自転車に乗りながらリアルタイムでCdA表示可能な時代到来
iBike自体は、前から存在していた。
歯に衣着せずに書かせて貰うなら、出た当初のiBikeは「およそ使えないパワーメーター」であった。
ざっくり書くと「風力計を内蔵することで、速度と風力の差からパワーを概算する仕組み」を備えた、ユニークなメーター、それが最初のiBikeだった。着眼点そのものは面白い。
誰もが気が付く問題点。
それで向かい風/追い風はどーすんだ?
…どうしようもない。(笑)
そんなわけで、おそろしく使えない、パワーメーターとしてはほとんどゴミのような存在だった。同じ速度でも使うギアによって違うパワーが出るシュールな計測で知られるPOLARのPower Output Sensorよりも更にヒドかったかも知れない。これで普通のメーターほど安ければ別だが中途半端に高かったので、たぶん、実態がバレる前に飛びついて買った人が一巡したあとは壮絶に売れなかったと思う。
だが、Velocomp LLPは諦めなかった。
改良を重ね、遂に第三世代まで漕ぎ着けた。
しかもGIII製作にあたって目が醒めた。これがとてつもなく大事な転換点となった。
風力計で別のことをやろうとするんじゃなく、風力計にしかできないことをやろう。
この、シンプルでとても大事なことに気が付いた。CdA計測器への道が啓いたのである。
風力計のないいわゆる純粋なパワーメーターでも、空力のテストは出来る。
それこそあちこちでやっている。
パワーメーターを装着した自転車で走り「同じ速度を維持するのに最も少ないパワー」もしくは「同じパワーで最も速度が出る」パターンの空力がよいと判断する方法だ。しかも風洞実験と違ってこのテストでは実際に走っている時に起きる揺れ、ブレも含まれた「生きた数字」が出る長所まである(同時にそのようなブレ要素を排除しきれない短所にもなっている)。だがこのテストには重大な欠陥もある。パワーメーター自身は向かい風だろうと追い風だろうとまさに知ったこっちゃないので、風によって結果が物凄く左右され信頼性が損なわれてしまう問題だ。そのため、この「パワーメーターのみを使用した空力のテスト」は、風が一切吹かない屋内式トラックで行うのが事実上の前提となってしまう。同じトラックでも屋外式でやると厳しい。僅かな風でも簡単に10Wや20Wに相当してしまうから、屋内式トラック使用の前提が得られなければせっかく取ったデータサンプルも膨大な時間と手間の無駄になりかねない。それゆえArmstrongがCarmichaelやHedのスタッフとつきっきりでやったり、SKIL SHIMANOやRabobankがチームで実施した各選手のフォームの空力テストも全て「パワーメーター付き自転車+屋内式トラック」だった。
だが、iBikeには風力計がある。
風力計があれば、追い風/向かい風もちゃんと勘案し計算できる要素となる。速度、パワー、風力計、転がり抵抗の値が揃えば、そこから「現在の空気抵抗」を計算で導けるはずだ。
その通りのメーターを作った。それがiAeroだ。相変わらず意味のないパワーメーター機能もついていて苦笑させられるが、そんなゴミ機能はどうでもいい。最大のミソはリアルタイムCdA表示機能に尽きるだろう。なんせいま同様の機能を持つエンドユーザー向け製品はこれが世界唯一だ。
iAeroでは転がり抵抗値もちゃんと設定することができる(「測定」は出来ない)ようになっていて、信頼性のある転がり抵抗テスト結果値が得られる限り、タイヤの差による誤差さえも修正することができる。メーターの取り付け位置の関係でライダーや自転車の付加物が産み出す空気の乱れにより測定誤差がでないよう、フレキシブルのエアインテークを付けて乱流と無関係な場所から空気を取り入れ、より正確性の高い計測もできるオプションも作った。すげえぞiAeroは本気だ!
ホイールによる空気抵抗の違いまで計測するのは、タイヤの方式がTublar/Clincherで別れてしまう場合はどうあっても同じタイヤを履かせてテストすることが出来ないので、よほど信頼性の高いタイヤ毎の転がり抵抗テスト値が得られない限り微妙だと思う。が、もちろん同じタイヤでテストできるなら機械計測によるホイールの空力テストが遂にエンドユーザーレベルで可能になるし、それより自転車の中で最も大きな空気抵抗を生んでいるライダー自身のフォームの違いによる空気抵抗値の変化やボトルのような付加物によって空気抵抗がどのくらい良化/悪化しているのかの検証が、自分自身でしかも何回でも気の済むまでテスト可能になる上、どう変化しているのかをテストしながら把握することが可能だ。自転車を走らせる以上のコストもいらない。フォームの違いのテストは、パワーメーターと併用して使うのだから「このフォームは空力がいいが出力が下がる」「このフォームはパワーこそ出るが空気抵抗が最悪で、カルく30Wはロスしている」ような事も分かり、これは面白いと思う。その当人にとって最も効率の良いバランス点を探ることが、根気さえあれば可能になるのだ。エンドユーザー向けパワーメーターの測定誤差やiAeroの測定誤差を考えると1Wや2Wの違いで一喜一憂するのは大げさだろうが、なんにせよ調べることができないのとできるのとではエラい違いがある点は動かない。
iAero+ANT+Sportパワーメーター(SRM Wireless、PowerTap Wireless、CinQo Saturn)で、研究肌の人間にとっては夢のメーター環境実現か?
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