でんでんでんち廃業とSRM
SRMのバッテリーが死んでしまったので、日本橋まで買いに行った話。
SRMを開けたことがある人は非常に少ない筈(SRM側も末端のユーザーで電池を交換することを想定していない)なので、どんな電池を使っているか知らない人も多いだろう。
実は一種類ではなくてモデルによって違う複数種類の電池を使っている(苦笑)
このあたりは、SRMがプレスでガチャポン式に作られる量産品ではなくて一個一個削り出しで作っているからだと思う。出来上がったモデル毎に基板の配置や電池に使えるスペースが違うので、それに応じた電池を使っているワケだ。物凄く非効率で、このあたりもSRMが高くなってしまっている原因だと思われるが、大してデカい企業でもないのに商品バリエーションが多い原因でもあるだろう。何でも削り出しで作ってしまうから小回りが抜群に利くわけだ。
具体的には「塩化チオニルリチウム電池」なる、実に覚え間違いそうな名前の珍しい電池を使用している。これはペースメーカーの電池に使われたりもする、極めて自己放電が少なく容量も比較的大きな一次電池だ。買ってから10年放っておいて使い始めても普通に使えるくらい自己放電が少ない。
コレがFSAベースのSRMに使われている電池で、2個使われている。FSAベースのSRMだけ使用時間が妙に長いのは、このモデルだけ750mAhの電池×2個だからだ。これがDURA-ACEベースのモデルだと円形の1000mAhを1個使用している。
当然だが、こんな電池はそこらへんじゃまず売っていない。
家電量販店で「エンカチオニルリチウムデンチ下さい」と喋ったら、店員さんは一旦固まったあとで「もう一度、ゆっくり仰っていただけますか?」と返答するだろうし、ゆっくり喋ったところで結局塩化チオニルリチウム電池が何なのかを説明しなければならないだろうし、そして説明した時間は全くの徒労に終わるだろう。
かなり専門的なお店では時々この塩化チオニルリチウム電池を店頭在庫し売っていることもある。が、それにしてもありがちな円筒型が2、3置いてあれば上等で、SRMに使われている四方型や円形が置いてあればほとんど奇蹟だ。
色々と探せば在庫しているお店もあるのだろうけど、少なくともワタシが知っていた「ここなら売っているだろう」なお店が、大阪日本橋でんでんタウンにある「でんでんでんち」だった。インパクトのある店名だが、珍しい「電池専門店」で、名前に恥じない非常にレアな電池まで置いてあった。
そこで「SRMに使われているコイツを店頭在庫している店となるとあそこくらいしかないだろ」と思い行ってみたところ、見事に廃業していた。諸行無常の響きあり。でんでんでんちが入っていたビルに今入っている家電通販店?の人に聞いたところ「角にあった電池のお店ね。もうやめられましたよ」とのこと。あちゃ〜。
行き帰りの道すがら「日本橋の電気店街ってホント様変わりしたんだなあ」と思った。
いわゆる「なんとか電機」「なんとか無線」がかなり減って業態がすっかり変わっちゃったし、メイド喫茶とかゴロゴロある。ここはどこだ(苦笑)
もちろん、そんなトコまでいちいち行かずに通販で買った送料の方が 交通費よりも安い。それは分かっていたのだけど「即、手に入る」事を優先したらコレだ。やれやれ。現実こんなもんだろうな。
なおSRMは開けるのも謎だが開けたら開けたで開けてビックリのサプライズがあって、とんでもないことにSRMの電池はSRM内部に「装填」されているのではなく、基板から伸びたリード線に「半田付け」されている。これは半田付けすれば外れたりしないので信頼性を重視した結果だと思うが、交換の手間がどうとかこうとかはもう全く綺麗サッパリ考えていない。半田付けされている事を知らない人はまさに開けてビックリだと思う。たしか電池交換&作動チェックでSRMに送ったらけっこうな値段(2万円以上取られるような…)した覚えがあるのだが、たしかに開けたり閉めたりも面倒臭けりゃ電池交換は半田ごて作業だし「こら交換はごっつー手間やし金も取るやろね」な作りだ。じゃあなんでこんなところに無意味に手が掛かる仕組みにしたのか、およそ常人の理解を超えている部分でもある。作業をやりやすいように作っていないため、電工に経験と自信がありちゃんと道具も持っている人ならばどうってことない作業の部類だが、開けてから半田ごてを買いに行くような人が自力交換しようと考えるのはやめといた方がいいと思う。コワしたら値段が値段だし。個人的には大して難しい作業じゃないと思うが、慣れていない人がこのような作業を急にやると、慣れた人間からしたら信じられないようなスカタンをやらかすのだ。「あーあやっちゃった」となった時に苦笑いですむ程度の値段のモノ相手に経験を積んでからにしないと、実勢販売価格ベースでさえ40万からするモノをやっちゃった日には書き置きを残して旅に出たくなるだろう。それがやっちゃったもんはもうしゃーないねで済む経済感覚の人なら初めから自分でやろうとせず代理店に交換依頼するだろうし。
SRMはこの電池交換問題さえ無ければけっこう優れたシステムだと思うのだが、ここを根本的に直してくれないと誰にでもお勧めできるモノではないなと思う。だいたい開け方からして普通に考えればいきなり謎だし、開けてもこんな珍電池を探してきて半田付けしてあるのを外してまた半田付けして…。これは「そのような行為が好きな人」以外の普通の人には過重労働だろう。そして正規の手法による電池交換はやけに高い。eBayで中古のSRMが、およそユーザー数が多いモノではないにもかかわらず意外と頻繁に売りに出されるのは偶然じゃないと思う。交換料は高い上に期間も要するとなると「そろそろ電池寿命か?」となったとき手放してしまう選択肢が浮かび上がっても全然不思議じゃない。誰が使ってもそれなりに仕事をして末端ユーザーでも特に技術を要せず維持可能となれば今のところはPowerTapしかないのかも知れない。ゼロからスタートし改良型を出したばかりのCinQo Saturnはまだまだ「ヤバそうな商品に手を出すのも楽しみの一つ」な人向けだが、CR-2450を使用しユーザーサイドで簡単に交換できるなど、当たり前のことが当たり前にできるような考えで作ってある。これも熟成が進めばSRMの地位を奪うことは案外可能かも知れない。
「いっそのこと小型のリチウムポリマー電池に付け替えて充電可能にしてやろうか?」とも思ったのだが、充電用の端子をどこから出すかの問題や油・水(自転車用の部品である以上、雨の中を何時間も走って大丈夫でなければならず、これはそれなりに厳しい環境である)をどう厳重にシールするか等クリアしなければならない問題が幾つもあり、そのような事の検討に要する時間と実施するリスクを天秤にかけ「オレはSRMを改良したいんじゃなくてSRMを使いたいんだろ?」と思い直し、今回はとりあえずヤメにした。
だが、なんせ無類の工作好きの事なので今シーズンのOFFあたりにSRMの二次電池化に手を出すかも知れない(笑)
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コメント
むちゃむちゃおもしろい。
SRMも。
ばらしてる人も。
投稿: う。 | 2009年5月19日 (火) 00:17
SRMは使った事がありませんが(そもそも手が出ない)、考えている事は非常に良く分かります。
ソンナノイツモノコトデスヨ。
開けてみる(何を開けるかはその時によって違いますが)→普段あまり目にしない電池が出てくる。しかも半田付けされてる→外して秋葉に買いに行く→半田付け直す→いっそのこと二次電池化しようかと考えてから却下(理由は同じです。「改造したい」のではなく「使いたい」から)。
ミンナオナジ(笑)。
投稿: 九太郎 | 2009年5月19日 (火) 07:52
誘導電流を利用する。
クランク内部にコイルを巻き、クランクの横に交流を流したコイルを近づけると内部のコイルに誘導電流(交流)が流れるのでは。
あとはトランス噛ませれば2次電池へGO!!
エネルギーロスは大きいでしょうが、どうでしょうか。
投稿: なむ | 2009年7月14日 (火) 23:21
なむさん、面白いアイデアだと思います。
が、ロスっちゅーか重くなりそうですね。
SRMは太陽電池付きを発表だけしてましたが、いつ売り出すんでしょうか(苦笑)
投稿: LIVESTRONG 9//26 | 2009年7月17日 (金) 19:38
古いエントリーにコメントしてしまって申し訳ありませんが、本日所用にて秋葉原に行った所、とある電池屋で件の「塩化ホニャララ電池」が山盛りで(それも何種類も)売っておりまして、このネタを思い出して店先で笑ってしまいました。
投稿: 九太郎 | 2009年7月29日 (水) 18:35