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2009年5月29日 (金)

ところで何故「ドロンジョーヌ」なんだろう…?

疋田 智氏は自転車関係では知られた論客である。

提言をどんどん行い、演壇上でパネラーを積極的にやり、道路交通法改正にまで踏み込んだロビー活動もどしどし行っている。

その疋田氏が、ゆるキャラ奥様ライター、ドロンジョーヌ恩田女史と組んだ本だ。

ユーザーのためのインプレであるかのように見せかけているが100%近くメーカーのためのインプレでなければ米びつが維持できない宿命の下に作られ る、見た目はともかく内実としては進退窮まった台所事情の中で生まれ続けているインプレ記事を読むのに時間を使うくらいなら、ヒキタ氏の本の方がずっと読むに値すると私は思う。インプレなど所詮「欠点に気付かなかったふりをするか、誉めるか、もっと誉めるか」の自由しか 許されない、朝鮮民主主義人民共和国におけるマスコミ事情とサシで勝負できそうなくらいシビアに政治的な文章だからだ。ユーザーの側に立ったインプレ記事など山ほど書いても1円にもならないが、贔屓の引き倒しをしまくってメーカーに気に入られれば広告出稿のご褒美にも繋がる。カラー広告をバンバン打ってくれるメーカーの製品をボロクソに書くライターなど、北朝鮮で将軍様の事をボロクソに書くライターと同じくらい生きていけない。本当に思い通り書くためには、広告料収入ゼロで喰っていけるビジネスモデルのメディアでないと成り立たない。ワタシが好き勝手な内容を垂れ流せるのも、このBlogでメシ喰おうなどと夢にも思っていないからだ。もしそう思っていたなら、いくらなんでももうちょっとジョーシキ(笑)のある内容じゃないとマズい。VISTAペダルとかO,SYMETRICとか、普通の人は5秒も見たら生理的に拒絶反応を起こし値段を聞いたらいよいよ頭オカシイんじゃないかと呆れて溜息つくようなモノを持ち上げ続けるなど全くあり得ない自滅行為・暴挙だ。

MAVICのニューモデルをほめちぎりシマノの完成度に痺れ、Campagnoloの人とシンクロする数字にできない良さに心酔し、SRAM Redの呆れるほどの軽さに驚嘆してLightweightには「こーゆー世界もアリだとは思いますし個人的には好きですけど、人にはすすめませんね」と煙に巻いたようなコトを書かなければ金取れるライターではない(笑)

10万でロード?サドルとシートピラーだけでお金尽きちゃいますからソレ(笑)

そんなコトをほざくたわけ者は生きていけないのである。

業界ネタはともかく、開き直った清々しささえ感じさせるスキンヘッドの通り、ヒキタ氏の書く文章はほとんどの場合「己の意見」がはっきりしている。読んでいて「…で、お 前はどう思うんだ」と聞き返したくなるようなネムい文章はまず書かない。ヒキタ氏の“オレ”がはっきり出ている。そのように主張はっきりしているので読む側の好き嫌 いもはっきり出るのは間違いない。

世の中にゴマンといる「自分の考えを主張してうまく行かないと凹むから傷つくのが怖くて自分の意見を述べることはないが、実は喉から手が出るほど自分を肯 定して欲しくて、肯定してくれそうな人の話だけを聞き、そうでない話は全部バカ扱いする、他人の意見などまるで聞けない思考停止な人」の場合、ヒキタ氏とほとん どシンクロする意見の持ち主でない限りまず受け付けない。このためヒキタ節を受け付けない人も多かろう。が、 ヒキタ氏は前述のような提灯性がほとんどない内容を書くのでハマれば面白いし、他人の意見を聞ける人間にとっては、たとえ主張が違っても本人(疋田氏本人)の軸がしっかりしているから“会話”が成立する。自転車ギョーカイのライター諸氏とヒキタ氏で決定的に違うのは、知識の量とか性格の曲がり具合(笑)とか体力とかじゃあナイ。自分の意思を曲げるくらいなら書くのをやめてしまえる立場か、そんなナメた口きいたら3ヶ月後にはホームレスもあり得る立場かの違いだ。ギョーカイのライター諸氏にとってギリギリの線、これだけは譲れない最後の主張を通す場が唯一あるとすれば、自分の意思に反した内容に関しては黙っているコトだけだろう。具体例に例えれば「ハナクソ丸めたようなベアリング」と“書いて”しまうのではなく、ハナクソである事は黙っている代わりにハナクソベアリングを誉めることはしない。それ以上やれば即座におまんまの食い上げに繋がる。疋田氏が、自転車界で有名になった人だけど本業は別にちゃんとあって、仮に自転車業界から干されても普通にメシを喰っていける立場である事は大きい。自転車業界に養ってもらう必要がないから業界へのヤラしい媚びがないのだ。これが彼の立ち位置をはっきりさせ、発言が揺れない土台となっている。

組んでいるドロンジョーヌ恩田女史も、そのゆるキャラがいい感じで私も一応ファンだ。「一応」なのは、雑誌のコラムを毎号読むほどのファンでもないからだ(そもそも自転車雑誌は1年に3回買えば多いほうだ)。それでも買ったときは最後まで読んでいるし、読ませる内容だと思う。ヘタウマなイラストの崩し方もいい。彼女は「自転車に対して詳しくない人から見た自転車好き」像のとらえ方が絶妙にウマいと思う。ここで彼女は、そのような奇異で理解を超えた行動を取る自転車乗り(夫)を、バカ扱いするのでも無理に意見を一にしようとするのでもなく「そのような世界があるんだ」と別の視点からの理解を試みる。つまり、自転車の車輪ごときものに10万以上も出すか出さないかで悩んだり、冷静に見たらそれ下着じゃないの!?な格好で大通りを走り平然とコンビニにも入るしと、奇異だったり理解を超えた経済行動をとったりする(日本の一般大衆から見ればそうなる)自転車乗りたちの行動そのものを、アホウな連中だと呆れるでもなく無理に具体理解し肯定できる理由をつけようとするのでもなく「そのような世界はあり、それは前の私が知らなかった新しい世界」とメタ理解するようなやり方で認める。経歴とか全然知らんし具体的パーソナリティへの興味などまるでないのだけど、頭が悪い人でないことは間違いない。人は自分の理解を超えたものごとをバカ扱いする事で自分の器の狭さを自分に対して誤魔化すのだが、この誤魔化しがないからだ。自分と違うことを認めるには度量がいるが、バカ扱いするには何もいらない。何であろうと「自分に理解できない何か」が現れた場合、実はそれは向こうがバカかどうか以前に自分の理解能力の限界が露呈しているのだ。そっちの方が相手がどうかよりよほど重大な問題だし、その露呈した自分の限界をどうするか、の判断は難しい。このような判断には己と向き合わねばならず、相当なエネルギーが要る。そこで皆「相手はバカであり理解できなくても当然なのだ」と自己弁護することで誤魔化す方便を多用するわけだ。その方が遙かにラクだから。彼女はゆるくて大した主張もないが、この紋きりの方便で逃げない。ヒキタ氏とは真逆のタイプで、オレを保とうなどとしていない絶妙な力の抜けがあり、力が入ってカタくなっていないからこそ逆にオレがやんわりと、しかしむしろしっかり保てるような「柔よく剛を制す」系の強さがある。ヘンに気張らず違うことを認めることができるから、違うこととぶつかってしまわない。ただ教養さえあればできることではない。山ほど教養のある狭量なバカ者など、この目でも呆れるほど見てきた。むしろ、違うことでも認める度量は教養の有無とまるで比例しない事を多くの人が経験的にも知っているハズだ。言葉としての「頭がいい」は伝わりにくいので使い方が難しい言葉だが、頭がいい人だと思う。もっとも、そうこうしているうちにドロンジョーヌ恩田女史自身もけっこう自転車の人になってしまったようだが(笑)。

単純な面白さ勝負で行くと、コラボ一冊目の「自転車をめぐる冒険」の方が面白いような気もしなくはない。そのへんは二匹目のドジョウの難しさでもある。この手の書き物は「面白いネタ」からやってくので、連載ギャグ漫画にも似て段々煮詰まって行く。最初は何かも面白いようなものが書けても、続けてゆくと「突飛なネタが出てくる」か「重箱の隅を突くような話に突入していく」のを避けるのは非常に難しい。それでも“ヒキタ節”が好きな人はほぼ文句なしだと思う。

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コメント

すばらしい内容の書評に感激しました。
ヒキタさんの本の主張がピシっとしている理由も
言われて見ると確かにコビがないからなんですね。
ドロンの柔よく~の解説にも、溜飲が下がる想いがいたしました。
今後もブログを拝見したいと思います。

投稿: 自転車好者 | 2009年5月29日 (金) 00:37

Amazonでエンゾ早川氏の"まちがいだらけの自転車えらび"という本のカスタマレビューを見るとかなり笑えます。

投稿: foo | 2009年5月31日 (日) 00:33

こんにちは。
嫌がらせと勘違いされたら、と思うと心苦しいのですが、
またもや前回同様の投稿をさせていただきます。

>力が入ってカタくなっていからこそ

まさに「重箱の隅を突くような話」ばかりで
申し訳ありません。

投稿: ridley乗り | 2009年5月31日 (日) 09:29

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