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2006年4月15日 (土)

FulcrumとMAVIC

Fulcrumは、2004年末くらいに商品を発表し2005年から商売を行っている新興ホイールメーカーだ。

お互い隠していないしむしろ積極的にPRしているくらいだが、Fulcrumはイタリアの老舗Campagnoloの完全子会社であり、起業にあたってカンパから平行移籍したエンジニアも多数いる。つまり、新興だが実質は老舗の看板違いだ。

Fulcrumの会社設立意図が「シマノユーザーにカンパのホイールを売るための別名ブランド」なのは火を見るより明らかな事実だ。このへんはもう論議の余地がほとんどない。なにしろカンパの子会社なのに最初はSHIMANO向けのホイールしか売っていなかったくらい露骨にSHIMANOに媚びた商売をしていた。

Fulcrumが作られたもう一つの意味合いは、カーボンパーツの自社生産工場を大枚を投じて建設したりとファクトリーコンプリートホイールの商売にかなり力を入れるようになったカンパとして、この分野の第一人者であるMAVICの押さえている市場に本格的に食い込みたかったのもあると思う。この時Campagnoloブランドのままだと、カンパの部品を使っていない人間にとってはいまいち不統一感を生じるのが否めない。そこで「いちホイールメーカー」として別会社のFulcrumを用意した。

MAVICはフランスのリムメーカーの老舗で、昔から高性能イメージで売り続けてきた。MAVICの「SSC」マークが憧れの的だった時代もある。これはフランス語のスペシアルサービスドコルセSpecial Service des Coursesの頭文字だ。1973年に創設されたMAVICのレーシングサービス部門の事である。ホンダのHRCのようなものだ(トリビア)。MAVICも逆に一時コンポをやっていたが、電動コンポのZAPそしてMEKTRONICに手を出したあたりからおかしくなって、特にMEKTRONICで不良品を連発しまりクレーム交換の嵐となったためコンポ部門は不採算事業となり、親会社の指示でコンポ撤退が決定して今では事実上手を引いた。自転車用ホイールの商売の主流がファクトリーコンプリートに移行してからもうまく商品をファクトリーコンプリート主体にシフトし、なんだかんだでよく売れている。だいたいファクトリーコンプリートホイール主流の今の流れを作ったのもMAVICのHELIUMからだと思う。そしてMAVICのKSYRIUM SL(キシリウムSL)は大ヒット商品になった。レース会場でそりゃもうやたらめったら見かけたホイールの一つだ。KSYRIUMそしてその軽量バージョンとして一世を風靡したKSYRIUM SLは、MAVICがMAXTALと呼ぶアルミ合金(ようはジュラルミン)でできたリムを、ZICRALと名付けられている「きしめん」のような外観のアルミ合金スポークで組んで作られたホイールである。このZICRALスポーク自体はMAVICの発明ではないが、発明した会社を抱き込んでMAVICが独占使用している。そこそこ軽く、ブレーキの効きがすごく良好なホイールだ(ブレーキの効きがよいのはMAVICのリムやホイールに共通する大きな美点で、これを理由にMAVIC一筋の人間もいるくらいよく効く)。ホイールに五月蝿い注文を付けない人間なら何の不満もなく使うくらいの出来に仕上がっている。ごく一般的な自転車好き程度の人にとっては充分高価な、ずばり「憧れのホイール」に分類してもいいだろう。これほど人気が出たのは、2000年前後のLe Tour de France等プロレースでよく使われたホイールであるのも大きいと思う。Lance Armstrongも復帰直後は使っていた。Mont VentouxにおけるPantaniとArmstrongが演じた伝説的一騎打ちの時にArmstrongが使っていたのが何を隠そうKSYRIUM SLだった。これはセールスにかなり貢献したと思う。

カーボンリムホールがお店の店頭に普通に並ぶようになった今でも余りお金がないプロチームは現役で使っている。なお、余談だが正式名称はKSYRIUM SSC SLだ。

KSYRIUMがうまくいったのは、MAVICの老舗としての技術もともかく特許によるところが少なくない。MAVICはアルミリムの製法に於いてかなり重要な特許を握っている。ホイールである以上当然「わっか」なのだが、鋳造じゃあるまいし、当然ながら元は一本のチューブ状のアルミ材を繋いでリムに作り上げる(なんでも珍しいやり方としてコの字断面のわっか同士をサジタル面で接合する方式のものもあるそうだが、私は具体例は知らない)。このとき安物アルミリムはつなぎ目の部分に芯材を入れて繋ぐ。当然だが重くなるし回転バランスも偏る。そこで高級品はつなぎ目を芯材なしに溶接して繋ぐ。回転バランス面でも強度面でもこの方が有利だが、手間なので安くならない。また溶接となると当然ビートが出るわけで、そのままではリム面がデコボコしてしまう。そこでMAVICの特許だ。MAVICは「リムを切削加工してスムースにする」基本特許を押さえてしまっているのだ。

そんなんアリかオイ!?

と思うくらい単純明快で豪快な特許だが、取られちゃったモンは仕方ない。リムを切削したホイールはよほどのウルトラCをかますかMAVICのお許しが出ない限り特許抵触で訴えられてしまう寸法なのだ。で、MAVICはこの自社特許を大いに活用し、削りまくったホイールを売りまくっている。KSYRIUM SLなんぞはまさにこの特許なしにはあり得ないホイールで、ルーズに作ったリムをゴリゴリ機械切削して仕上げ完成させる。この独特の製法もあってKSYRIUM SLは面白いことに毎年のように重さが変わる変なホイールで、剛性が下がったような評判が出た翌年は重く、その翌年は少し軽くを繰り返している。虫の居所でも悪かったのか1年のうちで複数回重さが変わった事もある。そのくらい削り加減がしょっちゅう変わる。切削なのでさじ加減の調節はそんなに難しくない。そしてアルミで作っている上に構造が変わっていない以上、重い軽いと剛性の高い低いは正比例するので、重いから印象が悪いわけでもないから話はヤヤコシイ。重い方がいいホイールなる珍説の発祥はこのあたりか?

それはさておき、現実問題、アルミリムで軽く丈夫に回転バランスよく作ろうと思ったら切削行程なしにやろうとすると切削するよりむしろ手間も金も掛かるので、MAVICの特許に抵触しないで高性能なものを作るのは容易ではない。実際、かつてBontragerが発売したファクトリーコンプリートホイールRace X Liteは、発売された最初の1年だけリムが切削加工仕上げされていたが翌年モデルから唐突に切削加工なしになった。理由は一切公表されていないが、これはどう考えてもMAVICから「やめないと訴えるよ〜ん」とつっつかれたからだろう。MAVICとBontragerは仲悪い(当初MAVICの広告塔であったランスをBontragerが獲った)しな。

さて、このように削る特許で売りまくるMAVICなのだが、前出のCampagnoloもけっこう前からホイールやリムを生産している。しかもカンパは昔からハブを作ってきたハブの一大老舗であり、回転部分の仕上げが素晴らしく優れている上にメンテナンスもしやすい。これをもっと生かさない手はないと考えたのだろう。ファクトリーコンプリートをいろいろ売り始めた。

アルミリムの名作ニュークリオン、そして後継NEUTRONは、実際的な使用、特に長期的に性能を維持できる点においてはKSYRIUM SLよりもかなり上なのが両方使った事がある人の大抵の評判である。両者は似通ったホイールで、スペック的にはKSYRIUMの方が少し軽いくらいの差だ。で、ホイールとしてかなり重要な筈の回転部の出来としては、MAVICには悪いが比較するのも失礼なくらいカンパの方が良くできている。MAVICはカー トリッジベアリングをよそから買ってきてポン付けしているだけ。しょせんMAVICはもともとリムメーカーであって、もともとハブの良さで鳴らしベアリングの玉押しやら玉受けを自社 で作るノウハウと技術を持つカンパとは技術の質からして桁違いなモノがある(もっともこのような面倒臭い事を今でもやっている自転車関連メー カーはもはやシマノとカンパだけだが)。なお、軽いことが長所のKSYRIUM SLは実際に計ってみると必ず公表値より重いことで不動の定評ある重量が毎年大本営発表の凄いホイールだが、残念なことにこの事実はかなりマニアックな人間にしか知られていない。KSYRIUM SLユーザーでも、実重量が公表重量より重い事を知っている人は間違いなく少数派だ。私はアルミリムホイールに基本的に興味がない(マグネシウムリムなら興味があるが)ので、計った人から聞いたときは驚いたくらいだ。確かにホイールの実重量なんかいちいち計ってみる人間は相当少数派なので、適当な発表をカマしてもまずばれることはない。それで結局商売的にはスペック表は書いたもん勝ちなところがある。まじめなメーカーほど損なのだがそれが現実である。が、現実にはKSYRIUMの方が断然売れる。何故だ?もちろんスペック表が軽いことも大きいのだが、ZICRALスポークを使用した特徴的見た目カンパユーザーにもシマノユーザーにも公平に訴求したのが大きかったに違いない。確かにカンパユーザーでもMAVICホイールを高く評価している人は多い。

…と、カンパニョーロは考えた。

おれっちも一発KSYRIUM作ってみっか?

そこで出来たブランドがFulcrumである。

前置きが超長くて申し訳なかったが、Fulcrumは気のせいか名前までKSYRIUMと似ている。
当初ラインナップはracing1、racing3、racing5、とアルミリムのホイールを3グレードline upして消費者のニーズに応えようとしたが、明らかにトップグレードのracing1を売りたがっていた。ZICRALよろしく太いアルミスポークを採用して露骨にKSYRIUM SLを意識した外観を作り上げ、2004年モデルのNEUTRONやEURUSあたりから始めた溶接接合・切削リムを同じく採用してきた。この切削がどうやってMAVICの特許をくぐり抜けたのか未だ激しく謎なのだが、2006年になってもカンパとフルクラムだけは切削仕上げアルミリムを売り続けているのでMAVICからライセンスを受けたのかも知れない(あり得ない話ではない)し、何か特許をすり抜ける裏技を見つけたのかも知れない。とにかくFulcrum racing1はKSYRIUMそっくりさんで、しかもCampagnoloと同じクオリティのハブを持つ製品として作ってきた。カンパの目論見ではそれなりに売れる筈だったと思う。

結果としては、そんなに売れなかった。

まずKSYRIUM SLより実売で高かったのが大きかったと思う。同じようなモノで値段が上下なら、ふつう安い方が売れる。こりゃ当たり前の市場原理だ。何の不思議もない。Fulcrum(カンパ)としては新しい会社を興して工場も建てて、その資金を回収したいから当然叩き売りはできない。既に大メーカーとして存在し大きな工場も生産に慣れた人間も揃った状態で何年も前から作っている製品を変わらず売っているMAVICのKSYRIUM SLと値段競争をしたら、いくらMAVICが殿様商売で有名でもそりゃあ負けだ。ハブはカンパのエンジニアが移籍して部品も流用できる部分は可能な限り流用して作ったFulcrumの方が明らかに優れているのだが、ハブの良さとは少なからずマニアックな長所であって、MAVICのハブもカートリッジベアリングなのでメンテナンスが出来ない(痛むまで使って痛んだら交換することしかできない)のと標準採用のベアリングがやけに雨に弱いこと以外は回転そのものは悪くない。ロードレーサー好きイコール機械好きとは限らないので、Fulcrumの良さはかなり少数派にしか分かってもらえない良さなのだ。それにカートリッジベアリングが必ずしも機械好きに向かないわけではなく、それこそ馬鹿馬鹿しいほど金を出せるならボールも玉受けも全部セラミックで出来た宇宙用クラスのカートリッジベアリングを買ってきて付けることまで出来る。凝り方の種類が違うだけだ。ツルシの状態で使う限り、Fulcrum racing1とMAVIC KSYRIUM SLの差はほとんどない。両者の比較で走行感に違いを与えるものとしてはタイヤの違いの方がよほど大きいくらいの差だ。ハブのクオリティよりも大きな違いとしてFulcrum特許のTwo to One組みの後輪による左右スポークテンションの最適化やトルク伝達の良さを挙げることは出来るだろうが、その違いを機械計測で出すことは容易でも「体感」するのは相当困難だと思う(DT t/e/n/s/i/oのようなちゃんとしたスポークテンションメーターで計ると、Two to Oneで組まれた後輪は驚くべき事にドライブサイドと反ドライブサイドがほぼ同じテンションで、スポークに変な負荷を掛けない点で見事としか呼びようがない素晴らしい設計である事が分かる)。そんなわけでFulcrum racing1は「KSYRIUM SLを改良したようなホイール」の筈が、目論見が外れていつの間にか「KSYRIUM SLと大して変わらないのにKSYRIUM SLより高いホイール」になってしまった。カタログ値でKSYRIUM SLより微妙に重かったのも、カタログで勝負して買う人間に売るには痛かった。(その意味でも、MAVICの大本営発表は商売の妙をよく分かっている)

何処で間違えた?

しかし、世の中の流れは早いもので、MAVIC王朝も安泰とは行かなくなってきた。カーボンリムホイールの隆盛である。

カーボン成形技術の急激な進歩によって、登場当初は耐久性に激しく難があったりハードにブレーキングするとブレーキの熱で熱変形して走行不能になったりと非常にヤバイモンだったカーボンリムホイールだが、まさにあっという間にもりもり性能が向上し、使い方さえ間違わなければ日常使用にも耐えるくらいに凄い進化を遂げた。値段はまだ高いが、それも毎年のように下がって最上位のアルミリムホイールプラスアルファで買えるくらいの値段にまでなってきた。これはMAVICが招いた結果でもある。何故なら高性能なアルミリムを作るために必要な技術のうちけっこう大きなものをMAVICが特許として押さえてしまっているため、他社は高性能ホイールを作ろうとする場合、MAVICに邪魔されてしまうアルミでMAVICの特許をクリアする方法を巡って悪戦苦闘するよりも、アルミは安物だけにしておいてトップモデルはアルミより遙かに将来性があるカーボンに進出した方が長い目で見て正解だからだ。

アルミリム時代に押しも押されもせぬ世界一のリム/ホイールメーカーとしてMAVIC王朝を築いたMAVICだが、前述のZICRALよろしくホイールは見た目で売れることを他の誰よりも見抜き、見た目をいじくることで売り続けてきた関係でカーボンリム製品は豪快に出遅れた。KSYRIUM SLでもスポークを一本だけ黄色くしてシリアルナンバーを入れた記念限定バージョンとか、まさに言葉通りの子供騙しを繰り出したりして、でもそれで売れてきたんだから、MAVICはきっとそれが正義だと確信してきた事だろう。ユーザーは性能など求めておらず、求めているのは見た目だと。商品のメインストリームを常にアルミリム製品に置いて、性能は向上しなくても見た目だけをいじくり続ける事できっちり商売してきたMAVICは、2005年まで名前こそカーボンと付いているがアルミリムホイールにカーボンの風防を貼り付けただけのホイールであるCOSMIC CARBONをトップレンジとしてきた。MAVICの見た目戦略の頂点であり、またその戦略の成果を遺憾なく見せつけてきた商品である。もともと軽くないアルミリムホイールを更に2階建て構造にしてあるもんだから単純に重量は重い(2005年に少し軽量化されるまで前後合計2kg以上あって、仮にタイヤなしで走ると仮定してもタイヤ付きカーボンリムホイールより重かった)し回転モーメントの重さもピカイチで、ドイツの雑誌がやった計測テストにおいて加速に必要なパワーはディスクホイールさえ上回りファクトリーコンプリートホイールとして最悪の数字を記録する怪挙達成だ。でもそれが売れるくらい名門MAVICの金看板はでっかく、あまつさえMAVICのホイールが重いことを無理矢理正当化するためなのか重い方が平地の高速巡航は有利だトンデモ説まで飛び出し都市伝説として広まる始末だ。馬が何百匹もいる動力付き四輪車でさえホイールをちょっとでも軽くするために金も技術もどっさり投入するのに、もっと非力なニンゲン一匹で動かす自転車が重い方が有利とは馬鹿馬鹿しすぎて真面目に取り上げる気にもならん話だが、これを冗談と流すことが出来ず本気で信じている人間もこの世のどこかにいるらしい。本当に重い方が有利ならツール・ド・フランスの平地ステージを走る選手はとっくの昔にこぞって鉄で出来たホイールに鉛を封入して走っている筈だ。それどころか重量増競争がはじまって平地で使うホイールは1セット10kgとか20kgのモンスターになっていなければおかしい。TTのディスクホイールに至ってはフルカーボンならぬフルタングステンホイールが登場し、うっかり足の上に落としでもしようものなら確実に粉砕骨折だ。しまいには最終兵器として劣化ウランホイールが投入されるに違いない。これ以上重い素材を見つけるのは難しいからだ。放射線による健康被害でメカニックやレーサーはまさに命がけの戦いとなる。選手は勝利の代償に根こそぎ癌や白血病で死亡だ。TTマシンは総重量3桁kgに突入し、UCIは「ホイールの最大重量はXXkgとする」と新しい規定を作ることだろう。ああアホらし。ま、今でも天動説を信じている人間だって実在するからなあ。

MAVICは2005年からKSYRIUM SLをちょっと変更してお茶を濁した新モデルKSYRIUM ESも発売したが、いまどきアルミリムなのにSHIMANO WH-7801-carbonのような安価帯カーボンリムホイールと実売価格がさほど変わらない、正気を疑うような新製品だ。いや、MAVICも阿呆集団ではあるまいし、きっとそんな事は分かっているんだと思う。正気を疑うようなことを、狂っているわけではないのにやってくるからMAVICはいやらしいのだ。本当に意味がある改良なんてエンドユーザーは求めてなくて結局見た目なのだと、MAVICの商品は語り続けている。その証拠にKSYRIUM ESはホイールに於いて軽量化する意味が最もない場所であるハブシェルがカーボンだ。何かの実質ではない、見た目をよくするためのカーボンである。他にもう軽くする場所が無くなったからいよいよハブでもカーボンにしないと削る場所がなくなったからカーボンにしたようなのとはワケが違う。リムやスポークはKSYRIUM SLの色違いだ。重さの違いはハブの違いと例の削り具合の差に過ぎない。

当初「限定生産」の鳴り物入りで登場したKSYRIUM ESだが、06シーズンは始まっているのにまだだぶついている。MAVIC得意の限定生産商法ですら売り切ってしまえない。前述の「KSYRIUM SL スポーク1本だけ黄色いバージョン」の頃はこんなことじゃなかった筈だ。みんな熱に浮かれたように買いに走ってくれた。

さすがにヤバくなってきたのだ。何故なら見た目戦略に絶対必要なトッププロ使用率が毎年のように下がってきていたからである。見た目ばかり弄くり続け肝心の性能向上をほとんどなおざりにしてきたのだから、勝つために人生賭けてる連中は性能を本気で追求している方を選びMAVICは次第に見放されて当たり前。
こう書いては何だが、かつてすぐぶっ壊れるカーボンホイールとして悪名高かったZIPPのカーボンホイールの使用率がプロツアーチーム中でグングン上がってきているのは、なりふり構わない性能追求姿勢のたまものだろう。MAVICがいつまでたっても「KSYRIUMなんちゃら」でしつこくお茶を濁し続けている間に周りは毎年製品を改良し続けてきたのだから。

対してMAVIC。06年から唐突に発売された、MAVICのロード用として初のフルカーボンリムを採用したCOSMIC CARBON PROも、これまた正気を疑うような商品だ。03年発売のCampagnolo BORAより重いのはBORAの方が高いと正当化するとしても、半分くらいの値段で売られるSHIMANO WH-7801Carbon-50よりはっきり重いのは一体全体どうなっているのだ。ぶっちゃけ話として、このクラスのファクトリーコンプリートホイールとしてCOSMIC CARBON PROはケツから数えた方が早いくらい重い。さんざん引っ張っておいてこの程度か。「おまけに」と書いたらいいのか「それには実はこんな理由があって」と書いたらいいのか、あくまで噂の領域を出ないがこの新カーボンリムはMAVICの自社生産ではないらしい。本当なら本来リムメーカーたるMAVICにあるまじき事だが、唐突にハイトが減ったあたりかなりクサイ話ではある。50mmのフルカーボンリムは幾つものメーカー、それこそ無名の下請け専業メーカーまでが製造している(SHIMANOの50mmカーボンリムもLEW Racing社製である)が、65mmのものとなるとほとんどない。Bontragerが出したばかりのAeolus6.5用くらいしかない。もちろん、Bontragerが出したばかりの新製品の部品を、思いっきり商売敵でしかもリム切削加工を巡っての遺恨すらあるMAVICに売るはずがない。65mmを維持したければ他社から買ってきてお茶を濁すわけに行かず自社開発しなければならない。かつてMAVICはCOSMIC CARBONの65mmハイトについて高い空力うんぬんとPRしていた。それが何の説明もなしに50mmに逆行した。なるほどCOSMIC CARBON PROがリムハイト50mmの理由は…。

Fulcrumも何故かMAVICそっくりに唐突な新製品を発売する。

当初KSYRIUM SLを作りたかったFulcrumだが、KSYRIUM SLのライバルになるのはあまりうまく行かず、おまけにKSYRIUMのコケにきっちりお付き合いして仲良くコケそうな気配だ。雲行きが怪しい。

Campagnoloによるテコ入れが行われたわけだ。
カーボンリムホイールが一気にラインナップに加わる。

Fulcrumオリジナルカーボンリムを作れるほどの工場を1からとなると投資額が半端ではないしFulcrumはそこまで儲かっていない(どころか通算では赤字だろう)ので、Campagnoloのカーボンリムをそのまんま持ってきた。racingLightracingSpeedである。

racingLightはCampagnoloのHYPERON ULTRAracingSpeedは同BORA ULTRAのリムをそのまんま流用し、名前だけ貼り替えている。ハブは曲がりなりにもFulcrumオリジナルだが、これだってカンパニョーロの部品がそのまんま取り替えて使える…ならぬ全く同じものを使っている部分が幾つもある(ハブシェルは違うが、ハブシャフトやベアリングは完全同一パーツ)し、スポークの本数だって元になったホイールときっちり同じである。racingSpeedでは後輪のスポークの組み方がBORA ULTRAとパッと見ずいぶん違うがドライブサイド2本に反ドライブサイド1本の比率なのはBORAと変わらないし、本数は同じだし、そもBORA他で採用されているG3組がTwo to Oneの元になったのは間違いない。だからracingSpeed、racingLightの両者は重さも元となったホイールとほとんど違いがなくて(重さの微少差の原因はハブの重さの違い)、racingLightが“ライト”とついている割にracingSpeedより重い(追記。発売当時racingSpeedはクリンチャーモデルのみで、翌年モデルになるまでチューブラーがなかった)のも、HYPERON ULTRA Clincherの方がBORA ULTRAより重いのと見事に同じだ。これらと同時に投入されたディスクホイールracingChronoに至っては、性能が高いことで昔から定評があるカンパのディスクホイールGhibliをそのまんま塗り替えただけなもんだからGhibliと同じにカンパ専用で、Fulcrumホイールとして初めてシマノ用を出せなかった。もはや苦笑するしかないほどカンパのホイールそのまんまなのである。

そこでまた問題が出る。

んじゃあ、カンパとどう違うんだ?名前だけちゃうのんけ?
全くその通りだ。
違いは誤差くらいでしかない。

しかし恐ろしいことにracingLightはHYPERON ULTRAより高く、racingSpeedはBORA ULTRAより高い。つまりほぼ同じモノを高く売っているのだ。

なんじゃあこりゃあ!?

正直、Fulcrumブランドはいま迷走していると思う。仮想敵だったMAVICを正面から叩くのに失敗した。おまけにMAVICがFulcrumと全然関係ないところでコケ気味なのにつられて仲良くコケかける始末だ。そこで取った戦略が何故かMAVICと同路線なのもお付き合いがいい。商品ラインナップは増えてしかも高性能だが、もともと高性能だった親会社の製品をそのまんま持ってきたんだから性能高くて当たり前だし、親会社と客を食い合っても意味がない戦略上の理由で、積極的に売るための商品ではなく、あくまで従前商品を売るための広告塔だ。Fulcrum的にも売れてあまり嬉しくない商品だと思う。なんせこの2つ、自社生産部品はハブだけ。痩せても枯れてもホイールメーカーなのだから、これはプライドがいたく傷つくだろう。親会社Campagnoloの製品なのがせめてもの救いだ。Fulcrumとしてはあくまでracing1か、せめてracing3が売れてほしい。だがブランドイメージを引っ張るには高性能なトップモデルが必要だから親会社のをシール貼り替え投入だ。ついでにお高くとまったのもマズかったのかと最下位機種racing7も増やした。

Fulcrumは、2006年現在、エースTom Boonenの活躍と共にブイブイいわしてるプロツアーチームQUICK・STEPにホイールを供給しておりCMでもQUICK・STEPやボーネンをしきりに強調起用しているが、実際にQUICK・STEPが使用しているのはracingSpeedやracingLightばかり(厳密には商品としてのracingLightそのものではなくCampagnolo HYPERON Tublarのシール貼り替え版だが)なのに、広告では必ずracing1の写真が登場する。(2006年当時の話)

ものすごく分かりやすい。

ここまで露骨だと可哀想になってきてを誘うくらいだ。

ボーネンがracing1を使うのは、見たところレース前のウォーミングアップとクールダウンの時にローラーを回すのに使うくらい。

個人的にロゴとかデザインは嫌いではない(見た目かよ。笑)し、racing1も作り自体はKSYRIUM SLよりずっと真っ正直で丁寧なので、めげずに頑張ってほしいところだ。あのハブ、ちゃんとメンテしてやれば凄くよく回る(RECORDハブだしね)し寿命も長いし、Two to Oneはスポークの組み方として今世界一正しいと思うのだ。

頑張れFulcrum!負けるな!

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コメント

毎度です。

プロツアーチームへのホイール供給、FULCRUMが相当に多くなりました。ついにリクイガスまでFULCRUMに。
COFIDISのようにMAIVCからFULCRUMへの変更なら理由は分かりますが、別にカンパからFULCRUMへ変える理由は無いと思うのですが・・・
カンパがFULCRUMを使うように推奨でもしてるんでしょうか?
カンパは知名度十分なので、FULCRUMの方が見た目戦略が必要だと判断しているのかもしれませんが。
でも、リクイガスの黄緑色にはカンパの方が似合うような気が・・・

投稿: Carbon_Cloth | 2007年1月31日 (水) 08:34

ども、Fulcrum Rasing1使っていますが、ロープロファイルとしては、カンパよりもいいです。一度ハブをオーバーホールすると、めちゃくちゃよく回ります。確かにあのスポークは気流の整流効果を狙っているよりも、見た目と思われますが、、、メンテナンスを気にしないで使うのだったら、シマノを勧めますが、メンテナンスの手間をいとわないのだったら、絶対これを勧めます。

投稿: HYPERON | 2007年2月 3日 (土) 00:28

毎度です。

Racing LightはHyperon Ultraとはハブ以外に、スポークの組み方が違うのですね。
単にハブをFULCRUMハブに換えているだけかと思っていたら、一応Racing Lightは2to1の組み方になっていますね。かろうじて実質的な違いが出ています。

投稿: Carbon_Cloth | 2007年2月16日 (金) 18:11

RACING7,RACIN5 EVOLUTIONと下位グレードを履いてますが、5は非常に気に入ってます。リクイガスの練習用にも使われていたり、
平地も山もこの価格でここまで回るんだと感心します。未だデュラ9速なので、フルクラムを気に入ったかといってもRACING3が限度なのが哀しい。
しかも決戦仕様はキシリSLです(;'A`)

投稿: P | 2007年3月24日 (土) 19:32

Carbon_Clothさんまいどです。
2 to 1の採用により、HYPERON ULTRAよりもracingLightの方がいいと思います。
HYPERON ULTRAは左右でスポークテンションが違いすぎます。フリー側の張りはもうパンパン。

Pさん初めまして。これからもよろしくお願いします。
racing1でも8,9速対応のフリー装着できますよ。

投稿: LIVESTRONG 9//26 | 2007年3月29日 (木) 21:38

買ってから気がついたのですが、RACING SPEEDのバルブと反対側2本のスポークが違うのは、ダイナミックバランスを取るため?タイヤをはめると、バランスが良くなるようにでしょうか? 色まで違うので、同じ色にして欲しかったのと、出来れば、スポーク同士が擦れないようにして欲しかった。。。。

投稿: TTT | 2007年5月 3日 (木) 20:35

TTTさん、2本のスポークが違うのはバランスを取るためとカタログにも書いてあります。

投稿: LIVESTRONG 9//26 | 2007年5月 4日 (金) 23:58

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