7970の受難
予定通り、シマノのDURA-ACE Di2が発売された。
店頭在庫しているお店も普通にある。
Google(Goggleつまりゴーグルになっていたが、教えて頂いたので訂正。nYoloさんに感謝)を叩いてみても一目瞭然で、既に装着したリポートが次々見つかる。
そこでちょっと気になるコトがある。
何故か知らんが、FC-7900と組み合わせずに「フロントの変速性能が思ったほどじゃない」とか「お客さん、寝言は寝てからにしてくださいよ」と頼みたくなるような寝言をほざいている人がけっこういるコトだ。本気かよオイ!と思うのだが。
開発の人って大変だな。
日頃から常に顎を鍛えていないとヤバいからだ。
作った人達はきっとこんな呆れて開いた口が開きすぎて顎が床に激突するようなハナシにも真面目に対応しなければいけないのだろう。何故ならこの手の寝言人種は、見た目は起きているのに実は寝ていて、スラスラと寝言を言うのが得意だ。ゆえに対応を僅か誤っても筋違いな怒りで憤激して大変なコトになる。なんせ脳はずっと寝ているから自制心がない。かくして連日が顎の危機である。
プライベートでこんな文句付けられたら、どこからどう見ても「単なる因縁付け」以外の何でもない。あくまでお客様だから聞いて貰えるだけで、そうでなければ「やかましいわ!帰ってクソして寝ろ」レベルの話だ。ほざいている人も、寝てるもんだから自分が主張していることが因縁付けレベルの寝言であるコトに気が付いていない。目が醒めているなら、こんな「後で見直したら恥ずかしさの余り自殺しかねないから自殺しないように見張ってなきゃいかん」内容を人目に付くところに書けるワケがない。
他に喩えたら35GTRに軽油入れて「このエンジン全然パワーないよね。ダメじゃん日産」とかほざいてるレベルなわけで、しかも軽油を入れたことまできっちり書いてあったりする几帳面さは何故か兼ね備えていたりする。真面目に喋れば喋るほど底なしに笑える天然芸としては非常に参考になるし、コレかなり美味しい芸だと思う。こんな主張を真面目にやれば人の顎を床に叩き付けられるし呼吸困難になるほど笑わせられる、と。
このBlogでは散々書いてきたが、自転車においてフロントの変速性能はほとんどチェーンリングとチェーンの出来が司っていて、FDはそれらチェーンリングとチェーンに仕事をしてもらう“脇役”に過ぎない。だから変速性能がどうたらこうたらほざく人間は、絶対にデザインとか色でクランクやチェーンリングを選んではいけないのだ。自分でシムとか咬まして調節する実験をしてみたコトがない人間は想像したことすらなかっただろうが、チェーンリングの左右位置って0.2mm変わったら変速性能が随分変わるんだコレ。0.5mmも変わればもうウソのように全く別物になってしまう。注意深く観察しても差が分からない範囲はせいぜい±0.1mmくらい。考えたことがない人は気が付いていないだけで実はそのくらいシビアだ。当然だが、こんなモン、クランクが入力に耐えきれずしなってしまえば一瞬で変わる数字に過ぎない。77>78>79のDURA-ACEでシマノがずっと躍起になってクランクとチェーンリングの剛性を上げ続けて来たのも、チカラが掛かったときにしなって撓むようだとその僅かな撓みでもう設計通りの性能が出ないからだ。その解消を目指して欠点を地道にツブしてきた本物は、バチッと調整してあると感動的なくらいスパスパと変速するのだ。金も時間もかけてそんな風に作ってあるのだ。でも「技も腕もあったもんじゃないポン付け適当組み」と「闇鍋も真っ青のあり得ないパーツ組み合わせ」の最強コンボ技(笑)の前には、部分的に使われたって本来のチカラなんて当然出ない。前にも書いたが、79で何故電動コンポのオプションが可能になったか?そのくらい優れたクランクとチェーンとチェーンリングが作れたからだ。電動に飛びついた人間のかなりの割合がここを履き違えている。 凄いのは電動じゃない。電動を載せられるだけのキャパシティを有した79の基本性能だ。そして機械である以上、勝手な組み合わせや調整不良でまともに実力を発揮することは絶対にない。機械に「だいたい」とか「適当に」とか「そんな感じ」が通じることはないのだ。
例えばFSAのクランクとチェーンリングでDURA-ACEの変速性能になることは逆立ちしてもない。ましてやTAあたりだと想像しただけでも怖い。このクラスの会社では性能の根幹に関わるR&Dに金を掛けていないからだ。わりと有名どころであるSTRONGLIGHTのチェーンリングにしても、変速ポイントの作りをみたら「ああ、これは大した研究をしてないよね」と2秒で分かるような作りでしかない。シマノの中の人はオトナだからそのような言葉を口に出したりしないが、STRONGLIGHTのチェーンリングとか見たらきっと「こんなもんでこんなに金取っていいならラクな商売だよな」と思っているに違いない。そのへんが、業界を背負ってる企業とニッチマーケットに食い込んでモノが売れれば喰っていけるサードパーティとの間の超えられない壁だ。人に求められるのではない、自分たちに自ら要求しているレベルの桁が違う。
ワタシは別にシマノ親派でもなんでもない(明らかに闇鍋、それも劇薬や半分腐ったものでも入れてしまう超弩級闇鍋コンポを作ってしまう人間である)が、シマノが「目立たない基礎研究」にも人も時間も金もきっちりかけて物凄く真面目に研究しているコトは知っている。だから尊敬する。公表されているネタとしては、シマノはRDのシフトレバーを引いたらRDの位置でどのくらいワイヤーの伸びが引き量誤差として出るかを調べ尽くした上でRDを設計していて、その許容誤差が0.XXmmを超えるとちゃんと変速しなくなるから、何回変速したら0.XXmmを超えるかを調べるのに延々変速を繰り返す実験とか、当たり前のようにやっている。このくらいのコトはもうシマノにとっては秘密でも何でもない。雑誌のネタとして提供するレベルの大したことない研究だ。そこまでやって「純正ワイヤー」を作っている。このような話は車の設計では珍しくもないのだろうけど、シマノは自転車の部品でもちゃんとやっている。気分でカラーアウターとか付ける奴はそれだけでもう既に確実に性能を落としているわけだ。自分の自転車なんだから別にカラーアウター付けて性能が少し落ちようとそんなこたーまさに自己責任とも呼べない程度のプチ自己責任であって好きにすればいいことだ。が、それで性能を語るなら寝言だろ。
35GTRに軽油を入れてオシャカにしようとも、それは突き詰めれば個人の自由なワケ。随分勿体ない話だが好きにしろ、と。
だが、その「個人の自由」と「軽油入れておいて35GTRをけなす」のは別問題だわな。
端からダメだと分かっていることをやってダメな結果を導くのは、トライでも何でもない。ただ時間、手間、金の無駄だ。もしヤルんなら、ダメと判っている筈の結果をひっくり返すまでトライ&エラーを続けて初めて意味がある。
シマノは○○を研究するために××が可能な特殊な■■をわざわざ作ってそれで色んなところを△△して、得られたデータを調べて対策を考えて…(ソースの関係で伏せ字になるのをお詫びしておきたい)と、シロート感覚では「たかが自転車の部品にそこまでやる必要あるんか?」と思うであろうことをきっちりやっている。他の会社はただ経験的に何となく作っていたり他社のをカタチだけ真似てパクっているに過ぎない。シマノ以外である程度まともに基礎研究やっているところとなればカンパとSRAMだけだろうし、その2社もシマノほど突き詰めてはやっていないだろう。出来上がった製品を見れば分かる。カンパなんかは逆に「職人の経験とカンから出てきた、ヘンに“研究”したらむしろ生まれないネタ」がある感じだ。
見た目のデザインを弄くり回して本物っぽくすることは難しくないが、基礎研究の質と量がもたらす基本性能は絶対に嘘がつけない。1000kmももたずにハゲるようなコーティングでチェーンリングの性能向上を謳うようなイカサマ商法は簡単だが、本当に性能を向上させるには地道なR&Dの積み重ね以外にない。
話がますます逸れて申し訳ないが、シマノは79でも一切セラミックベアリングを導入しなかった。カンパはSUPERRECORDで大々的に導入したのにだ。ワタシはセラミックベアリングが好きだからこそ、シマノのこの判断に「さすが分かってるよな」と思った。このベアリングをセラミックに換えたらどのくらい機械損失が減るか、ちゃんと調べた上で不要と判断し採用していないのだ。そりゃ、セラミックにした方が派手な売り文句が出来る。手で回した時の感触は変わる。でもそれが実走でどのくらい役に立つのかを、ちゃんと研究して採用するかしないか決める、物事を気分で判断しない強さ。これは凄いなと。
本当の20段変速を実現するよりも、セラミックベアリング入れて「セラミックです!抵抗少ないです!」と吹聴する方が遙かに簡単で派手な売り文句を作れる。
必要な基礎研究の質量共に段違いだ。
そこでセラミックベアリングに走らないのが、シマノが「本物」なところなのだ。その前にやることあるだろ?と。
何年も研究を重ね頑張って作った人、因縁付けレベルの評価を見たらさぞかし落胆するだろうなあ…。
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コメント
シマノもセラミックベアリングはテストをしているらしいですが社内基準で実験すると割れてしまうそうです。
投稿: | 2009年4月21日 (火) 00:19
DURA-ACE Di2ですが某所で試乗しましたがびっくりな変速性能でしたよ。スムーズで安心感が凄かったです。
しかも試乗車につけられていたクランクはFSAの比較的安いクランク・・・これで7900のクランクだとトンデモ性能なんでしょうね。
投稿: hirari | 2009年4月21日 (火) 01:31
ご無沙汰しております。
一般大衆のレベルなど往々にしてそんなもんですよ。
説明書読まない、情報収集しない、自分の頭で考えない、と。
だからガセネタが報道されたら、かんたんに引っ掛かってしまうわけで・・・
むしろ得られた情報から論理的によく考える人間の方が少数なのでしょうね。
だからFC-7800のアスクル材料(クロモリ)にしても、FC-6600と同じようにアルミ合金製にして、もっと軽くして欲しかったなんていう寝言も出てくるわけです。
これに関しては、FC-6601Gでクロモリアスクルになって、軽くなったことで目が覚めたでしょうけど。
投稿: Carbon_Cloth | 2009年4月21日 (火) 12:02
>35GT-Rに軽油
すさまじくわかりやすい例えですねw
DURAなら寝言を無視してトッププロの意見に集中するのでしょうが、
ULTEGRAクラスはそういうわけにもいかないでしょうね。
※ここからは公開しなくてよろしいですが、冒頭のGoogleのスペルがGoggleになっています。
投稿: nYolo | 2009年4月21日 (火) 16:16
はじめまして
「例えば」にいたるまでに積み上げるべき理屈を比較的ちゃんと積み上げようと努力していること、そのことがあなたの物事にたいする姿勢が非常に真摯であることを証明しているように思います。
あなたの話は非常に面白い。
こういった話は読み手によっては絡みやすいので、恐らく表面に出していないだけでこのHPを運営しつづけるだけでもバックでご苦労されていらっしゃるのではないでしょうか。
楽しみにしておりますので是非楽しんでがんばってくださいね。楽しみつづけていけるよう応援いたします
投稿: | 2009年4月22日 (水) 22:22