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2006年4月27日 (木)

エリプス

V2 BOOMERANGのシートピラーをCORIMAエリプスカーボンに換装した。

いろいろ変なパーツが付いている私のV2 BOOMERANGだが、これは付けるなりヘン度1、2を争うくらいヘンだ。手に入れたのは随分前なのだが、遅いのに付けてると恥ずかしいのと、シートピラーとしてすごく使いにくいのでポジションが固まるまでやめておこうと思って付けていなかった。

高性能カーボン製品しか作らないとんがったメーカーであるフランス・CORIMA社製品の中でも、知る人ぞ知る特にとんがった製品がエリプスカーボンシートピラーである。高くてしかも使いにくい、かなりキてる製品だったエリプスを扱っていた店はごく少ないので存在自体知らない人が多いと思う。あまりにとんがりすぎたせいで売れなかったのか、2006年からはCORIMA製フレーム用としてだけ残り単品販売は無くなったらしく、本国カタログから消えている。部品扱いで一般的なフレームに装着するためのシムだけ販売され続けている。

世に「エアロシートピラー」は結構な数が販売されている。

スローピング形式のフレームが増えてシートピラーが長くなってからは特に増えた。V2 BOOMERANGのように物凄く変わった形のフレームなら、よほど巨人が乗らない限り必要なシートピラー長も知れている(身長と足の長さによってはシートピラーを一切出せないどころか標準の下限より更に下げる方法について考え出す人もいる)が、スローピングフレームの場合は特に足長でなくてもシートピラーの突き出し量が半端ではないので、確かにシートピラーの空気抵抗はかなり真剣に検討する価値がある。そこで各社色々出しているわけだが、そんなものはこのエリプスに比べると「自称」エアロ。もう廃れた表現だと「なんちゃってエアロ」だ。エリプスはそのくらい徹底した別物である。

その作りは強烈の一言。外観は自転車の部品ではなく、何か手持ち武器っぽい。形状ほとんどブーメランである。ブーメランにブーメランとは、まるでオヤジギャグではないか。それはともかくカーボン一体成形のこのシートピラー、厚みが実に10mmくらいしかない。一番薄くなっている部分が10mm、ではない。一番薄い部分なんか7mmない。思い出したが、ブーメランよりもむしろクルガナイフあたりに似ている。やっぱり武器か。

見た目の軽さは抜群だが、無期限ノールールの軽さ選手権常時開催中のカーボンシートピラーとしては「軽いほう」レベルの軽さで、150g程度だ。同じカーボンなら探せば100gを遙か下回るものもあるし、最高クラスに軽いアルミシートピラーは重量だけならほとんど匹敵するか、下手すると逆転勝ちする。すごく軽そうに見えるのに必ずしも軽くない原因は「同じ量の材料で構造物を作る時は中空構造が一番強くなる」事に起因すると思われる。鉄骨がH断面なのも中空構造の一種だ。前面投影面積を減らすことだけを考え「板」として作られたエリプスには中空にする内部空間なんかどこにもないので、素材のカーボン如何に拘らず大変珍しい、ムクつまり中身が詰まったシートピラーである。 同じ素材・同じ製作能力なら強度は最も下がる構造だ。ゆえに、こんなにペラペラな作りだが80gだったりはしない。作用する応力をよく考えて厚みを調整したアルミパイプの方が軽くなる。

重さが150gだろうと200gだろうとこの厚みには「こんなので大丈夫か?」と思う人の方がたぶん正常な神経の持ち主。しかし「大丈夫か?」じゃあないのだ。

ノーリスクのレース用器材などない。正常な神経特有の無意味な問いである。向こう側にいる人間にはわからないが、速く走ろうとする事自体が既に正常な神経の産物ではない。

心配ならお前はやめとけ。それだけの事だ。

ついでに書いておくと、これ見て心配になる人間のカンは実はわりと当たっていて、最初組み付けていると仮組の時点でナットがあっさりネジ切れて目が点になった。さすがフランスクオリティとでも評したらいいのか、私はフランス製品がかなり好きなんだが、好き嫌い以前に「フランスのネジ」ってあんまり信用できなさそうでしょ?実際このエリプスに使われてるボルト/ナットも良くないんだわ、作りが。最初組み付けるとき微妙に遊びが多いボルト/ナットだなと思ったら、案の定本締めする間もなく一発で死んだのがお約束通り過ぎて怒るよりもむしろ吹き出しましたよ、ええ。まあネジなんて潰れるもんだからと手持ちのボルト/ナットに換えたらガンガンに締め込んでもねじ切れる兆候すらないので、フランス製ネジはやっぱりアレな気がする。たまたまだと思いたいが。

話が逸れた。

空気抵抗を一番知っているのは自転車乗りだ。

それは自動車乗りがオープンカーを転がしても決して体感することはない。

50Km/h、55Km/h、60Km/h…の領域を踏みしめるペダルがどんなに重いか、体で知る者だけが共犯者の笑みを共有する世界だ。この領域では、使われるエネルギーの実に90%以上が空気抵抗を相殺するために消える。エネルギー効率に極めて優れた、自転車特有の現象だ。他の移動方法ではもっと色んな部分に無駄にエネルギーが浪費されるため、これほど明確に空気抵抗がクローズアップされない。高速で走る自転車を妨げるものは、偏に空気抵抗と空気抵抗と空気抵抗だ。それは高速で自転車を走らせる者だけが知るものなのだ。

エリプスが作られた意味がわかりたければ、走ってみなさい。

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