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2009年6月14日 (日)

ますます「PowerTapの時代」ですか?

やはり「PowerTapの時代」なのか。
SRMは、チェーンリングを変えた時はスロープ値が変化する可能性が高いのでSRMに送り返しての再校正を薦めるエントリを公式Blogに書いている。

これは、以前からコアなユーザーサイドで指摘されてきた事柄らしい

「チェーンリングの剛性の違いによって測定結果が案外容易に左右されてしまう」

問題を公式に認めた事になる。

SRM公式の出荷時スロープ値は、結局「純正」つまり最初に装着されているチェーンリングに合わせて測定されており、剛性が異なるもの(違うモン使えば当然剛性も違うわな)に組み替えると値が変わってしまうようなのだ。これは、変な話だが元より高剛性のものに組み替えても測定誤差が生じる点では良くならないと思われる。「もと」より歪むものに換えても歪まないものに換えても「変わってしまう」点では同じだからだ。

これらの問題に関してはワタシが今更取り上げなくても遙かにちゃんと研究もしている人達がさんざん調べていることで、知っている人からすれば「今更」なのだけど、SRMは昔ながら(?)のまん丸なスパイダーアーム

Srm_t

を持っていた(「Track」「Science」モデルが今でもこの形式)ころに較べ、軽量化を目指した肉抜きがどんどん進んだ結果、スパイダーアームとしての剛性が落ちてしまってチェーンリングの剛性変化に神経質な構造へ変わってきたらしい。

Srm_wireless

この話を聞いた限り、CinQoが後継機種CinQo Saturnで奇しくも初期型SRMに似た丸いスパイダーアームを採用してきたのは偶然ではなさそうだ。これは重量の面ではやや不利な筈(だからSRMは 歴代で段々肉抜きの度合いが上がってきている)だが、CinQoにしろSRMにしろこれが「測定機器」としての側面をもつ以上、SRMが思っていた以上に「必然の形」だったのかも知れない。

パワーメーターを2つ3つと持っている人なら誰でも気付く(そんな奴が一杯いるのかよ。我ながらアホウな前提だ。笑)と思うのだが、SRMはチェーンリングを交換した後の暫くは必ず測定値が不安定で“動き”がある。具体的には、同じパワーで駆動しても測定値が少しづつ変わっていく。これはチェーンリングに駆動トルクがかかってボルトとのクリアランスのなかで微妙にズレて行き、これ以上動かないところまでズレきって落ち着くまでの間続く(これはワタシの経験に基づいた「想像」で、きちんと調べたわけではない)ようだ。そしてチェーンリングが落ち着くと安定した値を出すようになる。この“症状”と呼んだらいいのか“持病”と呼んだらいいのか、このへんはまあ普通に気付く(?)事で“落ち着く”のを待てばいいのだが、本当に理屈通りの正しい測定値を出すためにはチェーンリングを交換した段階でSRMに送ってスロープ値から校正する必要があるようだ。SRMは歴史があるぶんユーザーサイドでも研究され尽くしているようなところがあって(チェーンリングやSRMそのもののモデルに絡む剛性の問題をSRMが認めるよりずっと早くから指摘し続けていたのもヘビーユーザーだった)校正方法も確立されているから自分でもやれるのだが、これは「出来る」だけで「カンタン・お手軽」ではないし、ワケ解ってない人が手を出すと余計狂う可能性も高く、誰もが「オレもいっちょSRM校正してみっか」ノリでホイホイ手を出す領域ではないのは間違いない。

不思議なことに、同じStrain Gaugeを使用したパワーメーターハブであるPowerTapでは、わざわざバラさない限りこのスロープずれ問題が起きないらしい。使ってみての経験上も確かに起きないように思う。PowerTapは安定している。内部構造の設計がうまいのか?

バッテリーがユーザーサイドで簡単に交換できる事と併せ、ムズカシイこと考えずトレーニングとパワーペーシングだけに集中したい人はPowerTapが一番かも知れないなとますます思うようになってきた。現実問題として、よほどお金が有り余っていてSRMを2セット(90万仕事だ!)買える人でもない限り、チェーンリング交換の度にSRMに送って校正では時間も金も掛かってシャレにならん。そしてチェーンリングを交換するのは、走り方にもよるがそんなに希有な話じゃない。山で小さくし平地でデカくする(元に戻す)のは何ら珍奇ではない普通の使い方だが、そのたびにメーカー送って校正だと?冗談はよせ。

現状ワタシのSRM使い方も、予備知識無しで見ればけっこうおかしな使い方なのだが

SRMを、PowerTapとだいたい同じ値を出すようにスロープ値を“校正”して使っている。

のだ。つまり、そのくらいPowerTapを信用している。理由は簡単で、上記のスロープ変化の公式表明ウンヌン以前にSRMはどうもチェーンリングを換えるとしばらくは測定値に“揺れ”があることを経験的に気付いていたからだ。具体的には、どうも実馬力(笑)より高めの数字が出る。不思議とPowerTapはスプロケットを組み替えてもそれがナイ。いまやウチじゃPowerTapは単なるパワーメーターだけじゃなく、SRMの校正用でもある。チェーンリングを換える度に、ローラーで1時間走っての平均パワーで両者の差が1〜2%内外くらいに収まるように追い込んでから単体で使う。もちろん(?)だが、SRMをPowerTapに合わせていて、逆はない。深く考えずにそのように使ってきたが、よく考えればPowerTapに絶大な信頼を置いているわけだなこれは(笑)

PowerTapを使う場合

  1. 山用の超軽量リム(EDGEであるとかの)を使って組んだやつ
  2. 練習等々、走行全般に使えるやつ

の2つあれば基本的にはほぼ事足りると思う。ワタシは1未導入の2のみである。そりゃあ金がうなるほどあれば1も欲しいが、現実的にはこれ以上PowerTapホイールを増やすのは無理だし他のホイールと整合性がなくなる(用途がかぶる)など合理性にも甚だ欠ける。

TTとかすごく拘りたい人はこれにディスクホイールがあれば完璧だろうが、そこ(PowerTapホイール×3)までいくとカルく実売70万仕事か?さすがに「うひゃあ」なのだけど、それでもSRMを2本買うよりはマシなのと、PowerTapの場合「使い手があんまりゴチャゴチャ考えなくていい」度が図抜けているのが案外なによりデカい気がする。

SRMは意外と神経質で、やや古くさい意味での“レース機材”めいている。最近のレース機材の発想とは「ゴールまで100%発揮し続けられない性能は、無いのと一緒」になってきているような気がするのだが、それで行くとPowerTapがいかにもそんな感じだ。例えばレース前になって「うわあ電池切れだよ」って事に、PowerTapはならない。ハブ側にLR44×2個とCPUにCR2025×1個が使われているだけなので日本ならコンビニがあれば両方とも手に入るし、慌てて買わなくとも日常から電池が切れてしまう前に早め早めの交換を施して手間も金額も惜しくない。予備電池をいつもバッグに入れておく使い方もアリだろう。ところがSRMは前から書いているように電池の交換手間がハンパじゃない。作業そのものは電工に慣れた人間ならできることだが、なんせ使っている電池がヘンなので秋葉原にすぐ行ける場所にでも住んでいない限り「そのへんで買ってくる」などムリ。CPUも専用充電器で充電する方式だから、環境には優しいと思うがウッカリで充電が切れたら即座の対応はまずムリ。PowerTapで可能な「コンビニに走っていって電池交換即作動OK」とはいかない。校正の問題も含め「何もかも、常にキチッとできる人」が使うものだな、SRMは。ワタシはアバウトなところもあるので、時折SRMの「正しい使用法を要求する」部分が鼻につく事もある。SRMにはなんだか「お前が正しく使う限りオレは正しく答えるから、お前はオレを常に正しく使うように」と宣言するような態度がある。

たぶん、「実戦」で判断すれば現状ベストはPowerTapなのだ。

「どちらか一方だけ選べ」と命題を与えられた場合、何も知らなかった頃なら一も二もなくSRMを選ぶワタシだったのは200%間違いない。が、両方とも使い込んだいま答えるならPowerTapだ。パワーメーターが何のために何をするモノか、を考えるとSRMの脆弱性は看過しがたく、PowerTapの妙なまでの堅牢ぶりを高評価しないわけにはいかない。測定機器なのだから、変わらず同じ測定結果を弾き出すのは当たり前のようでいてとても大事な前提だ。信頼性に疑義がある測定機器など、存在意義が根本から揺らぐ。

が、なんせミーハーなホイール好き(苦笑)なので割り切ってPowerTapへの完全乗り換えは出来ないでいる。
いるが、理由はそれだけだ。単に、いつものホイールからとびっきりのタイヤ貼ったLightweightに換えた時のあの「うおおお!ウソみたいに加速するぜ」感を、エアロバトンホイールで40km/hを超えたあたりからの「なんかいつもと違って風が避けていくよぉ」感を味わいたいだけなんだろう。あれらは本当に麻薬めいていて、きっとワタシはその中毒患者なのだ。だからSRMを「校正」してでも使う。信頼性さえ担保されれば一番スマートなシステムである事実は変わらない。

だからそれこそ「PowerTap組み込みLightweight」でも出た日には即日SRMを売ってしまいそうである。それが必要であるから面倒臭いことでもやるが、面倒臭いことをやるのが好きなわけじゃないからね。

さすがに出ないだろうけど。

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コメント

ヘタレな自分ですが、最近Powertapを導入いたしました。HEDのJET6にPowertap Pro+をつけてもらったのですが、通常のホイール価格に、£625追加で購入できたので別途買うよりは割安かと。SL+だと£999+だったのですが、違いがわからなそうなのでやめました。この方法だとHEDのバトンホイールにはPowertapがつけられますね。山岳用の軽量ホイールは何が良いでしょうかね?

投稿: abearinlondon | 2009年6月16日 (火) 21:32

abearinlondonさん、おひさしぶりです。
山をエンエン登る場面以外ではハブの重さは運動性能にほとんど影響しませんので、十分ではないでしょうか。PowerTapは少しの重さの違いによる価格差がありすぎるのが欠点だと思います。

文中にもEDGEとだけちらっと触れていますが、いま手に入る市販の山岳用最軽量リムはたぶんEDGEのロープロファイル「25s」で、一応公表重量で200gを切っています。実重量200g前後でしょうか。山岳用と限ってしまうなら、これ以上のものはちょっとないと思います。伝説のXXX Lite 55でもリム重量200gは切っていなかったように思いますので。

投稿: LIVESTRONG 9//26 | 2009年6月16日 (火) 22:00

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