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2008年12月13日 (土)

Tests

ASTANAに本格参加したArmstrongが様々なテストを行っている。
Armstrongはとにかく徹底的にTTのテストをやっているのが印象的だ。
彼のBlogでも写真入りでエントリーがある。

  • エアロヘルメットはRev VIを被ったりAdvantage2を被ったり、色々試している。ポジションも含めて総合的にどの組み合わせが優れているかを調べているようだ。
  • フォームもかなり色々試しており、2005年の時とは随分違って「腕を畳んでいないLeipheimer」とでも呼びたいポジションでもテストを行っている。
  • そのため複数のTTXを取っ替え引っ替えしながら走っている。いやはや、勝つために出来ることは全部やりつくすこの姿勢、プロなら当然出来そうで実際はなかなか出来ないんだろうな。
  • Bontrager Aeolusに新しいプロトタイプが用意され、こちらはLeipheimerなどの他の選手が試している。もともとはトライアスロン用として作られた新ホイールだったそうなのでArmstrongの為に作ったわけではないが、完成したら「Aeolus 10」だろうか。見た感じ80mmから100mmくらい、ZIPP808〜1080とほぼ同一の壮観なULTRA DEEPだ。前後16Hの特徴的スポーキングは変わらないので、総合的な空力ではZIPP1080を上回るかも知れない。

Armstrongは奇跡のLe Tour de France7連覇当時、毎年トレーニングでも機材でも勝つための準備を怠らず呆れるほど徹底した。個人タイムトライアルが行われるステージのコースなどは入念な試走を繰り返してペース配分を事前に完成させ、全てのコーナーの進入位置と角度まで決めた上で臨んだ。ステージ後の記者会見で

「XX番目のコーナーは内側の勾配がきついから、予定通りあえて遠回りして外を通った。この方が消耗が少ないんだ」

などと喋って記者達を唖然とさせた。ずっとツールを取材してきたベテラン記者でさえ誰も知らないことをArmstrongは知っていた。そのような「ほんの少しの差」を10も20も積み重ねていって最後は大きな差にする、そんなものは誤差だと切り捨てる人間には辿り着くことのない境地。

それだけやれば勝って当然

そんな風に揶揄するのは誰にでも出来る。
だが、それだけの事を、脳内で妄想するだけでなく本当にやりぬく人間がどれだけいるか?

Armstrongを打ち負かせなかったライバル達は、結局あれだこれだとそこまでやらない理由の説明ばかりしていたのではなかったか。それは「同じだけやって勝てなかった時の責任を取れる人間はいなかった」事も意味する。「私たちだって同じくらいやれば勝てます。Armstrongを負かせてみせますから私たちにも同じだけやらせて下さい」とスポンサーに直訴する自信が、誰にもなかったのだ。そこまでやって「やっぱり勝てませんでした。Armstrongの方が上でした」は許されないからだ。勝利以外許されない必勝体制に自分を追い込んだ上でやはり勝つのは、勝ったことがない人間が想像の範疇で思っているほどぬるくない。チャレンジャーの立場ほどラクなものはないのだ。

現在のところ、チーム内の政治的事情も勘案してリップサービス丸出しのお上品な言葉しか述べていないArmstrong。だが「Le Tour de Franceでサイクリングするために帰ってきた」わけではない事は、なりふり構わないこの徹底したテストぶりで説明されなくても分かる。Armstrongと二人三脚だったトレーナーのChris Carmichaelはじめ走行結果を測定する助手だって何人もがテストに付きっきりだ。このテストに掛けている金だけでも信じがたい額になる。

今更他人から偉そうに指摘されなくったって、38歳でグランツールに勝ちに行く事がどんな事か分からないほど間抜けなArmstrongではない。Bjarne Riisが語ったように「抜け目がない」のもArmstrongの強さだった。若い頃はともかく、ツール連勝中の彼は明らかに「バカでも脚が速い方が勝ち」な選手とは違う「最後に表彰台の中央に立つための戦略」から決してブレない“芯”があった。このての精神力は、単にシャカリキで走っては玉砕するだけの「精神力」とは次元が違うものが必要だ。時には勝てる筈の目先の勝利を捨てる事まで必要になる。勝つために走っているのにだ!

私は今でもLe Tour de France 2009の本命はContadorから動かないと思っているが、全盛期でさえ挑まなかったダブルツールに挑戦とか、2009年のArmstrongは「何をするか分からない不気味さ」が満載だと思う。もう一度奇跡を起こすことを期待するファンがいる反面、無様な敗北宣言を聞きたくてワクワクしている「アンチ・ランス」もこれまた世界中にごまんといる事を分かった上で復帰しているのだ。7連覇当時よりも凄いことが起きそうな気がする。

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コメント

空力セッティングは風洞実験で出来ますが、そこで得られた必要出力を得るための人間側の実験は、別途やる必要があるから面倒ですね。上手くマスクやパイプを処理すれば、風洞内でも酸素摂取量の測定ができるかもしれませんが。

私は体が非常に固いので、深いTTポジションとると、上死点あたりのペアリングは非常に困難になります。かなりのエネルギーが筋肉の摩擦熱となっているのは明らかですが、じゃあどこが最適ポジションなのかは分からないんですよね。

投稿: 元 | 2008年12月13日 (土) 05:44

09年は「絶対に何か起きる年」ですね。
いい意味でも悪い意味でも、今はまだわからないことも多いですが。
ランスの「徹底した試走」というのを聞いてイニシャルDを思い出しました。
アニメではありますがレース開始前の短い時間で徹底的にコースを分析し、自分のものにする。
まるで普段走りこんでいるホームコースのようにしてしまう・・・。
本能的に「ガンガン走ってれば勝つんだよ!!」(昔のランス然り)的な運と勘要素の強い人間も実際に多く走ってるでしょうし、そういう「徹底した追求」姿勢というのはブリュニール監督のおかげだったのでしょう。
ほんの一握りのなかのほんの一握りにも満たない選手しか勝ち得ないツール総合優勝で7連覇もできたのも勝利へのこだわりとそれに対する徹底した追求姿勢がなしえたものだと思います。
ツール7連覇で休みすらなかったですからね、ブリュニールのランスなしで果たして私は勝てるのかという意見も一時引退の理由のひとつで「実はつかの間の休息」をとっていただけに過ぎないランスがもう一度「勝つため」だけに「自分を試すために」戻ってきたということでしょうか
彼が戻ってきたのは「必然」のような気がします。
彼と監督の著書を読みましたが、それらを見て彼らの「生態」を考えると
もとから「彼自身の計画のうち」であったかのような印象さえ受けますね。
「さぁ、十二分に体は休めた、もう一度ツールで【勝ち】にいこうか」と・・・。

投稿: 秦璃 | 2008年12月13日 (土) 09:58

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