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2007年9月17日 (月)

見せつけられた理想主義

Zipp

EUROBIKE 2007でデビューしたZIPPの新クランク、VumaQuadについては既に知っている人も多かろう。

色々と特徴が多いクランクだが、それらを一言で説明するなら

徹底独自規格商品

に尽きる。アクスル軸の中空部分にFC-7800のアクスル軸がスポンと入ってしまうほど大口径のアクスル軸を使用しているスルーアクスルクランクは、当然ながら専用BBしか使えず、他のスルーアクスルクランクと一切の互換性がない。FSAやSTRONGLIGHTがシマノ互換路線を採ったのとは温度差がある。それだけ大口径のBBアクスルを使えばそりゃもう大変な高剛性なのだろうけど、そんなに凄まじいアクスル軸剛性が必要って、Tom Boonenスペシャルかこれは?

そして仰天の変速4アームスパイダー。
しかもMTBで主流の4アームとも違う、Campagnoloのクランクのようにクランク自身もアームを兼ねてしまう方式である。これは見た目がスッキリするし一見合理的に思えるのだが、実はチェーンリングの付け外しが面倒臭くて整備性が良くない。設計にもよるが、クランク部にだけ別のボルトが必要になることが多いのもますます整備性を悪くする。私もSTRONGLIGHT製のCampagnolo方式5アームクランクを使っていたので分かるのだが、いっけん僅かな違いなのに予想以上に面倒臭かった。チェーンリングを交換する時、ごくありふれた5アームだとクランクを回しながら次々とボルトを弛めたり締めたりすればよい。が、カンパ方式だと1本だけ“裏向き”だからひっくり返さないといけないのだ。もちろん僅かな手間なのだが、この方式を採らなければ必要なかった無意味な手間だ。

VumaQuadもこんなスパイダーアームを採用してしまうと当然ながら専用品のチェーンリングしか使えないし、Campagnoloのようにそれなりに規模のある総合コンポメーカーならいざ知らず、他のメーカーがVumaQuad用にわざわざチェーンリングを作ってくれる可能性は限りなくゼロ(見たところ純正チェーンリングそのものはSTRONGLIGHTからOEMのようだが)なので、チェーンリングの選択肢は純正以外にない。Campagnoloクランク用のチェーンリングの規格も現行Campagnoloしか採用していない孤立したものなのに幾つものメーカーがCampagnolo用チェーンリングを発売しているが、これはまがりなりにもCampagnoloがある程度のシェアを握っており、出せば売れることが見込めるからだが、そのCampagnolo用でさえ現実に種類が少なかったり無駄に高かったりする。VumaQuadの場合はわざわざ専用商品を売り出すほどの売り上げが到底見込めない。プロツアーのレースでCampagnoloコンポ採用チームの選手がTTの時に55Tのようなビッグギアを使いたい時、純正で用意がないからSTRONGLIGHTやTAのチェーンリングを使って済ませるパターンがある(超の付く一流選手の場合はCampagnoloに特別に作って貰えたりするが)が、ある程度普及した規格を採用していると純正品のバリエーションが乏しくてもこのように何とかなってしまう事例だ。しかしこのVumaQuadでは「純正で用意がない歯数だからTAやSTRONGLIGHTのものを使う」SHIMANOやその互換品はもちろんCampagnoloのクランク使用者でも普通に思い付くことが実行できない。独自ヘンテコ規格を登場させるのはこのように大変リスキーなものなのだ。

ゼロから考えて理想を追求する。

その考え方そのものは決して間違っていない。VumaQuadが軽くて高剛性なのは、ヘンに互換性を担保しなかったからだと思う。しかし、いざそれを現実に作ってみせられると「世間が狭い」ものが出来上がる一例を如実に見せつけられた思いだ。

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