HOLLOWTECH II全盛の時代だからこそクランクに忍び寄る不吉な陰
FSAが肝いり(?)で2007年発売したフルカーボンのTT用エアロクランク、NEO PRO。
物凄く気合いの入った作りで、一般市販品としては2007年10月現在最もエアロなクランクと思われる。
だが、意外な問題点がある事に気付いた。
FSAももう気付いているだろう。
画像を見て欲しい。
ネオプロは最近もはや流行ではなく「完全に主流」と化したSHIMANO HOLLOWTECH II互換のスルーアクスル方式を採用している。
ただ採用しているだけでなく、独自の工夫を加えた。
HOLLOWTECH II方式スルーアクスルクランクは、使っている/使ったことがある人なら知っての通り、BBがフレームから飛び出している。飛び出しているのが“長所”にもなっている(=ベアリングの位置が従前よりずっと外側に出ているので剛性が飛躍的に高まり、またBB内径に依存しない大径ベアリングを採用できた)わけだが、これは細かく見れば余計な突き出しであり空気抵抗だ。空気抵抗まで考えなくても正面から見てベアリングがボッコンと飛び出しているのに違和感を感じる人、けっこう居ると思う。あれに違和感を感じないのは、細かいことは目に入らない人か自転車マニアかのどちらかだ。わざわざTT用にエアロクランクを作ったので、FSAはこの「飛び出し」を無視せずフレームから飛び出している部分を覆うような造形をクランクに与えた。お陰でFSAご自慢のレッドアルマイト処理を施されたCeramic MegaExo BBは流麗なクランクに覆われ外から一切見えない。
素晴らしいアイデア
…と、思ったかも知れない。
ところが思わぬ落とし穴だ。
この「覆い」のせいで、TREKの新型MadoneやSCOTTのADDICTで突然採用され始めた「スルーアクスルクランク用のベアリングがフレームにめり込んでいるBBを持つフレーム」には使えないのである。
規格があってないようなモノゆえに起きた“衝突”なのだろう。
スルーアクスルクランクも最近SHIMANO非互換のより大口径なものがじわじわ増えてきている。FC-7800のアクスル軸がすっぽり入ってしまうほど太いアクスルを採用したZIPP VumaQuadがそうだし、新たに「BB30」を採用したSTRONGLIGHTは苦肉の策?としてSHIMANO互換口径のモノとBB30の2種類をラインナップするようだ。はっきりしたことは分からないが、このような理由でVumaQuadは新しいMadoneやADDICTには使えない筈だ。MadoneやADDICTはクランクがSHIMANO互換である事を完全に“決め打ち”してしまう前提で作られたフレームだ。これはSHIMANOが従前形式BB前提でHOLLOWTECH IIを作った頃とはまるで違う、HOLLOWTECH IIを前提としてフレームが作られるようになった事を意味する。自転車の作りそのものが違ってきはじめたのだ。
そろそろ話し合って規格を考えないと、早晩ぐちゃぐちゃになって物凄く詳しい人間以外には訳が分からない状態になるんじゃないだろうか。
お互い「自分とこの製品さえ売れればいい」のが本音だから難しそうだが…。
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コメント
初めまして。いつも楽しく拝読させて頂いております。
シマノについてもホローテック2は次の段階を試行錯誤中のようです。
MTBではこのホロテク2BBを内蔵してしまう幅広のBBシェルと、それに対応して拡大された太いダウンチューブのバイクがテストされています。(主にDHバイク)
またBBについてもスレッド式でなく打ち込み式のものもテストされているようです。
BBシェルのインテグラル化とも言えると思います。
書いておられるように、インテグラルヘッド同様、各社規格乱立になりそうで心配です。
投稿: えて | 2007年10月24日 (水) 19:03