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2006年4月 1日 (土)

if…北見サイクル

漫画「湾岸MIDNIGHT」の登場人物で、この物語の核となっている「悪魔のZ」のエンジンを作り上げ、その後は悪魔のZのライバルであり「ブラックバード」の異名を持つポルシェのエンジンをチューニングしている伝説のエンジンチューナー、そして「地獄のチューナー」の異名を取る北見の現在の本業は、読者でも忘れている人が多そうだが自転車屋である。

悪魔のZを生み出したチューニング工場が倒産した後、何故か自転車屋に行き着いたらしい。シャシの天才なのに自動車免許を自分の意思で取得せず持ってない高木とか珍妙なキャラクターが多いこの作品だが、北見が自ら本業と語る自転車屋は、その名もベタベタな「北見サイクル」だ。北見は自分で自転車操業の自転車屋などとかなり寒い自虐ネタを繰り出している。

北見サイクルは典型的な「街の自転車屋さん」だ。

2.8リッターOHC直6のベースエンジンから実測で600馬力を超えるチューンドエンジンを作り出し「地獄のチューナー」の異名を取った天才エンジンチューナー北見が普通に高校生の通学用ママチャリのパンク修理をやってたりするのがシュールで笑えるのだが、この北見サイクルが街の自転車さんではなく本格的な競技用自転車を扱っていたと仮定したら面白い。

訳知り顔で吹聴する自称玄人、いるよナ。

「エアロバーは初心者の使うもんだ」

とか、

「軽量化は馬鹿のやることだ」

とか。

そうじゃあないんだヨ。

ITT(個人タイムトライアル)と一斉ヨーイドンでやるレースとは違う。

「集団が日和って逃げを追わなかった」

そんなクソな弁明はTTじゃ使えない。ま、ロードレースで使ってもクソな弁明であることにゃ変わりはないが。ククク…。

とにかくTTに展開勝ちはナイ。絶対に自力勝利しかない。遅れは1分でも1秒でも100%が自分持ちだ。

TT用の機材って、高い割に驚くような僅少効果しか出ないモノが多い事は知ってるナ?

例えば、空気整流用の穴が開いてる事で有名なOVAL ConceptsのJetStream A900、あるよナ。タイムトライアルだけじゃなくトライアスリートもフォークだけでも、自腹切ってでもとりあえずこいつに交換する選手がゴロゴロいるくらいトップ選手軒並み御用達な事で、その筋じゃかなり有名なフォークだ。高い割に例外的に売れるもんだからパクリ商品も幾つも出ている。

確かに自転車を時速40km/hで走らせるために必要なエネルギーの80%は空気抵抗を打ち消すために使われている。時速50km/hなら90%が空気抵抗を打ち消すために消えちまう計算だ。速い奴ほど空気抵抗がどれだけキツいかを知っている。

「この、重しでも引っ張ってるような抵抗が少しでも減るなら安いもんだ」

速い奴ならそう考える。でも知ってるか?A900の効果だが

「50Km/hで1時間で走り続けたと仮定して55秒短縮」

がメーカー公表値なのヨ。

時速50km/hで1時間走って、たったの55秒だ。

1時間走って5分縮まるなら凄い。これは誰でも分かる。
55秒だ。1分も縮まっていない。

単独で1時間ずっと50km/hを維持して走り続けるなんて、世界で100人くらいしかできねえ、オレちょっと速いぜ程度の有象無象が何やってもあり得ない走りな事は、真剣に走ったことがあるやつ、レースを知っているやつなら説明しなくてもいいよナ。ツール・ド・フランスの個人TT史上最高平均速度記録は2005年にデビッド・ザブリスキーが達成した54.5km/h弱だが、これは30分間も走っちゃいない数字だ。つまり1時間それだけの速度で走り続けるのは世界最高峰の人間にも難しい。そして空力グッズである以上、速度が落ちるほど効果は係数的に落ちる。非現実的な条件でさえ1時間あたり55秒の効果しかないのに、現実のレースではもっと効果が落ちて、得られるアドバンテージは1時間走ってどうあがいても55秒にならないからくりなのサ。

それを知った上でそこから先が分かれ目だ。

「なぁんだ、そんなちょっとの成果かよ!意味ねえじゃん」

と反応してしまう奴はニセモノなのヨ。

仮に実際の効果が1時間のTTでたった15秒だとしよう。
1時間全力で走り続けて15秒縮まることの意味、それがホンモノには分かる。
全力で走リ抜いた上で15秒だ。本気で走ってる奴は知ってる。1時間全力で走り切った時、15秒は「たったの15秒」じゃない事をナ。15秒前を走っている奴がどのくらい自分の前を走っているか、個人TTをやったことがある奴ならすぐイメージが沸くんだヨ。
15秒。平坦コースならざっと200mだ。奴のケツは遙か彼方。直線でなけりゃあケツを拝むことさえ出来ないほどの大差だ。100%を尽くした上に15秒削れるんだったら、意味は大アリだ。それは15秒がその日たまたま気分がよけりゃ簡単に縮められる程度の走りしかしてないニセモノには絶対に辿り着けない世界なのサ。一流がこぞって自腹でもA900に換えるのは、奴等がそのたった少しの時間がどのくらい重いか、誰よりも身に染みて知ってるからなんだヨ。ゲロ吐くまで走っても届かないモノがあることを奴らは身体で知ってるのサ。「俺だって本気出せば」なんてのは、死ぬまで本気なんか出せっこないニセモノの台詞だ。ホンモノは絶対そんな寝言は吐かない。なんせ本気じゃない事の方が少ないからナ。ククク…。

…なに?A900に興味が沸いてきた?
ククク……。お前も病気だよナ。

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