉受けもセラミックで出来たフルセラミックとか幾らでも高性能なモノが買える。自転車にそこまでやる意味は全くないと思うが、このくらいのモノになると一切注油しなくても回る。セラミックは熱による膨張がほとんどない上発熱量自体も少ないから使用状況による玉当たりの変化が非常に少なく、またその素材ゆえ「焼き付き」も起こさないので、現状まさに理想のベアリングらしい。カップ&コーン方式とはまごう事なき昔の技術なのである。

そんなわけで合理主義なメーカーは迷わずカートリッジを、こだわってるメーカーだけがカップ&コーンを使っている。自転車用ハブではシマノとカンパだけがカップ&コーンだ。カンパは下位グレードではカートリッジ採用。シマノなんかは一番安いハブにまでカップ&コーン方式を守っているくらいでこのへんはシマノの妙に実直なところだが、世の趨勢でないのは確かだ。

Race XXX Lite Carbon Tubularも当然アメリカンにカートリジベアリングだが、方式はともかく、このホイールは何を隠そう物凄く良く転がる。実は転がりの良さはBontragerのホイール全般に共通する長所とされていて、使ってみて驚きの転がりの良さにBontragerのホイールに惚れ、一筋になる人もいるくらいなのだ。理由までは突き止めていないが異様に良く転がることだけは私もこのホイールで実感した。使っていて気持ちいいのである。めっちゃくちゃ良く転がるから。ハブはDTからOEMしてもらっているものなので何か秘密があるようには思えず、もしかするとかなりいいカートリッジベアリングを使っているのかも知れないが真相は分からない。とにかく、実際に乗ってみて良く転がるホイールなのだ。自転車を吊ってある状態でホイールを手で回して回転が軽いかどうかのような盆栽・床の間の回転性能ではなく、乗車時の回転として明らかに転がりがいい。

だが、このRace XXX Lite Carbon Tubular、ここまで誉めておいてナンだが、私は500kmも走らず手放した。私は主に使った機材の写真はほとんど写真に残しているのだが、このホイールの写真は見事に一枚もない。そのくらい思い入れがなかった。

HYPERONの身代わりになったのもあるが、それよりも何故HYPERONの身代わりにしたか、だ。前述の通りHYPERONより軽く、そして気持ちいいくらい転がる。何が不満やねん?

やっぱり私はカップ&コーンな人間なのである。メンテナンスできないのが生理的にダメなのだ。これはワタシがチェーンにもWippermannのconneXチェーンを使っているところにも如実に出ている。conneXはワンタッチで切ったり繋いだりできてメンテナンスしやすいのが売りのチェーンだ。

ようは、およそ放っておいて錆びさせるようはタイプじゃなくていじり壊すタイプなんですな、ワタシは。伊達に小学生の時にカメラを分解した経歴の持ち主ではないのである。何を隠そう中学生の時にはロードレーサーのチェーンをなめられるくらい掃除したはいいが注油を忘れダメにした経歴もあるくらいなのだから。

ホイールのメンテナンスなんか全部ショップに任せるようなタイプの人には最高の軽量ホイールで、実際に乗り比べるとHYPERONはもはや「昔の最高」なのだと痛感する。長い目で見た耐久性はHYPERONが上かも知れないが、その前にこの手のホイールは10年20年使うものか?そんな長期的な耐久性を気にする人間は元からカーボンリムホイールなど使わない筈なのだ。

ホイールは消耗品だ。

そう割り切れる人間にとって、最高の耐久消費財なのだ、きっと。

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コメント

毎度です。
今更ながらのコメントですが、ご容赦ください。

 BONTRAGERのホイールは真円度が非常に高い(DSC G.H談)らしく、それと回転のいいベアリングが手伝って、「物凄く良く転がる」ホイールに仕上がっているみたいですね。
 BONTRAGERは何故か首ありスポークを使っていますし、ハブとて特別強烈なものじゃありませんが、ホイールとしての肝を押さえているのでよく転がるようになり、なおかつびっくりするような値段が付かないのは、そのためでしょうか。
 いずれにせよ、手組み以外で首ありスポークを使う気にはなれないので、BONTRAGERの購入は見送りました。
 ストレートスポークと専用ハブを使うとなると、MAVICとほとんど同じ値段になってしまい、サポート体制に難があるBONTRAGERは、MAVICに押しつぶされてしまうかもしれず、それであのようなコストダウンを図っているのかもしれません。
 「MAVICより安く、軽く、よく転がるホイール」それがBONTRAGERホイールの美点だと思います。

投稿: Carbon_Cloth | 2006年10月 8日 (日) 13:04

Carbon_Clothさん、毎度ですこんばんは。
Bontragerの真円度高い伝説はけっこうあちこちで聞く話ですね。真偽不明ですが。

Bontrager自身が公表してますが、BontragerホイールのハブはDTにOEM供給して貰ったものです。スポークも。そのへんは妙にコストかけずにキッチリとコストダウンしてますね。ベアリングなんざCERAMICとか色気出さなければとても良いモノでも安く手にはいるので、ショボいカートリッジベアリングを使っているメーカーは露骨にコストダウンしすぎだと思います。

投稿: LIVESTRONG 9//26 | 2006年10月 9日 (月) 21:06

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