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2009年2月 2日 (月)

ターニングポイント

今、POLARはけっこう焦ってるんじゃないだろうか。

710/720の頃から625xを出したくらいまでは、スポーツ心拍計と来ればPOLARであり「POLARの他にPOLARなし」くらいの勢いがあった。他にも類似商品はあったが「やっぱりPOLARが一番」の雰囲気があったし、実際その通りに近かった。

今、POLARではきっとこう思っているはずだ。

ANT+Sportがこんなに隆盛するとは、全く想定外だった。

ワイヤレス心拍計の重要な特許はPOLARが握っていたし、そのアドバンテージを今後も活かすべく600/800系で初めてデジタルワイヤレス方式「W.I.N.D」に大胆な切り替えを行った。旧方式とは完全非互換でありユーザーからは少なからぬ反発もあったと思うのだが、W.I.N.D方式への大転換はPOLAR王国が今後も続くための大いなる布石であった筈だ。他社も今後避けて通れないデジタルワイヤレス方式の採用にあたって、かつてアナログワイヤレス心拍計ベルトのライセンスで栄華をほしいままにしたPOLARである。先行技術W.I.N.Dを確立しておけば、いずれ他社は前と同じようにPOLARに頭を下げライセンス料を払ってW.I.N.D互換方式を採用する…とPOLARは思っていた筈だ。

ところが全く予想外の事態が起きた。
みな、後発でありオープン規格のANT+Sportに一斉相乗りしたのだ。

日を追う毎にANT+Sport採用メーカーばかりが増える一方。SRMとPowerTapの二大メジャーパワーメーターメーカーが両方ともANT+Sportを採用したのもかなり大きな決定打となって、ほんの1年強の間にANT+Sportは完全に事実上の業界標準規格と化してしまった。POLARが大きな犠牲を払って導入したW.I.N.Dは、気が付けば「POLAR一社だけの、互換性がない孤立したローカル規格」に過ぎなかったのである。ANT+Sportが始まるほんの2、3年前まで、POLARの心拍ベルトはスポーツ心拍計のほとんど全部で使えるのが暗黙のお約束だった。互換と書いていないメーカーの心拍計でさえ十中八九POLARの信号を拾えた。みなPOLARの特許技術を使っていたからだ。その「とりあえずPOLAR買っとけばつぶしが利く」お約束が、W.I.N.D規格では全く通じない。なんせPOLAR自身でさえ限られた上位機種以外はW.I.N.D非対応だ。W.I.N.D導入は、皮肉にもPOLARの大きなターニングポイントとなってしまった。POLARをずっと使ってきたユーザーに「乗り換えのタイミング」をPOLAR自身が作り出してしまうことになったからだ。

スポーツ用デジタルワイヤレス通信規格を採用する場合、POLARに頭を下げ高い金を払わなくてもANT+Sport互換を採用した方がよほど合理性がある。安くつく上に対応製品も圧倒的に多く、W.I.N.Dの方が特に優れている点もない。物理レイヤー(と呼んでいいのか知らんが)レベルで見れば、どちらもようはBluetoothの転用なのだから、ある意味「差の出ようがない」のだ。ならばいずれ対応製品が多い規格の圧勝結果になるのは時間の問題である。SRM wirelessだって、純正スピードメーターや純正心拍ベルトがSUNTO製だ。ANT+Sport規格を採用したことで、そのような些末な部分まで自社製品を開発しなくても良くなったからだ。実際、SRM wirelessは当初PowerControl VIの開発が遅れてクランク部だけ先行発売したが、これもANT+Sportに対応したGarminのEDGE 705の存在あればこそだった。CPUはとりあえずEDGE 705を用意すればパワー表示も含め使用可能だったからだ。しかもこのEDGE 705がサイクルコンピューター史上最高に多機能ときた。多機能過ぎて「こんな機能までいらんがな」でさえあるくらいだ。QUARQのCinQoがいつまでたってもCPU(QRANIUM)を出せないのにクランク部だけ取りあえず販売を続けられるのも、ANT+Sportを採用しているからに他ならない。

ANT+Sportにも全く問題がないわけではない。単なる通信方式の規格に過ぎず実際にやり取りするデータの詳細まできっちり決めたわけではないため、心拍、スピード、ケイデンス(なおANT+Sport機器ではケイデンスとスピードで同じナカミのセンサーを用い、どちらをスピード、どちらをケイデンスと登録するかだけの違いであるなどいかにもオープン規格らしい。POLARのように別個に買い分けたりする必要はない)くらいまでなら問題も起きようがないが、もっと色々なデータが飛び交った場合、それこそ違うメーカー間でパワーメーターなどを使用した場合は問題も起きる事が報告されており、まだまだ「途上の規格」である事は認めざるを得ず、決して夢の規格とまでは行っていない。それでも「ANT+Sport採用のワイヤレストレーナー」が生まれたり、そのデータをUSB用ANT+Sportアンテナを差したPCに飛ばしてリアルタイムで見たりデータをダイレクトにPCへ蓄積したりと次々面白い製品が生まれている。これらを全部一社でやるのは当然無理。オープン規格ならではの話だ。問題が起きているのも、ある意味賑わっている規格なればこその話であり、ANT+Sport機器同士の非互換が原因でANT+Sportがコケる可能性より、参加企業間で話し合いが行われて「ANT+Sport 2.0」のようなものが制定され、より高度に発展してゆく可能性の方が遙かに高い。

かつて多数派だったPOLAR方式は、今や完全に少数の劣勢派閥に転落してしまったのだ。ずっとPOLARユーザーだった私もPOLARを使わなくなった。ANT+Sportならそれぞれ一つでどのCPUにも対応できる心拍/スピード/ケイデンスセンサーなのに、POLARを使いたければPOLARにしか使えないPOLAR専用品が必要である。これだけで既にうざい。まさにANT+Sportの「共通規格パワー」を見せつけるところだ。それに対するPOLARは自転車用センサーは、CS用以降は電池が切れたら使い捨ての地球もユーザーもバカにした方式になるなど、ユーザーにとってウザさばかり増して行く袋小路へ邁進する始末だ(勝手に無理矢理分解すれば実は交換出来るが、それはPOLARのウザさとは関係がない)

もはやPOLARなど、今や数ある選択肢の一つに過ぎないのにまだ大名商売が通じると勘違いしているオールドタイマーであり「出口はあちらです。お帰り下さい」扱いに過ぎぬ。

まさにあっという間の与野党交代であった。POLARが石頭な大名商売を続ければ、いざオープンな新規格が出来上がれば雪崩を打ったような乗り換えが起きるのは当然の理なのに、POLARにはそれが見えていなかった。他社はみなPOLARを儲けさせるために製品を作っているわけではない当たり前の事が、POLARには分かっていなかったのだ。なんだかんだあっても最後には“優れたPOLAR製品”が選ばれる、と高を括っていたふしがある。結果、W.I.N.D採用はPOLAR製品以外にないのが現状だ。POLAR自身が認めるかどうかは別として、完膚無きまでの惨敗である。ちなみにCATEYEのデジタルワイヤレス方式も中途半端に器用すぎたため独自開発の孤立型で、ANT+SportともW.I.N.Dとも互換性がない。が、まあCATEYEの場合はそのような互換性を期待して買うユーザーの方が少ない気もするのであまり影響なかろう。

POLARには固定的なファンがついておりPOLAR製品自体の改良・向上も続いているので今すぐPOLARがダメになることは考えられないが「次のPOLAR最上位機種がANT+Sportを採用するのかしないのか」は次の、そして決定的ターニングポイントになるような気がする。ここでW.I.N.Dが敗れた事を認め恥を忍んでANT+Sportに参入する大英断をしない限り、POLARは長期的に見て衰退してゆく以外の未来像を描けないだろう。W.I.N.DとANT+Sportは前述の通り使っているもともとの技術が同じBluetoothなので、W.I.N.Dの技術はすぐANT+Sportに転用出来る。必要なのは敗れたことを認める勇気だけだ。それこそ本当は今EDGE 705がいるポジションにPOLARの新機種がいなければいけなかった筈なのだ。705の地位を奪うにはもう遅いが、POLARが本気でANT+Sportに参入すればポスト705の地位を奪うことは可能だろう。その決断が出来なければ、待っているのは衰退だけだな。

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コメント

POLAR、たしかにEDGE705に乗り換えようかなという気にさせてくれる。規格自体はそんなに気にしていないが、センサーの電池交換が自分で出来なく、サービスセンター送りということがとっても鼻につく。電池って買ったら100円、200円くらいのものなのに。
そもそも日本ではWIND対応製品は、マラソン用のしかないし、今ならやろうと思えば方向転換は可能な時期だと思う。

そういえば、シマノで今度出したサイクルコンピューターは、割り切った機能でお求め安く、初心者向けでお勧めです。POLAR CS200なんていらない。

投稿: TTT | 2009年2月 2日 (月) 07:30

高価なイメージしかなかった心拍計(心拍計ならポラール=高価)でしたが、シマノCYCLINKがネットで見る限り最安値\8980が出ましたので導入を検討しております。
初心者用ながらもサイコンの機能、心拍計、PCでデータ視認管理できるソフトもついていてこの価格は破格といえましょう。
シマノが乗り出した今、エンゾ氏が目指す心拍計全国普及も近いといえるかもしれませんね。

投稿: 秦璃 | 2009年2月 2日 (月) 16:09

 POLARが便利なのは たまに行くスポーツジムでもランニングマシンやバイクマシンの
心拍計はPOLAR対応なんで、心拍計ベルトひとつ持ってけばランニングのLSDもできちゃうとこですね。
もうしばらくはPOLARの世話になりそうです。
 ただ、選択肢が増えたことは喜ばしいですね。トライアスロンやるので現状のSUNTOみたく重そうなのはいやだけど、
TIMEXあたりが自転車対応したら買います。ところでGARMINのEDGE705のスピードメータっていうのはGPSで距離をとり、
時間で微分という形式でしたね。なんか原理的には精度とタイムラグに問題がありそうな気がするんですが。
 私はPOLARのタイムラグ嫌いなので有線メータ-との2個使用で POLARはおもに心拍表示と記録のために利用しています。

投稿: sin360 | 2009年2月 3日 (火) 01:18

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