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2009年7月12日 (日)

「妥協、もしくは手抜き」なのか「どこまでも実戦主義」か。PLASMA 3 TT

SCOTTのPLASMA 3 TTが、あれほど気合いの入った作りなのにどうしてブレーキキャリパーの配置をごく普通のそのままにしたのか、その後ことあるごとに考えていて、遂に気が付いたことがあった。

Plasma3tt_rbr

この写真を眺めていた時だ。

リアブレーキキャリパーはBB斜め上後方に位置するような設計をしてある。
してあるのだが、DURA-ACEのブレーキキャリパーをそのまま使っている。

使えるようにしてある。

似たような処理をしてあるフレームであるcervelo P4、SPECIALIZED Shiv、TREK SPEED CONCEPTのように特殊な専用ブレーキキャリパーを使っていない。

もしかして、PLASMA 3 TTのあのブレーキ周りは

F/R共に、信頼性があり、何より「選手達が一番使い慣れた」ブレーキキャリパーを使えること

あえてこだわって設計したのだろうか、と思い至った。
だとすると、深いなこれは。
そして今まで気付かなかった自分はやっぱりシロウトだな(苦笑)

あれほど徹底した作りなのに、どうしてブレーキだけ突出して“普通”なんだ?

と、最初から物凄く不思議に思っていた。大したこと無いフレームであのカタチなら、おかしくない。しかし、近年勢いに乗っているメーカーのSCOTTが人材も金も投入し気合い充分で作ったことが随所に見えるフレームだけに不思議だった。ブレーキを隠すなどいくらでも出来たはずだ。それしきの造作、やろうと思って出来ないSCOTTではないだろう。じっさいリアのこの造形などは、パッと見よりもずっと大変だ。そこからは、専用ブレーキをBB下に配置した方がずっとラクなのにわざわざこの形にした形跡を見て取れる。つまり余計な手間が掛かっても普通のブレーキキャリパーをそのまま使えるようにした。ブレーキの重要性を譲れないモノであると考えた末に、フロントなどは「え?」と思ってしまうくらい普通なこのコンベンショナルなカタチにこだわったのだとしたら「SCOTTの設計陣恐るべし」と思ったし、この“実戦仕様”な思想は、もしかしたらHighRoadのリクエストも絡んでいるのかなと思った。なんせPLASMA 3 TT自体が「PLASMA 2では戦えない」とするHighRoadのリクエストから生まれたし、彼らはその前に専用ブレーキキャリパーを使用するGIANT Trinity Advanced SLを使っていたからだ。PLASMA 3 TTのデザインベースとなったのがTrinity Advanced SLであるのは疑う余地もない。(追記:後に判明したが、何と両者はデザイナーが同一人物である)それこそSCOTTはHighRoadから「コレと同じ機能・性能の奴を」とズバリなリクエストをされたはずだ。Trinity Advanced SLは特にエアロバー周りのセッティング範囲の広さと細やかさで図抜けたものを持っており、比肩するものはちょっと見当たらない。両者で一番違う点がブレーキキャリパーの扱いだ。違和感すら感じるほどコンベンショナルなPLASMA 3 TTと、専用ブレーキしか使えないフレームにしてしまったTrinity Advanced SL。その違いが使用上どう違うのか、間違いなく一番分かっているのがHighRoadだ。プロがレースを転戦するのに使う機材には整備性の良し悪しやリペアパーツの事も多いに絡んでくるから、専用品を採用するのが何でも正しいわけではない。

性能面でも操作感の面でも、プロが乗るTT用自転車に怪しいブレーキを使うのとヒルクライムレースに多少ヤバめのブレーキを使うのとは全くワケが違う。

プロが走るんだ。直線でトバすと普通に60km/hくらい出る。そこからのフルブレーキングが普通に行われ、見てる方が恐くなるくらいの速度でコーナーに突っ込む。ダラダラ減速していては確実にロスなので、ギリギリまで飛ばしてフルブレーキングだ。そのときスポンジーだったりグンニャリしたりでは試すまでもなく論外だろうし、効きが唐突だったりするのも確実にブレーキングに必要な距離を伸ばしコーナーへの突っ込みのキレを甘くさせてしまうだろう。使い慣れ効きやその感触を身体で覚えたブレーキを、そのまんま(「似たもの」や「同等のもの」ではなく)使えるのは、れっきとした「武器」となる筈だ。つまりPLASMA 3 TTのこのブレーキは、欠点ではなく武器。それを力業で「同等品」を作り出し「これに慣れるコトが速くなるコトだ」と主張するタイプが、SPECIALIZED ShivでありGIANT Trinity Advanced SLでありRIDLEY DEANでありTREK SPEED CONCEPTだろう。つまり、最近はコレに慣れろ式が主流。しかしそこでSCOTTは人を新しいキカイに慣れさせるのではなく、人が使い慣れたモノを新しいキカイでも使えるようにした。凄い大英断だ。明らかに最近の潮流には反している。が、それゆえ作り手と使い手が徹底して意見を交換した末に生まれたこだわりの仕様を感じる。なんせ実戦の中から、選手のリクエストで生まれたフレームだからだ。

「何故なんだろう」を、紋切り型思考で切り捨てるのは勿体ないな。こんなに面白いコトが見つかったりする。そして、ここまでこねくり回しておいてナンだが、案外真相は違ったりするかも知れないのだ(笑)。それもまた面白い。

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コメント

LIVESTRONG 9//26さんこんにちは。

確かに信頼性、整備性で専用品は劣りますね。

SCOTTは『PLASMA 3TTはGiro100周年記念モデルで、シマノ(PRO)との共同開発です。』
と発表していて、
ハンドルまでPROがPLASMA専用品を造ってしまうくらいだから、
シマノ側からも『パーツアッセンブルは全てウチの物を使ってくれ。』の様なリクエストが有ったのかも知れませね?

深いですね…。

投稿: Lightweighter | 2009年7月12日 (日) 11:37

こんにちは
最近はネタも豊富そうでblogを拝見するのが楽しみです。

確かによくよく考えればTTにおいてブレーキ性能は捨てられない要素ですね。割と盲点でした。
これにも14000㌦みたいな値段がつくんですかね(苦笑)

投稿: nYolo | 2009年7月12日 (日) 12:42

しかも78デュラなんですね

投稿: 菊6号 | 2009年7月12日 (日) 15:31

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