逆北見サイクル
人の自転車を整備すると、北見の気持ちが何となく分かる。
「俺はもう分かっている奴の車しかやらない」
まったくだ。
「分からない人」とは、ほとんどの場合「分かろうとしない人」なのだ。それはもはや分かる能力の有無以前の問題だ。違いの分からない人に何がどう違うのかを分かって貰おうとする努力は、ほとんどの場合は単なる時間と労力の膨大な無駄にしかならない。
それでも人生は長いので、時には「分からない」のではなく「分かる途上の人」に出会うこともある。が、それは希かつ幸運な出会いでしかない。
だから北見のような態度は十中八九どころか百中九十九くらい商売としては失敗する。
それゆえ北見は「自転車屋」になっているんだろうなあ。彼は自動車を「仕事」に出来ないのだ。自分の仕事に高いレベルを求めすぎて仕事にならない。客はもはや仕事を依頼する客ではなく、北見の芸術製作のパトロンでなければつとまらない。収入を全部車に突っ込んでしまう性格破綻者外科医、島の存在が北見をチューナーでいさせる最後の生命線になっている。北見は「たった一人の客のために車を底なし沼チューニングする自転車屋さん」だ。島なしには北見はただの自転車屋さんに戻るしかない。北見の場合、凄腕のエンジンチューナーなのに自動車に仕事として関わるよりも「街の自転車屋さん」をやっている方が儲かるのだ。仕事として自動車をやってしまうと、完璧にやろうとしすぎてやればやるほど赤字だ。
北見と逆パターンの「仕事へのハードルが高すぎて客が付いていけなくなったことから廃業してしまった自転車屋」は探せば現実にあるんだろうな。
北見(他のキャラも)の濃い名台詞がチョイスされている本
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コメント
どんどん狂気とかしてくブラックバード。
自動車というより、モンスター。
2人の信頼関係と車への愛の結晶であると思う。
私も、そんな自転車を作りたいものだ。
投稿: ちわわ | 2009年2月16日 (月) 03:23
ご無沙汰です。つまらんツッコミしてすみません。
湾岸ミッドナイトで、ロムチューナーの富永氏が「ブラックバードからは金もらってないけど、あいつ医者だから今度もらおうかな、クックッ・・」みたいな発言をされてました。
北見さんにはお金払ってるんでしょうか、どうでもいいですが(笑)
あまりの長編、作者も辛いようで、最近は主人公出てきませんね(笑)
投稿: もーりぃ | 2009年2月16日 (月) 22:19