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2009年7月11日 (土)

戦略では勝てない。戦略がなければ勝てない。

開催中のLe Tour de France 2009、第7ステージ
Maillot Jauneは予定通りCancellaraの手を離れたが、意外にもAg2rのRinaldo Nocentiniの手に渡った。ステージ優勝は新進気鋭のクライマーBrice Feillu

ASTANAのContadorはたった6秒差の総合2位
同、Armstrongもこれまた8秒差で3位
同、Leipheimerが39秒差4位

なかなかMaillot Jauneを着ないArmstrongやContadorにじれったい思いのファンも多いことだろう。それこそ「ノチェンティーニって誰だよ?どんな選手?」な人も多いハズだ。

ワタシは、これはASTANA監督Johan Bruyneelの戦略だと思っている。

Nocentiniを「Maillot Jauneを着させておくのに丁度いい」と考え「やつが丁度いい。行かせろ。それ以上追うな」と指示したに違いない。Bruyneelは、そんな監督なのだ。事前に「今日は勝てる」と分かっているステージでも、選手を説き伏せてわざと負けさせたりする。

「我々が目指しているのは3週間の総合優勝だ。ステージを3つ勝つことじゃない」

と。
TTでさえ明日以降のレースのため全力で走るなとか仰天の指示を出したりする。実は本人も「勝つ」事が三度の飯より大好きで、そのためにずっと監督をやっており、かつて自分が必要だと思った選手を採ることに理事会がダメを出したとき、自分の給料から払うから採ってくれと直訴し本当に自分の給料から選手の給料分を減らして雇った事もあるくらい、勝つためには何でもやるのにだ。

つまり「勝つために徹底しているからこそ、十中八九獲れる目先の勝ちをあえて捨てる我慢ができる」くらい徹底した勝利への執念を持っている戦略家なのである。本当は全ステージ勝っての総合優勝をしたいくらい勝つのが好きだからこそ、総合優勝のために何でもやる。有名な2001年のLe Tour de FranceにおけるArmstrongの「ブラフ」*も、本人は嫌がったのをBruyneelがやらせたそうだ。そうして戦略家であることを見せつけてきたので、実は本当に調子が悪くて負けたって、周囲は「あれはワザとで、実は力を残しているんじゃ」と疑心暗鬼になる。彼はそこまで計算してやっている。

だから2009年のこの展開は面白い。

どこまでが戦略通りで、どこからは計算外なのか。
これからの山岳ステージがまさに見物だ。

おまけ1
このステージでGiroの新しいヘルメットをASTANAの面々が一斉に被って少し目立っていた。
一気に100gくらい軽くなった175gの超軽量ヘルメット。100gも軽くなると首への負担はえらいこと違うだろうし、山岳を高度差1000m単位で登ったら総重量100gの違いで必要なエネルギー量も意外なくらい違うはずだ。

おまけ2
Nocentiniだが、20代前半は成績でIvan Bassoと張り合っていたくらいで凄く期待されていた選手である。その後Bassoとは実績に随分と差が出来てしまったのだが、ここにきて(当年31歳)人生初のMaillot Jaune着用となった。その将来を嘱望された若手から苦労人の道を辿っただけに、率直におめでとうの言葉を贈りたい。

 

*山岳ステージでArmstrongがわざとヘロヘロなふりをして集団の最後尾まで遅れ、マスコミは「Armstrongが遅れている!肩で息をしている!今年は負けるぞ」と騒然となったが、ライバル選手達が「今日はイケるぞ」とアタックをかけ逃げたところで監督指示により“スイッチ”を入れたArmstrongは物凄い勢いで追いついたうえカウンターアタックをかけてライバルを一気にツブした。これ以来、Armstrongが調子の悪そうな様子を見せても誰も信用しなくなった。

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コメント

フェイユって第2ステージで3位になった選手かと思ったら、あちらは兄だったのですね。
ゴール前、新城が右に出ようとしたら、その前に先に出ていて、新城は左に回らざるを得なかったと見ましたが。
今回、同じ選手だったら、すごい新人だなと思ったのですが、兄弟だった。
でも、大選手になる素質はありそうですね。

投稿: band-aid | 2009年7月11日 (土) 20:30

>Nocentiniを「Maillot Jauneを着させておくのに丁度いい」と考え「やつが丁度いい。行かせろ。それ以上追うな」と指示したに違いない。

私もそう思います。
アスタナは総合優勝しか狙っていませんので、然るべき戦術だと思います。

序盤でマイヨ・ジョーヌを獲得してしまうとチームの負担が大きくなりますから、ライバルに致命傷を与えた上で、いつでも抜けるようなタイム差を保ったまま、勝負所まで進むという、アスタナにとってはこれ以上ない展開だと思います。

投稿: Carbon_Cloth | 2009年7月13日 (月) 14:18

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