スイス≠腕時計
スイスと聞いて、いやしくも自転車乗りなら腕時計を連想する奴は市中引き回しである。
そのくらいASSOSこそは自転車用アパレルの王様である。
結局、スポーツ用の服は生地の基本性能がどのくらい優れているかで8割くらい決まると思う。
日本において機能性生地が一般に知れ渡るようになったのはCoolMaxくらいからだと思うが、その後メーカー間競争もあってどんどん進化して行っ ている。オリンピックの水泳で話題になった「鮫肌水着」もまさに機能性生地の一つだ。単純なものを作っていては中国生産の安物攻勢に対抗できないのも、各 社が機能性生地の開発に注力する大きな原因となっているように思われる。
ASSOSの場合、100%子会社のルガノ・テキスタイルラボの存在が大きい。
この研究所はASSOSのためだけに機能性生地を開発する。
成果はASSOSに独占供給されるので、右も左もクールマックス、のような事態は起こらない。
最近でこそ「裏と表で機能的に異なり、裏表を逆に着てはいけないシャツ」が増えてきたが、ASSOSの服の多くは裏表がはっきり存在する生地で作ら れている。1万円もするアンダーシャツ「パワースタティックス」などは、一見グレー系の立体縫製シャツに見えるが、裏と表では生地の肌触りはもちろん色ま で違う大変複雑な構成だ。内側はとにかく水分を吸い上げ、外側は可能な限り発散するように作られている。
ASSOSは特に冬物が高性能なことで定評があるが、Airbrockと名付けられている一連の防風生地が極めて良くできている。現在最も高性能なものがAirbrock851だ。このあたりLuganoTextileLabに資本投入している成果だろう。
自転車用の防寒服は恐ろしく難しい。
ロードレーサーともなれば、平地なら普通に30km/hくらいで走り続ける。ちょっと運動能力の高い人間なら40km/hくらいで走り続ける。これ だけの速度で走れば無風だとしても相当な風を受ける。だが、自転車は当然ながら人間が運動することで走っているので、高速で走る自転車ほど乗っている人間 が出す熱量は多くなる。単純に空気の流れを遮断し保温してしまうとあっという間に中は汗でドボドボだ。
風を遮断しつつ出る汗をどんどん逃がし続ける、かなり特殊な服が必要とされるのである。
このあたりのノウハウと、時にコストを無視した作り込みがASSOSの真骨頂である。最高峰の防寒ジャケットfuguJackともなると、たかが自 転車用上着ごときが一着で6万円を超える。自転車の乗車姿勢に完全最適化された立体裁断なので普通に直立するとあちこち突っ張るなど、自転車用にしか使え ない。
しかし値段分の価値は本当にある。
雪が降る中でも全然寒くないし、そんな中で全力走行してもちっとも蒸れないのだ。このへんはもう魔法のようである。私の実走行では、外気温マイナス4℃でも何ともなかった。
もう一つASSOSの名前を高めているのがレーサーパンツだ。
いや、たぶんASSOSの名前を最も高めているのがレーサーパンツだろう。
レーサーパンツはASSOSが一番、と不動の定評がある。
実際いい。とにかく履き心地が良く、抜群にお尻に優しい。同じサドルでも別物の感想に変化するくらい出来がいい。もっとも他社製のが2枚や3枚買え てしまうくらい高い。このため、高品質なことと高いことのDouble Meaningで「レーパンのロールスロイス」と呼ばれたりする。
ブランドものスポーツウェアでも普通に「Made in China」の昨今だが、ASSOSは全製品スイス生産をやめようとしない。こだわりだ。
NIKEのようにハイセンスでオサレなデザインではないのだけが玉に傷だが、飽きのこない無難な線ではある。まあ、それに走っている最中に自分の服のデザインが気になる奴は病気。
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