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2006年10月 4日 (水)

ergomoでわしも考えた

以前からパワーメーターの比較は何回か書いているが、ergomoを使ってみた実体験も加えて再考証。

SRMは、自転車用パワーメーターとして一番歴史が古い。以前にも書いたが、ドイツ自転車協会の要請で生まれた製品だ。その歴史の中で磨かれてきたため、過去何度も書いているように「枯れている」点では一番。このためトップレベルアスリートの使用率がずば抜けており、トラブル話もまず聞かない。年々バリエーションが増えスルーアクスル型やコンパクトドライブも用意するなど、会社の規模が小さい割には頑張っている。これはたぶん、SRMがそれだけ必要とされていて協力者が多いせいだと思う。校正がユーザー側で行えるのもメリットだと思う。SRMのナカミとはあまり関係がないが、日本で代理店をしているアマンダの販売価格はちょっと驚異的なくらい良心的で、昨今のユーロ高の関係もあってヨーロッパから直接買うより安いのにはびっくりした。PowerTapの某代理店は千葉氏(注:アマンダ店主)の爪の垢でも煎じて飲んだ方がいいのではないか?

PowerTapは新興の部類だが、SRMのプロと比較してほとんど誤差に近いようなレベルで同じ計測が行える優秀な実力を持っている事は、何人もが行った比較テストの結果として定評がある。違いは多少実測誤差が多いくらいで、値段の違いを考えると素晴らしいポテンシャルと評して良いだろう。そもそもPowerTapは計測方式自体SRMと同じストレインゲージ式で、計っている場所が違うだけなのだ。PowerTapは唯一のリヤハブ組込型なので他のパワーメーターと具に比較可能だが、アメリカのパワーメーター専門店が独自にやったSRM、ergomo、PowerTapを1台のロードバイクに装着しての比較テスト(スクエアテーパー仕様のergomo BBにスクエアテーパーモデルのSRM professionalを装着)でも確かにSRMとPowerTapがほぼ同じ値を示した。コンピューター部の防水性が悪い個体が時々見られる?らしいが、機械的信頼性は全般に高く、SRMと同じくユーザー側で校正を行える。アメリカ直で買うと日本の半額+アルファくらいで手にはいるなど日本の販売代理店はちょっとボッタクリがきつい気がするが、アメリカの本家メーカーがー日本のユーザーにも真摯に対応してくれる上に対応も早いそうだ。当初ハブ単体から始まったPowerTapだが、ZIPPやBontragerなど「PowerTap組み込みファクトリーコンプリート」を売り出すなど協力企業が増えている。これはPowerTap(会社としてはSARIS)側の積極的な姿勢と、PowerTapの「モノとしての完成度」が高いことを物語っていると思う。PowerTapは今年のツール・ド・フランスでフロイド・ランディスが使用して目立ちまくったが、最後に残念な結果となったのはSARIS側としてもぬか喜びの後で残念だろう。

ergomoは、SRMと同じドイツ生まれ。考え方はSRMと似ているが、こちらはBB自身に組み込んでしまう形式を採用した。センサー部のコンパクトさ、スマートさはダントツである。組み込んでしまうと使っていることが分からない。パーツの自由度も一番だが「右クランクに対して左クランク側で発生した捻れを検出してパワーを算出し2倍にしている」方式を採用している(公式発表ではなく、ユーザーで突き止められた)ため、ペダリングに左右差がほとんどない事が前提になっている設計なのが、ergomoの「方式欠陥」とでも呼びたい問題点。これはSRMやPowerTapでは方式からして起きえない。ergomoはSRMの最上位機種Scienceもびっくりの「パワー測定誤差0.5%」を標榜しているが、この“0.5%の再現性”はあまり高くないと思う。あくまでペダリングパワーが見事に左右50:50キッチリの、モーターのようなペダリングが出来る人間が使えば0.5%なのだろう。しかしプロツアーのレースで勝利するくらいのトップレーサーであっても大がかりな装置でペダリングパワーをきっちり測定してみると左右差があるのは珍しくないどころか普通なので、ペダリングに左右差がないことが前提のシステムは微妙で、BBに組み込んでしまう発想とかは決して悪くないと思うのだが「机の上で出来上がった機械」かなあ?と思うところがある。先のSRM、ergomo、PowerTapの同時組み込みテストでも、ergomoだけ時々他の2つから突然外れた値を出すことがあった。これはペダリング左右差によって生じたものだろう。実際、ergomoは左足をペダルから外してわざと右足だけで片足ペダリングをするような通常と異なる使い方をするとパワーを正常に計測できないのがユーザーサイドで確かめられている(なおSRMやPowerTapはこのようなイジワルな事をしても正常に計測できる)し、故意に左足を強調してペダリングすると検出されるパワーが即座に上がる。もっとも実用上の誤差はそんなに危惧するほどではなく、比較テスト結果を見ても0.5%こそ机上の数字だがパワーメーターとして十分な精度はあり、ほとんどはSRMのprofessionalとほぼ同じ値を計測するなど、それこそPOLARのPower Output Sensorあたりとは全然違う。これでSRMのアマチュアより安いのだから上出来だろう。最も新興であるせいか機械的信頼性にやや「?」が付くのが案外最大の難点かも知れない。私のergomoも結局不良だし、他にも一人、初期不良で返品した人の話を聞いた。ただしergomoの名誉のために書いておくと普通に動いている人も当然いるし、私のも代替品は確かに普通に動いている。最後発の利を活かして機能的によく考えられ多機能に作られているのは間違いなく、特にコンピューター部の表示の見やすさは図抜けていると思うし、今のところパワーメーターで唯一高度計や斜度表示を備えている。一番気になるのは、ユーザーサイドで「セッティングはできても校正ができない」点だろうか。この点がSRMやPowerTapにはっきり劣るところだと思う。一定の恒常性はあるだろうが絶対値としての正確性を気にする人には向かないだろう。2〜3ヶ月毎、多いときは1ヶ月に複数回も何らかの改良が加えられるなど凄いペースで改良が進んでいるのは、開発元のやる気が見える反面「未完成」の証明でもあると思う。以前にも書いたが、ハードウェアとしては搭載されている赤外線通信ポートを現状何も使えてないなど、素人目で見て分かる未完成部分すら残されている。

「高くて、信頼性があってきちんと作ってある」がSRMだろう。SRMがいいのは今更議論する必要もない。皆、SRMでは高くて買えないから代替品で何とかならないかと悩むわけで。ただ、ちょっと問題なのは「アマチュア」の存在。このモデル一見安いが、計測精度が低い上に校正をしょっちゅうしてやらないと計測値が狂いやすい欠点まであり、結局SRMを買うならprofessional以上でないと実用上厳しく、安かろう悪かろうモデルになってしまっていて存在意義に疑問を感じる。「安い」にしてもSRMの中での比較論で、PowerTap PROやergomoより高いのだから精度はともかく狂いやすいのはいただけない。SRMの欠点はこの人を喰ったようなアマチュアモデルの存在と値段で、それ以外には欠点らしい欠点がないように思う。なんせ最短だと「0.02秒毎に記録」とか、異常なくらい細かい記録も可能なのは旧東ドイツ生まれらしいと評したらいいのか何なのか。もっとも0.02秒間隔で記録するとたった20分でメモリが一杯になってしまうそうだが。

PowerTapは安い割にSRMと同じ計測方式で、校正も可能で、ホイールが固定されてしまう点を除けばコストパフォーマンスは最高だが、ホイールを使い分けしたければPowerTap組み込みホイールを複数用意することになり、こうなると逆にergomoはおろかSRMをも上回るほど高く付く事になりかねないのが痛し痒しだ。現状ディスクホイールも存在しない。逆にクランクには一切の制約がない。ハブとしての回転そのものはかなり渋いだとか、アメリカンな「そんな細けえこたーいいじゃん」な部分がなきにしも非ず。細かいことを気にするタイプには向かないかも知れない。

ergomoの場合、長所はやはりホイールもクランクも好きに選べることだろうし、コンピューター部が高機能で見易いことも良い。ergomo BBの種類はスクエアテーパー、Octalink、ISISと用意され軸長も複数選べるようになっているので、機材選択の柔軟性は一番。メモリ搭載量もSRMを上回り、欠点はペダリングの左右差が計測精度に反映されてしまう点とまだ完全完成品ではないと呼んでいい状態であることだろう。

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コメント

面白い考察ですね。
交通事故の示談金が振り込まれたらSRMサイエンスが買えそうなくらいになりそうなのでまじめに検討しています。
POWERTAPで手組みというのもトレーニングに限って言えば十分に使えると考えています。

知人がアマンダでフレームを作ってもらう際にSRM計測を行いましたが、心拍数と出力にはあまりリニアな関係がない?みたいなことを千葉氏が語ったそうです。
ちなみに千葉氏はSRM側から代理店を依頼されたようです。
儲ける気も積極的に売る気も無いのであの値段なのでしょう。

出力トレーニングとホイールテストの結果楽しみにしています。

投稿: 大豆 | 2006年10月 4日 (水) 03:18

大豆さん、まいどです。

千葉氏は明らかに儲けようと思ってSRMを扱っていないのを感じます。
さすがに損はしていないでしょうけど、SRMで儲ける気ならProfessionalを60万か70万くらいで売ってもいい加減です。PowerTapのように海外の2倍で売っているのが普通だったりするわけですから、日本でSRMの“安さ”は図抜けています。

SRM Scienceが一般人に必要か?と思うと流石に疑問符も付きます。
PROとの差額をいいホイールに回した方が幸せになれるでしょうね。
2006年中は、お金があるならSRM Professionalで答えはもう出ていると感じます。
ただし、自分に最適なクランク長がかっちり出ている人の話です。

千葉氏談の「心拍数と出力の関係は必ずしもリニアではない」ですが、これは実際にパワーメーターを使って走ってみるとその通りである事が分かります。このような事が分かるだけでもパワーメーターの導入はやはり他で得難いものを得られる事に気付きます。

ホイールテストの結果は、中間2にしかなりませんがそのうち書きます。最終的なところでは来年また暖かくなって気温が30度にならない限り続きができません。

投稿: LIVESTRONG 9//26 | 2006年10月24日 (火) 16:31

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