« CYCLE MODE 3 Power of design. | トップページ | 乳酸を活かしたスポーツトレーニング »

2008年11月 6日 (木)

CYCLE MODE 4 ヘルメット界のジオング

OGKのブースで興味深い話を聞けた。

Sany1005_2

このエアロヘルメットに絡んでである。

OGKは、知っている人なら知っている通り、前からエアロヘルメットを販売していた。モストロTTではない。
受注生産で実に10万円ほどもする超弩級フルカーボンヘルメット「AERO-TT」だ。このヘルメット、発売当初は6万8000円だったが1個1個手作りで生産が全然追いつかず、いつも納期未定。生産が遅れっぱなしだからしまいにはOGKのHPから削除され、値段も改定されてモデル末期には9万円台にまでなった色んな意味で驚きのヘルメットだった。最後の方はカタログに載らないモデル化していたので、選手が被っているあれが売っていることを知らなかった人も多かったのではないだろうか。生産が追いついていなかったのである意味「売っていない」商品ではあったが。

だが、私は前から思っていたし他にも気付いていた人は沢山居るだろうが、

このヘルメット、モガいて顔が下を向くと“尾っぽ”部分が思いっきりエアブレーキになってしまう

のである。これは別にこのOGK AERO-TTだけの現象ではない。テールが長く真っ直ぐ後方に伸びたヘルメットほぼ全てに当てはまる。

OGKは、AERO-TTを作るときだって風洞実験して作っている。
ヘルメットのプロなのだ。この事にいつまでも気付かないほど間抜けでは恥ずかしい。

やっぱり気が付いていたのだった。さすがプロだ。だいたい、トップ選手からの要望として尾っぽが長いヘルメットの問題は既にフィードバックされていたそうだ。そら、よほどアホでなかったら気が付くわな。

こうして生まれたのが上掲AERO-TP
明らかにテールが短くなったし、今までの同等製品よりもより急角度で尻尾が落ち込む造形になっている。

Sany1031
こちらは日本のナショナルチーム供給モデルで、外見的な造形は同じだがより軽量な非売品。こちらの製作はOGKではなく童夢で、触らせて貰ったがテール部分はそりゃもうビビるほどペナペナ。極限の薄さで作られていた。

もっとも量産型も

Sany1033

このように光が透けるくらい薄くできており、重さは300gを切っている。

もう一つポイント。

この新型エアロヘルメットで「テール部分にアンダーカバーがないな」と思った人は非常に鋭い。

これは手抜きではない。

数年前まで、エアロヘルメットにアンダーカバーは半ば常識だった。
かつて、当時ファッサボルトロの若手新鋭だったFabian CancellaraがプロローグでLance Armstrongを破ってマイヨジョーヌを獲得した時も、Giroからトップチームにだけ供給されていた非売品モデル「Rev VI」を与えられないファッサボルトロの選手は市販品「Advantage」を使用していた。そして空力を少しでも良くしようとアンダーカバーとしてサランラップ(笑)をヘルメットに巻いたのが面白い工夫としてTVに取り上げられたものだ。

気が付いている人は気が付いているだろうが、2008年からGiroはRev VIを供給していない。「Rev VII」を作ったわけでもない。全チームAdvantage2だ。そしてアンダーカバーはなしである。

OGKの人から直で詳しく聞けたのだが、風洞実験の結果、アンダーカバーがあるとそこで負圧を生じてドラッグの原因となるので、後部は解放して額のエアインテークから取り込んだ空気を綺麗に後方へ流すことを考えた方がトータルの空気抵抗が減ることが確かめられたのだそうだ。なお、私は上記のエアブレーキ現象についてもこの人に話したのだが、全くその通りですと回答を得た。

Giroが全チームAdvantage2供給に換えたのは偶然じゃない。

Advantageの方がテールが短く、アンダーカバーもないのだ。

Levi Leipheimerのように

103189

こんな風にモガく選手だと、テールの長さ=マイナスに直結する。それこそAdvantage2よりもAERO-TPの方が彼にはずっと向いていそうだ。その筋では有名(?)なCASCOのWarp IIが一番じゃないか?と思うほどだ。

そうか!と全てが繋がり、静かな感動を覚えた。

つまり

「アンダーカバーが付いてないようだが」

「あんなの飾り(むしろマイナス)です。偉い人にはそれが分からんのです」

自転車における空力の研究は、事実上まだ歩き始めたばかりの幼児レベルである。
自動車のF-1などに比べれば、言葉通りの児戯にも等しいレベルなのだ、きっと。
だからこれからも沢山の「そうか!」に出会えるに違いない。

AERO-TPの開発に絡むエピソードは来月号の自転車雑誌に載るそうだ。楽しみである。

|

« CYCLE MODE 3 Power of design. | トップページ | 乳酸を活かしたスポーツトレーニング »

コメント

OGKの旧型のカーボンエアロヘルメットを被ったことがありますが軽いのはいいのですがあまりに高くて話になりません。
今はADVANTAGE2を買いました。しかし被りにくい(笑)

投稿: hiro | 2008年11月 6日 (木) 09:45

オートバイのレースでは、背中に流線型のコブがついた
レーシングスーツを着ていますが、自転車レースでは、
ルール違反に成るのでしょうか。

もし違反でなければ、その方向に行くのでは。

投稿: たけなか | 2008年11月 6日 (木) 12:41

なるほど! アンダーカバーが無いのはそう言った理由でしたか。
言われてみれば納得ですね。

投稿: nYolo | 2008年11月 7日 (金) 22:08

hiroさん、OGKのは事実上手作りだから高価なのは仕方ないでしょう。儲けが出る商品じゃないので安くする気も無いと思います。

たけなかさん、アピュイドセルがダメですから、よほど何かうまい言い訳を考えないと違反になるでしょうね。

nYoloさん、私も説明されなければ分からなかったところです。

投稿: LIVESTRONG 9//26 | 2008年11月 9日 (日) 16:14

素人考えですが、以前取り上げられてた「着込む」ハイドレーションパックを流線形に加工するのはどうでしょうか?

サイズ・取り付け位置共似てる気がしますし、スピードボトルよろしく
「ボトルですが何か問題でも?」とゴリ押しできそうな…。

投稿: アストラル | 2008年11月 9日 (日) 23:48

アストラルさん、まいどです。
今シーズンで引退したBobby Julichがハイドレーションバッグの愛用者でした。
TTの時に背負って(スキンスーツの下に着込んで)走ってました。他にもO,SYMETRICをしつこく使い続けたりと個性的な選手でしたが。

Julichの場合は空力を良くするために着込んでいた訳ではないようです。

ちなみに「どこに給水タンクを付けるのが一番空力が良いか」をテストした結果がアメリカのサイトで公表されていますが、意外とハイドレーションバッグはボトルに結構劣っていました。

投稿: LIVESTRONG 9//26 | 2008年11月10日 (月) 11:35

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/170044/43018492

この記事へのトラックバック一覧です: CYCLE MODE 4 ヘルメット界のジオング:

« CYCLE MODE 3 Power of design. | トップページ | 乳酸を活かしたスポーツトレーニング »