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2006年10月 1日 (日)

クランク長の謎(2)

クランク長の話2

私は「万人に適合する適正クランク長の法則」を捜すこと自体にはほとんど興味がない。自分でやろうとしても私ごときの手には余ると思っているからだ。できるものなら調べてみたい気はするが、その力もなければそのような立場にもない。

私自身は今まで

175
172.5
170
167.5
165

と試している。我ながら飽きずによくやったもんだ。実験君な性格が出ているな。

ところで、クランクが長くなると何が起きるか?を検証してみよう。

  1. サドルは伸ばしたクランク長と同じだけ下がる。(下げなくて済むとしたら元のポジションが誤り)
  2. クランクが伸びサドルが下がるため、ペダル上死点は伸ばしたクランク長の2倍、体に近づく。
  3. サドルが下がるため、最も力を加えられる位置であるクランク3時(水平点)は、伸ばしたクランク長だけ、体に近づく。
  4. 最も力を加えられる位置であるクランク3時は、伸ばしたクランク長だけ、前に出る。

ここまでは「客観的事実」である。

この手の話で良く出てくるのが

I.
登りは長いクランクの方が楽である

II.
使える限り長いクランクを使った方がよい

III.
クランクを短くすると、ギアを軽くし余計に回す必要がある

考証:

I.
人間が駆動していることを無視した単純な「てこの原理」で考えると正解であるが、実際には上記3及び4の理由によりクランク3時の膝角度が深くなる上、使う筋肉の部位が変わってくるので、そんなに単純ではない。

II.
経験則的に知られている。なお現実にはオールラウンダーに当てはまりスプリンターには当てはまらない傾向がある。

III.
クランクを短くすると、クランク3時の膝角度が浅くなるので、実は「テコは短くなるがより強い力を加えやすく」なる。このため、試していない人が思いこんでいるほどクランクを短くすることの弊害は強くない。

自分でやってみた検証結果:

I.
短くしても遅くならず、長くしてもほとんど速くならなかった。しかも長いクランクの場合は脚が“切れて”しまいやすく「最初ガンガン登っていって途中で脚が切れペースがガックリ落ちる」を頻発。結局トータルタイムとして一番速かったのは意外にも165mmだった(坂道の話。平地は違う結果が出ている)。パワーペーシングを行っていない検証なので、再検証は大いに必要と思われる。

II.
筋肉への負荷で見ると、長い方が明らかに「あちこちの筋肉」を使うのを体感できる。単純に関節の可動範囲が増えるせいだと思われる。長いクランクで重い負荷を回すには高度に発達した下肢が必要だと思われる。

III.
必要ない。思い込みで判断せずに実際試してみれば分かるが、クランクを短くしても意外とギアを軽くせず済んでしまう。考証IIIの通りになる。

その他思ったことなど

  1. ダンシングはクランクが長い方が明らかにやりやすい。短いクランクでダンシングするのは独特の慣れを要する。アームストロングが長いクランクを好んだのは、アームストロングが坂でダンシングをことさら多用する選手だった事と無縁ではないと思う。
  2. 165mmだと最高227rpmまで回せたが、170mmだと212rpmになり、175mmだと197rpmが最高で200を超えられなかった。長くすると最高回転数はけっこう落ちる。
  3. 平均ケイデンスは結局ギアの選択と走法次第で、同じコースのほぼ同じタイムでも165mmの平均ケイデンス90だったり172.5mmの平均ケイデンス100だったりと、一般に思いこまれている結果(短いクランク=高ケイデンス走法)と逆転することはいくらでも起きる。
  4. 検証I、IIIから鑑みるに、発達した下肢の持ち主であればあるほど長いクランクを使った方が「色んな場所に負荷を分散」させることでタイムは向上すると思われる。逆に、下肢が発達していない場合は「力の出ない範囲」が発生してしまい、理屈通りに長いテコの長所を発揮し得ない。スプリンター型の選手の多くがそんなに長いクランクを使わないのも、満遍なく力を発揮することより「一番発達した筋肉部位を集中的に使って短時間に爆発的な力を出すため」ではないだろうか。

まだまだ続く。

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コメント

 はじめまして。クロモリと申します。毎日 LIVESTRONG 9//26さんの記事を楽しみにしていましたが,今回初投稿です。

 私が今まで使用したクランクは170と175ですが,170から175に変えてすぐは違いが分かりませんでした。
 ただ,使っていくうちに,以前との違いをいくつか感じるようにもなりました。それは,

1. 長いクランクは,やはり短いクランクよりもケイデンスが落ちる。最大ケイデンスもそうだが,同じケイデンスを維持するのも疲れる。

2. 長いクランクの方が,「急な坂道で」より楽なような気がする。これは,シッティングで強く感じた。

3. 長いクランクを使用するようになって,膝が痛くならないようになった。

 以上の3点が主なところでしょうか。あくまで主観的なもので,LIVESTRONG 9//26さんのようにタイムなどによる客観的なデータを取ったわけではないのですが。

 私が思うのは,自転車を推進させるのに必要な力は「ペダルを回す力」と「ペダルを踏む力」とがあり,前者の運動はどちらかというと「自身の肉体(主に脚部)を持ち上げる」という運動に近く,前者と後者の運動の質は少々異なるものではないか,ということなのです。そして,ペダリング時にライダーが使用する力は

 (ペダリングに必要な力)=「ペダルを回す力」+「ペダルを踏む力」

と考えています。

 つまり,「ペダリングに必要な力」の絶対値が同じとすれば,長いクランクは「ペダルを回す力」は大きく必要となる(脚部を大きく回転させるため。)が,「ペダルを踏む力」は少なくても済む(テコの原理。ペダリングに全面的には当てはまらないにしても。)。一方で,短いクランクは「ペダルを回す力」は少なくても済むが,「ペダルを踏む力」は大きく必要となる,といえるのではないでしょうか。
 よって,私の結論は,「ペダル(脚部)を回転させる事が得意な人」は長いクランクを使用した方が速く自転車を走らせる可能性があり,「ペダルを踏みつける事が得意な人」は短いクランクを使用した方が速く走れる可能性がある,というものなのです。
 ただ,「ペダルを踏みつける事が得意」とは一口にいうもの,「踏む」という運動にも脚部の前面を主体的に使う方法と背面ないしは体幹部を中心的に使う方式とがあるので,話がかなりややこしいことになるような気がします。

 結局,どのクランク長が一番良いかは個々人の筋肉支配(神経及び筋肉量)及びトレーニング等によるために一概には言えないということになります。最終的には,自分に合っていると「感じる」クランク長が一番良いのでは?とも思いますが(笑)。少なくとも,私は175で今のところ良い感触がありますので,今後とも175を使い続けるつもりです。

投稿: クロモリ | 2006年10月 1日 (日) 11:49

クロモリさん、はじめまして
これからもよろしくお願いいたします。

力作ありがとうございました。

大変参考になります。
このネタは何らかの「答え」を私が勝手に出そうとしているものではなく、これからも考え続けてゆくつもりです。

ただ、私の今のところの考えでは、タイムも使ってみた感触もたぶんそんなにあてにならないと思います。結局「その人にとってどの長さが一番パワーが出るか」に尽き、それ以外は予断や偏見が入り込む余地がありすぎます。

投稿: LIVESTRONG 9//26 | 2006年10月 9日 (月) 21:24

興味深いサイトを見つけましたのでお知らせします。既知でしたらお許しください。

http://www.geocities.jp/resultri/crankcho/

投稿: ランス | 2007年4月14日 (土) 12:03

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