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2009年5月13日 (水)

遂に姿を見せた「スイッチ」

開催中のGiro d'Italiaで、名前だけ散々出ていたDURA-ACE Di2用の「サテライトスイッチ」が遂に姿を見せた。

Columbia_di2_shifter

コレだ。

Di2が出たときから、この「サテライトスイッチ」の話がシマノの人自身の口から何度も語られていた。
Di2では好きな場所に「サテライトスイッチ」を付けられるようになる大きなメリットが…ウンヌン…。

だが、今まではデュアルコントロールレバーとバーエンドシフター、ブルホーン用デュアルコントロールレバーの3つしかその姿を見せていなかった。Di2のシステムそのものは既に販売も開始されたが、とりあえず出回っているのはドロップハンドル用のデュアルコントロールレバーだけで、バーエンドシフターやブルホーン用デュアルコントロールレバーはレースには投入されて続けていても市場にはまだない。ましてや「さてらいとすいっち」に至っては、名前だけは何度もしつこく出てくるのに肝心の姿は実物どころか広報写真すら見せないままが続いていた。机上の空論グッズ、Vaporware状態だったのである。

しかし「ジロ」で遂に姿を見せたことで“シーズン真っ盛り”の頃には販売開始されるのがほぼ間違いないものと思われる。このスイッチの存在は紛れもなく電動化する大きなメリットの一つなので、いっけん地味だけどれっきとした「本命」アイテムだろう。

ただデュアルコントロールレバーを軽く小さくなんてコトでいいなら、金と技術を突っ込めば相当なレベルまで行ける。商売上の観点からそこまで金とか技術を無理して突っ込まないだけで。「250gでも機能を落としてない代わりに30万円の新型デュアルコントロールレバー」じゃあ、マニアックな人間からは誉めて貰えるかも知れないけど商売として200%失敗するのはわざわざ実物を出して試してみなくてもわかりきったことだからどこもやらない。だが、こんな風に「スイッチ付けるだけで自由にシフト場所が増やせる」は、現行のワイヤーシフトシステムをベースにどれだけツメたものを作ろうともただその一点だけでもうついていけない、Di2の「他じゃ何やっても真似できない売り」となる。ワイヤー式シフトでシフト場所を増やすアイデア商品の試みはけっこう前から細々と続いているが、面白くはあっても実用的には相当無理がある製品ばかりで完璧なものは一つもない。それはたぶん金を突っ込んだからどうにかなるものでもない。

だからこれこそ本命なのだ。

FDの自動トリムといい、いよいよ「人間はキカイの操作に神経を使うのではなく、ただ走ることに集中する」システムが立ち上がろうとしている。たとえば変速するためにハンドルを持ち替えるのは、そのような操作に慣れきっていてそれがやらなければいけない当然のことだと思い込まされているから違和感を感じないだけで、冷静に見つめてみれば「人間がキカイ側の都合のために余計な動きをさせられている」それ以上の何物でもない。不要になれば、走ることにより神経もエネルギーも集中できるのだ。

パワーメーターと連動して最適なギアに自動変速し「乗っている人間のチカラを余すとこなく使い切る」思想の高度な自動システムが将来現れたとしても、それは退化じゃあない。もしそれを退化だと思うなら、走ることと機械の操作に過ぎないことを混同してごっちゃになっているからそう思えてしまうのだ。もちろん、走ることよりも機械の操作が好きだとして、その好みそのものは、クラシックカーに乗る趣味がれっきとした趣味として成立しているように何ら悪いことではない。が「走るためにどうしても必要なこと」と「走るために今のところ仕方なくやっていること」は別物なのだ。その仕方なくやっていることに意義を見いだし価値を与えるのは自由だが、さも必要で素晴らしいことだと無用に持ち上げると足元から掬われるときが来る。

自動車でABSが出た当時、プロドライバー達は「あんなのド素人が使うモン。レースでは役に立たない」とほぼ全員がバカにしたそうだ。だが、いざレー スにABSが使われるようになってプロドライバーはほとんどみんなが青ざめた。いつものポイントからブレーキングを開始するとコーナーに入る前にはスピードが落ち すぎてしまう、笑うに笑えない現象が多発したからだ。つまり今まで「プロの技」だと自認していたブレーキングは、実は「ド素人のアシストをするためのキカイ」以下の鋭さでしかな かった。本当に性能を使い切った走りが出来るなら、あるべきブレーキングポイントはもっと奥だった。それがABSにはアッサリできてプロドライバーにずっと出来ていなかった現実を突きつけられたのだ。そう時を要せず、使わない人間は勝負に参加できなくなった。ABS否定論は何も知らないアホウであるがゆえにほざけた失笑モノの御託 だったことが、いちばん言い訳のできない環境で実証された。

たぶん、今のところはエレキシフト否定論の人はけっこう居ると思う。趣味ならそれは全然問題ないし、誰に気兼ねする必要もない。だが、あまり声高に吹聴すると、ABS否定論を吹聴して青ざめたかつてのプロドライバー達の二の舞にいずれなるだろう。

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コメント

プロトタイプはParis-RoubaixでSKIL SHIMANOが使用していましたけど、少し形が変わりこれが完成形なのでしょうかね。

投稿: mook | 2009年5月13日 (水) 00:44

パリ〜ルーベの時に、スキルシマノの今西さんがブログに載せたものとは形が違いますね。
色々試しているのでしょうか。
http://blog.leeimanishi.jp/imanishi/2009/04/post.html


投稿: ichicoblog | 2009年5月13日 (水) 09:07

はじめまして。

いつも楽しく拝見しています。

パワーメーターと連動までいかなくとも、

ケイデンスと連動くらいならすぐ出て来そうですよね。

一応技術者の端くれなので、エレキシフトは色々なアイディアを形にしたい魅力を感じます。

投稿: Ordu | 2009年5月13日 (水) 12:38

mookさん、ichicoblogさん、情報ありがとうございます。

実はそれも気になっていたのですが、たぶんこっちが完成形と評したらいいか、こっちの形で出るんじゃないかなと思ってます。案外「両方とも」出してくれたりしたらいいと思うんですが。用途によって使い分けるとか、アリだと思います。

Orduさん、仰るとおりケイデンス連動くらいはすぐできるでしょう。

だから、ケイデンス連動程度ではダメです(笑)
それでは十中八九「人がキカイを理解してあげないといけない制御」になって、自動化したせいでむしろ余計な神経を使う、一番やってはいけないタイプの自動化になってしまいます。

同じ100回転でも「100も回したらもういっぱいいっぱい」の初級者から、100では遅い人までバラバラです。同じパワーでも筋力と心肺機能のどちらに負荷をどれくらい振り分けて出すかはその人の肉体的資質によって変わってきますから、ただ単に回転を上げたり下げたりすることそのものにそれほど意味はありません。速い人がやる回転練習とかは、結局パワーが出る回転数を拡げ「パワーバンドを拡げる」ような意味合いですよね。このパワーバンドの広さも人によって随分と違うので「回せて、パワーバンドが広い」人と「回せるけどパワーバンドは狭い」人とでは同じ回転数でもナカミが違います。ワタシなんぞは明らかにパワーバンド狭いです。重いギアをゆっくり回すことはできません。回転を保てない状況=スローダウン、です。LSDですら平均ケイデンスが110超えます。TT走をやるとスタートゴールの平均ケイデンスが120くらいになります。そのくらいアホみたいにグルグル回します。これはそれ以上重いギアだと最後まで脚がもたない理由によるもので、回せるから偉いとかそんなつまらない話ではありません。むしろ回さないと走れない少々情けない話ですね。

自動制御までやって意味があるなら、その人の資質に応じていかに効率よくその人のパワーを引き出すかですよね。それが出来ないなら、勝手に動きまわる邪魔なキカイになるだけ。そのうち「お前ウルサイから黙ってろ」とスイッチを切られます。
パワーメーター連動なら、その人の「パワーが出る領域を保つように」変速できます。たとえばゼロスタートの時でさえ全力加速しているのかただスタートしたのか、違いをキカイ側がはっきりと認識可能です。パワーがまるで違いますからね。そうすると制御もそれに応じて変えることができる。ただスタートしたなら順繰りシフトアップだろうし、フルパワーでスタートしたなら回しすぎてタレる回転数に至る直前でシフトアップですよね。
スピードとケイデンスだけモニタしてもそれはできません。

投稿: LIVESTRONG 9//26 | 2009年5月13日 (水) 13:12

いつも更新を楽しみにしております。
Di2のサテライトスイッチですが、なぜこちらの形の方がファイナライズされたものだと確信されたのでしょうか。
単純に興味が有りまして、お聞きした次第です。

投稿: lubs | 2009年5月13日 (水) 19:21

楕円ギヤを最適にシフトしてくるなら,すぐにでも電動を導入したいです。
誰か,試した人はいませんか?

投稿: NIST | 2009年5月27日 (水) 17:43

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