« ZERO from ZERO | トップページ | ※カテゴリ再構築進行中のお知らせ※ »

2006年5月24日 (水)

知られざる匠とその驚異のわざ

その製品を見たことがある人はけっこういるけど、manufacturerの存在そのものはほとんど知られていない「知られざる巨匠(MaestroもしくはMeister)」

そんな一人がWALSER SPORTを主催するAndy(Andreas) Walserだ。

このWalserなる人物は調べれば調べるほどとんでもなく凄い人のようで、いつものことだが「世界は広れえ!」と感心させられる。

  1. 何と元建築家で、ビルの設計をしたりしていたが仕事がつまらなくてやめた異色の経歴を持つ。この前歴のためと思われるのだが、強度計算や構造設計に長けている。自転車なんぞ作らせるのは勿体ない人物かも知れない。
  2. スイスに工房を構えている。
  3. 工房は個人経営。WALSER SPORTは企業ではない。
  4. 現在の「本業」実は自転車ではなく、スケルトンやリュージュ、はたまた犬ぞり用など橇の製作である。そしてソルトレーク冬季五輪ではWalser製スケルトンを使用した選手が金メダルを獲得しているなど、この分野で世界トップクラスのビルダーである。自転車は単に好きで作っているらしい。おいおい。
  5. Jan Ulrich2003年ツール・ド・フランスのタイムトライアルで使用したBianchi銘の自転車は実はWalserが作ったもので、レパルトコルセ(イタリアの名門Bianchiのレース用自転車専用部門。生粋のBianchiファンにとっては「レパルトコルセ製に非ずんばBianchiに非ず」的な存在だ)が作ったものではない。この自転車、よく見れば確かにWalser製TT用自転車に共通する特徴の、異常に細いトップチューブが使われている。
  6. その後ドイッチェテレコム改めT・Mobileに戻ったJan Ulrichだが、チームの使用する自転車はスローピングの元祖たるGIANTなのにタイムトライアルでUlrich用として見たことないホリゾンタルの車体が登場し、日本の雑誌などではGIANTがUlrich専用に用意したことになっている。が、実はやっぱりWalserが作ったものをGIANT風にペイントしただけである。GIANT側はGIANTが作ったスローピングのTT用フレーム(すごい金かけて作った)をコマーシャル効果からUlrichに使って貰いたかったのだが、Ulrichの契約はUlrichが使いたいと思った機材は何でも使っていい特別な内容になっていた(実にUlrichらしい)ため、UlrichはWalserに特注して作ってもらったフレームにGIANTロゴを入れて使い続けた。ゆえにUlrichが使っていた「GIANT」の一風変わったTTフレームは最後まで彼しか使わなかったし、よーく見たらBianchiの時と色が違うだけで何もかも一緒である。
  7. Wilier銘のTT用自転車の一部も実はWalserが作っている。Karin Thürigがハワイ・コナのアイアンマンで使って以来、トップトライアスリートにもWalserのユーザーが増えている。
  8. Lance Armstrongも、TREKと書いたWalserの自転車を1回だけだが試しに使っている。しかし気に入らなかったそうだ。

ちなみにビッグレースだけで使われるWilier銘のTT用自転車はこんなの

66088521f

アイアンマンで登場するWilier銘の自転車はこんなの

66088520f

である。ユニークな一体型エアロバー「Bar」も
Walser謹製である。Ulrichが使っていたBarは、ブレーキレバーもWalser製だ。

分かりにくいので注釈しておくと、トライアスロン用自転車の方は前ブレーキが空気抵抗低減のためフォークの裏側に付いている上にサイドプルではなくVブレーキである。なおWalserは色んなワンオフのインテグレーテッドエアロバーをフルオーダー製作しており、Ulrichは勿論として、エアロバーだけでもトップ選手で何人か愛用者がいるようだ。

驚きの人物である。

これほど色々やっている人間なのに名前が表に出ることはまずないのも、二重の意味で驚きだ。明らかに隠す必要がない場面でもWalserの名前を出そうとしない。WalserのTTフレームは見た目よりずっと独特の作りで、前方投影面積を小さくするためフォークコラムは全て1inch、エンド幅も特殊で、リアエンド110mm仕様がデフォルト。トラック用の間違いではない。当然普通のホイールは使えないので専用ホイールも販売し、UCIの認可も取っている。またこの専用エンドの狭いチェーンラインに対応する専用BBとクランクも製造し、Qファクターの狭さは尋常ではない。物凄く短いアクスルに驚く。独創のカタマリだ。

考えてみたらあのホイールの神たるLightweightも実はたった2人の元宇宙工学技術者でやっている工房だ。Lightweightには親会社としてCarbonSportsがついたがこれはLightweightの“スポンサー”であって、Lightweightが相変わらず2人でやっていることに変わりはない。

改めて思うのだが、結局本当にグレートな何かとは、大人数が無い知恵無理に絞るため合議して煮詰まって休憩して無駄にタバコ吹かしてまずいコーヒー飲んで喧々愕々の不毛な議論を散々やらかした末に捻り出すものではなく、神の手を持つ天才がぽーんと作り出してしまうものらしい。

|

« ZERO from ZERO | トップページ | ※カテゴリ再構築進行中のお知らせ※ »

コメント

「Wheeler」ではなく「Wilier」(ウィリエール) では?

投稿: jojo | 2006年5月24日 (水) 20:19

全くその通りです。IMで誤変換したまま気付いてませんでした。
早速訂正させて頂きました。
そのままだと暫く気が付かないまま行ってたに違いなく、ご指摘大感謝であります。

投稿: LIVESTRONG 9//26 | 2006年5月24日 (水) 20:40

むかし,RITCHEYのMTBが欲しかった事を思い出しました.
本題からそれてすいません.

投稿: NAKAMURA BENWEB Wataru | 2006年5月25日 (木) 17:37

リッチーも偉大な職人さんですねー。
MTBの発展に多大な貢献があった。

投稿: LIVESTRONG 9//26 | 2006年5月25日 (木) 20:50

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/170044/10219923

この記事へのトラックバック一覧です: 知られざる匠とその驚異のわざ:

« ZERO from ZERO | トップページ | ※カテゴリ再構築進行中のお知らせ※ »