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2009年4月28日 (火)

Silence Lottoにたりないもの

Silence Lottoのチーム内から不協和音が聞こえてきたようだ。
McEwenをエースに据えていたスプリンターチームでなくなってから、どうもうまく行かない。

2007年にCadel Evansが「ツールを狙える男」であることを自ら証明してから、Silence Lottoはこの世界で最もコマーシャルバリューに富む栄冠を得るため注力するチームに変わってきた。

それまでの数年間、このチームの“顔”は天才スプリンターRobbie McEwenだった。

教えられてやれる走り方とは違う天才型の走りで「さすが」と思わせる勝利を幾度ももぎ取ってきたし、Maillot Vertを獲得する形で最後のポディウムにも登ってきた。有名な頭突き・肘打ち事件など性格的にはいろいろアレなところもあったりしたが、何をやっても目立ち話題になる、とにかく典型的ボス猿タイプの「華がある選手」であったのは間違いない。

2008年、チームはLe Tour de FranceでEvansの総合狙いに一本化し、McEwenのスプリントをアシストしていた選手をツールの出走ラインナップから外す。McEwenは、ちょうど年齢的に峠を過ぎた事も重なって痛ましいほどに生彩を欠き、未勝利に終わった。しかし、そこまでやったわりにEvansは「孤軍奮闘」する姿が目に付き、チーム完全一丸となって総合優勝に向け驀進するCSC Saxobankと見事な好対照を形成してしまった。
個人成績を完全無視して平地部分で集団を引いて引いて引きちぎるCancellaraの突進ぶりに、ロードレースがチーム戦であることを見せつけられた人も多かったと思う。当時世界選手権個人TTを連勝中のオリンピックチャンピオンまでもが捨て駒として働くのだ。山岳ステージでも、ほんの数日前まで総合優勝争いしていたSchleckがアシストとして動く。そりゃもう抜群に分厚い攻撃力だ。そのアシストを得て総合優勝したSastreが実は監督Riisとうまく行っていなかったのは皮肉だが、半ば「Evans一人対チームSaxobank」になってしまったのが2008年のLe Tour de Franceだった。

07、08と2年連続で僅差2位に終わり「Ulrichの後を継ぐエターナルセカンド誕生か」と揶揄されたりもしたEvans。2009年こそ勝たせたいSilence Lottoとしては、焦点を当然「そこ」に絞っている筈だ。

ところがチームワーク的にうまくいっていない。

EvansはLa Fleche Wallonne 2009で5位に終わったのだが、そこでアシスト達が“無駄働き”させられたと不平を漏らしている。ようは、Evansは今日の勝利を狙うには完調でなかったにもかかわらずアシスト陣は最後までそれを知らずにEvansをアシストし、結果やっぱりダメだった。Evansの調子がイマイチだったと分かったのはレースが終わってからだった、と。そこで

「これじゃあオレ達は無駄死にじゃねえか」

と怒っているわけだ。

「調子悪くって今日は厳しそうならそーゆーとけや!ワシら、お前が勝つ気で必死にアシストしたのにアホみたいやないけ!」

と。これは勝利を目指す集団としておよそ「いい状態」ではない。
08のチームワークを見ても、どうもCadel Evansはチームメイトとしっくり行っていない。それが何故かまでは分からないが、傍目にはEvansはチームからやや浮いて見える。McEwenのように明らかに「ボスザル」キャラで、チーム内に止まらず他のチームの選手にまで影響力を持っていたような人物とはまるで違う。McEwen全盛期、グルペットは「McEwen番長と、チームの垣根を超えたゆかいな仲間たち」状態だった。McEwenには「仕切っている」オーラが溢れていた。Evansにはない。それどころかチーム内を仕切っている雰囲気すらない。

能力は紛れもなくあるEvans

だが、こんな状態で2009年勝てるだろうか?

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