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2006年8月19日 (土)

不正確さが産み出す正確 SKS AIRBASE

私が愛用しているフロアポンプ(つまり空気入れ)はドイツSKSのAIRBASEである。

Airbase1

SILICA PISTA
SILICA SUPER PISTA
SKS AIRBASE

と使い比べてみて、一番完成度が高いと感じている。他にもあるかも知れないがこの3つで比べて一番のものを上回るとなると生半可なことではないと思うので乗り換えもないだろう。
AIRBASEの良いところ

  1. 値段にふさわしいしっかりとした質感と丁寧な作り
  2. 作動のいちいちがスムースでかつ節度がある
  3. グリップが握りやすい
  4. 付属メーターが上部にあり見易い
  5. 付属メーターが異常に正確
  6. フルストロークさせると1ストロークあたりの充填量がロード用フロアポンプとしてはかなり沢山入る
  7. その割に16barまで入る

あたりだと思う。
AIRBASEのメーターの見やすさは抜群で、本体上部にあって目に近いだけでなくメーター自体が大きめでかつ目盛りが明確。そしてこの点は他で聞いた覚えがないのだが、付属のメーターがタイヤの実空気圧比で凄く正確なのである。これは他になかなかない長所だ。

ポンプ内蔵のメーターは信用するな

と聞いたことがないだろうか。これは理屈上も経験的にも正しい話だ。

フロアポンプの内圧とタイヤに充填されたエアの内圧は同じ

だと思っている人は居るだろうか?
これはマチガイである。何故ならフロアポンプの内圧がタイヤの内圧を上回っているからこそフロアポンプはタイヤにエアを充填できるからだ。同じか低ければ、エアは永遠にタイヤに入らない。当たり前の理屈である。

つまり「フロアポンプ内蔵のメーターに付いているメーターが仮に完璧に正確なフロアポンプ内圧を示していたら、それは絶対にタイヤの内圧と一致しない」のである。だからメーターが壊れていたり甚だいい加減なものでない限り、フロアポンプの圧力計は必ずタイヤの内圧より高い値を示す。試しにフロアポンプを取り外してから空気圧計で計ってみたらいい。必ずポンプのメーターが示していた値より低い。これは「どっちを信じたらいいんだ」の話ではない。前述の通りポンプ内蔵のメーターは、機械的に正確であれば構造的にタイヤ内圧を正確に表示するはずがないのだ。

では何故AIRBASEのメーター表示は妙に正確なのか?
単体空気圧計に比べてだいたい0.1〜0.2barくらいの狂いしかないし、ほぼ一致することも大変多い。この正確性は異常で、PISTAなどは1bar違うこともある。もともとPISTAのメーターは怪しいが、それを差し引いても前述の通りこれは故障ではない。TOPEAKのものもやはり0.5barくらい違って普通で、1bar違うこともあった。

これは私の想像に過ぎないのだが、AIRBASEの異常に“正確”なメーターは

ポンプの内圧を正確に表示しない、予め異常に設計したメーターを装着することで「ポンプ内圧」ではなく「タイヤ内圧」を表示するようにしてあるのではないか。

としか思えない。これはさりげなく凄いと思う。「言うは易く行うは難し」で、相当な試行錯誤をしないとこんなメーターは作れない。ただ単に正確なメーターを作ってもダメだからだ。

欠点もある。

  1. 想定身長が最低175cm前後(最高の間違いではない)
  2. アルミボディだが軽くない
  3. 12barくらいからはフルストロークさせるとよほど体重が重くないと押し切れない

ドイツは成人男性の平均身長が175cmほどあるそうだが、それに合わせたのかAIRBASEをフルストロークで使うのは身長170cm前後以下の人にはかなり困難だと思う。だいたい190cmくらいがベストっぽい。ただしこれはフルストロークさせようと思わなければいいだけの事。フロアポンプは、押すときは最後まで押さないとダメだが引くときはフルストロークさせる必要はない。

軽くないボディは高圧に耐えるのとトレードオフだろうし「信頼感のある重さ」と評せなくもない。

12barくらいから押し切れなくなってくるのは、偏にストロークが長く1ストロークで入るエアの量がロード用としては比較的多めなのが原因だと思う。これは高圧用フロアポンプとして定評があるPISTAのストローク延長版であるSUPER PISTAも全く同じで、私のように細長くて軽量な人間だと圧が低いうちはストロークが長い方が便利だが12barくらいからは全体重を掛けても押し切るの難しい。AIRBASEも13barくらいからは完全に足を浮かせグリップに全体重を乗せ切っても押し切れない。ただし解決法は簡単で、意固地にならずに引く時のストロークを減らせばよい。ポンプ自体の耐圧性能は極めて高く、11〜12barくらいからストロークを減らせば15bar以上充填することもできる。

自転車用フロアポンプとしては高い方だが、上限11barに過ぎないポンプでもっと高いものも存在するので決して無駄に高くはないと思う。メーターがタイヤ内圧を正確に示す希有の能力を持っている事も併せ、これからもずっと愛用予定だ。

Airbase2

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コメント

いつも読ませてもらってます。
T-mobileが好きで、そこが使っているというAIRBASE買いました。
題名だけ見たときはもしかして
「これは使えん」
みたいなことを書いてあるかと思いどきどきして読みました。
自分はこれが初ポンプで、最初知り合いからLIVESTRONGさんと同じように
「ポンプ内蔵のメーターは信用するな」
みたいなことを言われて、Panaracerのエアゲージを一緒に買って併用していたのですが、あまり両者の値が変わらなかったので
「エアゲージ買って損した?」と思っていたのですがAIRBASEが特殊だったんですね。
それと空気の入れ方なのですが自分は身長184なのですが、フルストローク使っても15~20cmぐらいから押しても変わらないように思うのですが・・・
最後に自分としてはもう少し軸(ストロークしてるところ)が太いほうが楽に空気を入れられるように思います。

長文になってすみませんでした。

投稿: nanashi | 2006年8月19日 (土) 23:44

どなたか存じませんが初めまして(「名無し」は名前ではない筈ですので)

メーターに関しては、AIRBASEが特殊です。
普通はポンプ内蔵のメーターなんぞ信用したらあきません。

なお「20cmくらいから押しても変わらない」は、12bar以上の話ですか?
12bar以下ならどこから押してもほとんど変わりません。

軸の太さですが、たぶん見た目の軸の太さで解決できるわけではないと思います。

また全然長文ではないと思いますので遠慮していただく必要はありません。
私は1万字くらいから長文と考えます。

投稿: LIVESTRONG 9//26 | 2006年8月21日 (月) 18:58

凄く遅いコメントですが、
QUICK FIXというメーカー(名称かもしれません)のポンプも中々です。

8barまで行ってもまだまだ余裕があり、
そのままシュコシュコいったらチューブを破裂させるような危機さえ予感させます。

また、ゲージも正確で
ポンプのゲージで8barを指したところでエアゲージで計ったらなんと8bar!

勘で買ったら当たりだったみたいな、何だか得した気分で、
スウェーデン製も中々大したもんだと感心した次第です。

投稿: 猫の郵便屋 | 2008年8月 4日 (月) 17:54

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