Giro ATMOS LoneStar7 Paris Edition Ltd.
2005年ツール・ド・フランス最終日。
総合優勝者としてパリに凱旋するランス・アームストロングが、波瀾万丈のその競技歴の最後の日にだけ被ったヘルメットである。
世界選手権ロードに史上最年少で優勝した前途有望な若者はガンで生死の瀬戸際に転落し、しかし病に打ち勝って、ツール・ド・フランスを7連覇する空前絶後の栄光に満ちた7年間でその競技歴を閉じた。彼はその最期の日にこのヘルメットを着用していた。
パリに凱旋するその最終日のためだけに用意されたものであるため、名前に「Paris」と入っている。モデルとしてはGiro HelmetsのATMOS(アトモス)で、ランス・アームストロング向けを意味するのがLoneStarだ。
モータースポーツを知らない人間は気が付いていない事が多いが、GiroはBELL Helmetsのスポーツヘルメット専門子会社。
LoneStarとはアームストロングが生まれ育ったテキサス州旗の愛称である。
ちょうど星条旗がStars and Stripesと呼ばれているのと同じで、星が一つ描かれている事に由来する。このLoneStarが星の柄である事から「星条旗柄」と説明されている事が時々あるが、名前からしてもテキサス州旗柄以外の何物でもない。星条旗柄ならGiro ATMOS Stars and Stripesの筈だ。
LoneStarの名前の通り、このヘルメットも正面
から見ると分かるように、星が形作ってある。
このLoneStarは「シリーズもの」で、ランスがツール・ド・フランスに連勝し始めた頃から毎年違うデザインが用意され、その年の末には商品として限定発売されてきた。2004年の前人未踏6勝時は新記録を祝って調子に乗りすぎ全面金色のGold Ltd.が作られた
が、さすがに悪趣味だと多くの人が思ったらしく、発売から1年半ほど経った今でもシコリ玉として在庫している店が結構ある(笑)。たぶん一番センスが良かったのはトリコロールで左右非対称に彩られた2003年版だろう。
とまれ、私はこのATMOS Paris Editionを大変気に入っている。
カタログ写真では気が付かないのだが、普通ATMOSの黒はマットブラック仕上げなのにParisではちょうど車のメタリック塗装のような光沢仕上げで、黒基調のカラーリングにしてはほどよく主張するようになっている。ついでに黄色の星の部分もただの黄色ではなくてメタリック塗装だ。それにあわせてわざわざ専用の黄色いストラップにしてあるのも丁寧である。
同じLoneStar7でもParis Editionと付かない方が存在し、そちらはマットブラックでローンスターも白に青だ。意匠は同じなのに見た目はかなり違って面白い。こちらは途中のステージで時々被っていた。
ATMOSは前後に長い卵形をしている関係で多くの日本人の頭には合わないヘルメットで、格好良さに惚れて買って無理して被ってもこめかみのあたりが痛くなって音を上げてしまう人が多い(Yahoo!AuctionでATMOSが意外と売りに出される理由)のだが、私はMで何ともない。Sでもいけるんじゃないかと思うほどだ。
LoneStar抜きにしても、ATMOSはとにかくベンチレーション機能が最高で頭が全然蒸れないのと、大変軽くて装着感が少ないのが良い。形がうまくできているので自転車用ヘルメットにありがちな被ったときのあのキノコっぽさがほとんどないのも美点で、頭の形が許すなら最高の自転車用ヘルメットである。ここ何年もモデルチェンジせずイヤーモデルとして色違いを出しているだけだが、モデルチェンジする必要性を感じないくらい完成度は高い。
ランスは2005年ツール・ド・フランス最終日をもって現役選手生活を引退。当初今度は選手としてではなく再びここへやってくると話していたが、その後ツール・ド・フランスのオーガナイザーと険悪な仲になったため2006年は会場にも行かないだろうと宣言している。
どちらにせよ、「LoneStar8」はないのだ。
今まで一度も冠名されたことがなかった「Paris」も、最後の凱旋なればこそだと思う。奇跡の7年間を見せてくれたランスに感謝すると同時に、もうその姿を見ることはないと思うと寂しい気持ちが少なくない。
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