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2009年5月14日 (木)

幕下と小結は、実際にやればどっちが強いか以前に対戦しません

「09キシリウムエリートとフルクラムレーシング3だったら、平地の巡航と長い登りの面で、どっちをオススメしますか?」

と質問を頂いた。

結論からサックリ書くと

どちらも薦めません。が、もし自分で買うならracing3です。KSYRIUM ELITEでは比較検討の土俵にすら上がりません」

値段がほとんど変わらないんだから、比較対象になるのでは?

そう思いたい人は、比較すればいい。

それだけのこと。

気分で買って気分で手放すチョロっとしか走らない使い捨てホイールなら、何買っても「問題が起きたり欠点に気付いたりする前に手放す」わけだから、見た目とか名前で好きなの買ってO.K.

これは間違いない(笑)

「大事な部分にコストを掛けているかどうか」で見た時、両者は幕下と小結くらい違う。幕下と小結が本場所で対戦することはあり得ない。それが仮に「最強の幕下」であろうともだ。

ワタシは実際にracing3のオーナーだった。専らトレーニング専用ホイールとして使っていた。
そのホイール、今は友人の元で毎日元気に走っているが、これは友達だから譲ったようなモンで、そうでなければ譲るなどとんでもない。まだまだトレーニング用ホイールとしてバリバリ現役だったハズのものだ。

じゃあracing3が「お薦め」か?NOだ。いわゆる「お薦め」の安いホイールなどナイ

特殊なモノに手を出さない限り、金は出せば出すほどいい物が買える。出せる限りありったけの金を出すのがベストバイで、段階的にいい物に買い換えていくのが一番損をする。安物の微妙な良し悪し比較、つまるところ「どちらがより悪いか」の比較などに脳細胞を無駄遣いし口角泡を飛ばすヒマがあったら貯金して高いのを買った方が絶対イイ。

この論法こそ最もウソ偽りがない。

これは誰某が吹いてた文句だとか雑誌だとかの受け売りなんぞじゃなくて、ワタシがアホほど自腹切ってバカとしか評価しようがないほど色々使ってみた結果として実感したコトだ。伊達にファクトリーコンプリートだけで29も所持経験があるわけではない。これは自分でリストアップして数えて自分で目が点になった。まさにアホ丸出しだが、それほど底抜けのアホでもこれだけ使ってみたらさすがに分かることがあるわけだ。

よほど鈍感でない限り、racing1とracing3は使い較べれば分かる。racing1の方が踏んだ時の反応が軽い。色んな人に貸してテストしたわけではないので単なる推定だが、racing1を買った人は、走る人であるならその良さに感激すると思う。そのくらい、ちょっと走ってみただけでも「なんか違うよコレ!」と思わせる違いがある。踏み込んだときの反応が違うし、何かにつけて随分シャキッとしているからだ。たぶん、このくらいの重さと剛性のホイールくらいから人間の体感としても違うんだろうなと。ところがリムが重いracing3では残念ながらどうしてもそこまで物凄く劇的ではナイ。剛性は悪くないが重さが足を引っ張って違いの実感を邪魔する。このためじわぁ〜っとくるような良さだ。値段なりにちゃんと違うわけだ。ちなみにracingSpeedとかはもっと「こりゃスンゲエわ」な違いを感じる。それが割に合う値段かどうかなんて知ったこっちゃない(オーディオの僅かな音の違いに何百万円も使ってそれが割に合うと思っている人だっているのだから)が、ちゃーんと値段分違う。

極端な性能を狙った特殊なブツを買わない限り、金は出せる限り出した方がアタリを掴める。ある程度までは「安くてもいいもの」も不可能なわけではないが、ドッサリ諭吉を出せばそんなチマチマした工夫など綺麗サッパリ消し飛ぶほどいい物が手に入るのが現実だ。金を出し渋るための工夫を考えて眉間のしわを増やす時間があればお金を稼いだ方がいい。

半端なお薦め品には必ず「隠された何か」がある。理想を追求した高価格製品と同じには絶対なるはずがないのだから、不思議でも異常でもないあたり前のコトだ。その置き去りにされた何かに目を瞑ることで初めて中途半端な製品をホメることが可能になる。ストレートに書けば、半端なお薦め品には必ずウソがある。何ら不思議なことでも不当なことでもない。買い手側に金を出し渋る妥協がある以上、妥協して作られた製品しか買えないのはあたり前のことだ。それは良し悪しとは別のことだ。

racing3は、価格の割に心臓部にやたらコストをかけたホイールである。つまり「幹」がぶっとい設計思想だ。あの値段であれだけ心臓部に偏ってコストを掛けてあるホイールはなかなかない。当然ながら、限られたコストの中で心臓部に手抜きをしなかった以上「枝葉」のクオリティは同価格帯の製品よりむしろ落ちる。シマノの7850SLと比較するなら簡単に答えが出せない「いい比較」だと思うが、ほとんど真逆となるMAVIC流の合理主義 「目立つところに金を掛け目立たないところは抜く」を徹底しているKSYRIUM ELITEとでは、設計思想が違いすぎて鳥と魚を比較しているような比較だ。

racing3で“抜いて”ある部分は、リムとスポーク。

racing3のスポークは扁平のステンレスで、これだけならカンパのNEUTRONや旧型のEURUS G3と変わらないようにも思える。が、NEUTRONなどに使われているスポークが空力特性に優れた細身のレンズ形状でかつ高い靱性を持つ高級品を特注して使っているのに対し、racing3のスポークもエアロのストレートプルだが楕円ではなく長円形状なうえに太い。断面形状から見て前者はたぶんSAPIM CX-RAYベースの特注品、racing3用は同社CXベースの特注品だろうと思うが、調べたわけではない。両スポークは値段が随分と違う。なんせ、より細くて軽いCX-RAYの方が破断強度は上(「強い」のではなく「しなやか」な素材で作られているのがCX-RAYの一大特徴。カタいわけではない)なのだから値段が違ってあたり前である。CX-RAYはCXをより細くしたスポークではなくて別のスポークなのだ。racing3で1ペア37本のスポークを使うから、1本あたりで随分値段が違うスポークを使うと製造原価が安く上がらない。ここで妥協してコストカットしてある。

そしてリムの軽量化加工が1工程だけと簡略なので、なまじっかリムテープ不要構造(チューブレス専用バルブを付けてやればチューブレスも実は使えたりする)なだけに重い。racing3は全バラししなかったのでリム重量は分からないが、500gくらいか、もっとある可能性も高い。500gとしてリムテープが必要なリムの450g相当くらいだが、贔屓目に見ても「軽量」ではない。が、ここもバッサリ妥協してコストカット。

racing3以上のリムは上位モデルになるほど切削工程が増えて手間が掛かっているが、違いは製造工程における軽量化切削加工の手間の違いであって素材が違うから軽いわけではない。逆に書けば、もはやアルミ合金リムは使われたことのない画期的新合金があっさり登場する余地があるほど未成熟な製品ではない。アルミ合金リムで本当の意味での最先端技術的試行錯誤が行われていたのは10年以上前の話だ。いろいろ作ってみて、使ってみて、素材ごとの良いところも悪いところも出尽くした上でチョイスされる段階に入って久しい。racing1とracingZeroの違いに至っては、Zeroで更に多角形に削っているのとZeroだけアルミニップルを使っている2点の違いだ。それが重さの微妙な違いを産み出している。まあ、アルミニップル使って外周を軽くするのは意味のあることだけど。

ハブはracing3からZeroに至るまで、ハブシェルが微妙に違うだけで心臓部はカンパHPWハブで変わらない。良く回り、整備性に優れ、抜群の耐久性と高いよじれ剛性を持つハブだ。この前後ハブだけで、同レベルのものを購入したら3〜4万円くらいの値打ちがあるものが奢られている。カンパHPWハブはメンテナンスしてやれば10年10万kmにすら耐える。そして後輪ハブはFulcrum最大の売りと評してもよいTwo to Oneアレンジ。このスポークアレンジに物凄く値打ちがあるからFulcrumのホイールは他と単純比較できない。スポーク破断は95%くらい後輪のドライブサイドで発生するが、このスポークホイール最大のアキレス腱にスポークを集中配置しテンションをほぼ均一化する手法はまさに見事な合理性と絶賛するほかない。同じテンションなら明らかに駆動剛性が高く、他のアレンジで同じ駆動剛性を得るためにはもっとテンションを高める必要がある(=スポークが破断する可能性が増大する)からだ。しかも根本的に破断しにくいストレートプルスポークなのでますます破断しにくい。

racing3と較べられるホイールは同価格帯にはあんがい無い。それはracing3のコストのかけ方が「偏って」いて、枝葉軽視気味なくらい幹をシャンとさせることに傾注しているからだ。だから派手なウリ文句が欲しい人には地味で割高なホイールに見えるはずだ。たとえばTwo to Oneの意義が分かる人はそれなりに自転車に詳しい人であることとイコールだ。初級者の人にはこれがどう良いのかサッパリ分からないだろうし、具体的に何が違うのかすら理解できない人はかなり沢山いることだろう。ホイールには「走り込むにつれ良さを実感するタイプ」と「走り込むにつれ欠点が分かってくるタイプ」があると思う。racing3は前者。racing3の欠点は初めからはっきりしていて、racing3の良さは走り込まないと分からない。だから、走らない人はやめといた方がいいホイールなのは間違いない。

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コメント

はじめして。
いつも見てます。

近いスポークパターンで同様のハブをつかってるであろう
R3とZONDAとの比較で言えばどうなんでしょうか?

投稿: k2k2 | 2009年5月14日 (木) 01:17

こんにちは。

自分も
『出せる限りありったけの金を出す。』
に賛成です。
完成車を購入したため、
自分の所有しているLightweightは初めて買うホイールでした。
『いきなりこれに手を出すのか』と周りから指摘されましたが、チマチマグレードアップして金の無駄遣いをするくらいなら、自分が手の届く最高の物を買った方がベストバイだと思ったからです。
スポークホイールはLightweightと完成車に付いていた物しか持ってまいせんが、十分満足です。
外に欲しいホイールはディスクorバトンホイールくらいで、スポークホイールは今の所これ以上要らないです。

投稿: Lightweighter | 2009年5月14日 (木) 02:17

豊富な知識でとことん納得させる文章が素敵です。

Racing3は私も所有していますが、
RacingSPEEDも所有し、存分に体感してしまって以降、
もう本当にトレーニング用、それもほぼローラー専用になりました。

それでも手放そうとは思わせないところが中々やりよるところでしょうか。

投稿: POLA-MIN | 2009年5月14日 (木) 09:54

まいどです。

MAVICは確かに基本理念が?ですよね。CCUのR反ドライブサイドだけ調整可能だったり、キシリウムSLでは反ドライブサイドがクロス組でドライブサイドがストレート組だったり、思いつきで作っているんじゃないかって気がしますね。

だがしかし、2002年くらいに買ったキシリウムSLがいいんですよ。
-まず剛性感が非常に高い
-そして耐久性も◎
コーナーでもダッシュでもシャキシャキして気持ちがいいです。
そしてフレが出ない。1万km走ってもフレ取りの必要がないです。
私はものぐさなので回転部は消耗品と考えているので、メンテ性とかの玄人好みの部分はあまり気にしないですね。

クギがリムを貫通したり、車の下敷きになったりして二度ほど組み換えをしてベアリングを替えていると、完組ホイールと言っても残っているのはハブだけなので、結局は基本設計が全てなんですよね。
それが理論的にどうかは別として、実際に使用して気に入っているのでヨシとしています。

ちなみに練習用で使っているR-SYSも驚くほどフレが出ません。某N谷店長と違い練習ががユルイからかもしれませんが。。


余談ですが、
今季はRacing Speedをロードレース用として使うので、楽しみです。
ZIPPからの履き替えで+125gくらいになりますが、ロードレースのスピード域だと軽量性よりもバランスの良さが重要かと思い始めました。
ちょい乗りもしくはいくら練習で5時間じっくり走りこんでも、average30km/h前半の走りと4時間Ave40そこからアタックありのレースでは使用環境があまりに違うので、実際長期的にレースで使用しないとホントの評価は下せないんですよね。
そういう点を考慮すると、ヒルクライム以外では超軽量ホイールは犠牲にしている事もあるのかな、と考えています。(フレームにも共通することですが、ちょい使用で非常にイイ印象を得るのは絶対に剛性を確保した軽量モデルです。)

Racing Speedが良かったら是非Racing1かzeroを練習用で使用してみたいです。

長々と失礼しました。

投稿: RoppongiExpress | 2009年5月14日 (木) 13:34

LIVESTORONGさんにはプロショップを出店して頂きたい位感銘しております。

私のご近所でなければ、、、。

今回も素晴らしい表現力に感心しきりです。

>racing1とracingZeroの違い
ここだけ加筆をさせて頂くとZeroはスポーク自体もニップル側以外のスポーク中央のエアロ部分が進行方向に1mm程削ってあり軽量化に気を遣っております。
素材の違いによりニップル外径は0.5ミリZeroの方が大きい分その穴のため削り方が違っています。
ハブシェルのシェイプも若干異なります。(中身は一緒ですが。)

R3とZONDAとの比較で言うとデザイン以外は体重によりお選び下さいと言うところでしょうね。
(厳密に言うと違いますが、その辺で察してもらえると良いですね。)

投稿: K-MOTO | 2009年5月14日 (木) 15:58

>>スポーク破断は95%くらい後輪のドライブサイドで発生するが、

文脈と離れてる事ですが、これは経験則ですか?
自分は手組みホイルで反ドライブサイドしか折れた事がなく、「ロードバイクの科学」p173,L35でも'私の周りではたいていL側の引っ張り側が折れています'と書いてあります。
完組だとドライブサイドが折れるのでしょうか。

投稿: ahs | 2009年5月14日 (木) 23:06

ロード乗り始めた初期から見させていただいているので、
(正確にはフルクラムを調べていてたどり着いたような記憶があります。)
そこでフルクラム対マヴィックを読んで見た目も価格的にも
ですがRACING7を選んで買った記憶があります。
まぁそもそもあれ以来MAVICは眼中にありませんが・・・。
まぁカンパが作ってるだけあって、間違いはないホイールだと思いましたね。
以前試乗会で乗ってみたとここでも長々と書かせていただきましたが
586+R0、SLX01+DV46Tはカーボンのほうが軽さは確かにありますがほぼ印象は互角でした。
R0のあまりにも軽くシャキシャキ進もうとするので思わず河川敷の坂を上らせてくれといった記憶があるほどです。
Racing系統のシャキシャキした反応性と硬さがやっぱりしっくりくるのか、Reynolds attackがかなりぬるいと思ってしまったこともありました。
個人輸入すればボられないですしチューブレス対応でないほうがむしろいい(きしめんスポークがいい)ので空力を求められる場面がこない限りカーボンホイールの必要性はないような気がしてきました。
何でも実践系のLIVESTRONGさんとは違い、ボクは卓上理論系ですので(笑

上でプロショップ展開なんたら書かれている方がいますが
ショップでなくてもいいのでLIVESTRONG博覧会とでもいうか展示会とでも言うか
レア率が非常に高いとか日本での取り扱い認知度が低いお勧めのブランドとか
そもそも日本で取り扱いがないゲテモノとかの紹介展示場なんかしてほしいですね。
愛車の構成遍歴を写真で残してある分は壁に飾ってみたりとか・・・。

また、長々とすみません、カリスマ性のある文面と検証いつも楽しみにしていますm^^m--m

投稿: 秦璃 | 2009年5月15日 (金) 14:38

はじめまして。

Racing 3 をばらしたので、リム重量についてコメントしておきます。
2009モデルの前輪のみですが、リム単体で470gでした。

「そこそこ」な数字ですね。

投稿: おたむたん | 2010年6月21日 (月) 13:33

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