« 日本初、LIVESTRONG センチュリーライド | トップページ | アレがこんなところに »

2009年8月27日 (木)

マジで「一家に一本」ですから。ええ。

単体マルトデキストリンが売っていた時も驚いたが、コレもびっくりした。
「自転車用」のTORQUE Wrenchが買えるまでになったとはAmazon侮り難し。

知る人ぞ知るこのトルクレンチ、FSA製ではない。

イタリアの小メーカーが作っており、ロゴを書き変えただけの全く同じモノが、ワタシが知っているだけでも少なくとも3社にOEM供給されている。例えば3Tの“純正”トルクレンチも全く同じモノだ。Effetto Giustaforza Torque Wrenchが元商品である。逆にロゴ以外何も変わらないので気分でどれを買っても同じ結果が得られる。値段もバラバラで、不思議?なことに「FSA」ネームのものが一番安く売っている傾向がある。

コレ、実にモノがいい。

幾つか長所があるのだが

  1. 小型軽量
  2. 設定できるトルクが2Nm〜16Nmである
  3. クリック型なので作業が楽

が主なものだと思う。小型軽量な点は群を抜いていて、これ以上小さいハンドルはなかなか見つからないくらい小さい。そして設定トルクが2〜16なのは「さすが自転車用として作った!」と感心する。このレンジを持つ商品、他分野ではまず見つからないのだ。大抵は1〜5Nmくらいのものと5〜20Nmくらいのものに別れている。そのこと自体は間違ってはいない。丁度「きり」がいい数字なんだろう。ところが自転車で使う場合、コレが予想外の不便をもたらす。自転車用の軽量パーツを締める場合、ステムやハンドル、シートポストクランプ等の指定トルクは3.5〜6Nmに集中し、クランク周りの固定ボルトのような部分だと10〜15Nmに集中する。典型的な例としては、SHIMANOのHOLLOWTECH IIのあの対向締めの固定ボルトの指定トルクが12〜15Nmだ。一般的なトルクレンチを購入するとなると、「5Nmまでのもの」にするか「5〜20Nmのもの」にするかで悩みどころが出てくる。自転車用には5Nmでは小トルクにしか使えず、逆に20Nmまであってもまず意味がない。しかも、遠出するときはどちらを持ち歩けばいいのだ。自転車乗りでトルクレンチを2つ持ち歩くヤツはちょっといない。それはもう自転車「乗り」じゃなくて自転車「メカニック」だ。

「ハンドル回り用に低トルクのだけ持っておいて、クランクなんて適当締めでもいいじゃん」と思うかも知れないが、HOLLOWTECH IIクランクのこの対向締めボルトは意外や意外HOLLOWTECH IIクランクのアキレス腱で、このボルトの管理がいい加減だったせいで走っている最中に左クランクがボロッ!と取れた例が実際にある。それでボルトが抜け落ちないようにプラスチックのインサートがランニングチェンジで加えられた(だから初期型のFC-7800にはこのプラスチックがナイ)くらいで、「オレはメカの天才だ!」と自認するのでなければいい加減に管理しない方が良い。

ダンシングしている最中に左クランクが抜け落ちたらどうなる?

間違いなく、トップチューブで股間にホームラン級の打撃を加えることになる。

ステム/ハンドル周りの指定トルクの大切さは今更論じるまでもない。みなバカ締めでカーボンハンドルを割ってから自分の無知とアホウ加減を思い知るわけだ。そこそこのカーボンハンドルを1本割るくらいならトルクレンチ買えちゃう事に、割ってから気付いてもそれは「後悔先に立たず」を絵に描いて額に飾ったら日展で特選な行動をしただけのことであって、おのれの馬鹿さ加減故に金をドブに捨てた事に変わりはない。

だからとSnap-Onのdigital TECHWRENCHを自転車の整備をするために買うのは明らかにオーバークオリティだろうし、これは高精度で使い勝手もよいが元が車用だから携行性など論外の一言。あくまで拠点での整備用だ。

Giustaforzaのトルク精度は±4%で、これはそんなに誉められた数字ではない。車用だと値段はそんなに変わらなくても2%とか1.5%を謳うものがゴロゴロ売っている。

が、それでいいのだ。

4%の精度で不足する部品は、自転車にはない。ようは4Nmで締めるべきところを何も考えず割れるまで締めたりネジをナメたりしなければ良いのであって、4Nmと設定して使うと4.xNmでクリックストップが効くならば自転車整備においては文句なしである。自転車には9000rpmで回転したりする部分はないからだ。自転車においてたぶん一番高精度な管理で作られなければならないのはホイール(BBもそうだったが、ポン付けBBの進化により技術と呼べるほどの技術を要しなくなった)だと思うのだが、コレはトルクレンチなど使わず昔ながらの手の感覚と経験に基づいた方法で、機械を使うことよりもたっぷり時間と手間をかけることにより作られている(一部メーカーではトルク管理も導入しているが)。あまりに「昔ながら」なので、他の業界の人が製造の内情を知ったら仰天することもちょくちょくある(「まだこんな家内制手工業時代の作り方をしているの!」と)らしい。

正直「自転車で走るときに携行する気になるトルクレンチ」となると、これ以上の商品を見つけるのは現状無理だと思う。何故ならGiustaforzaは初めから自転車用として設計製造されたほとんど世界唯一の商品だからだ。自転車用として総合評価して他に敵うモノがそうそう見つかるわけない(すぐ見つかるようなら商品を企画した人間の企画力に問題がある)のである。

|

« 日本初、LIVESTRONG センチュリーライド | トップページ | アレがこんなところに »

コメント

乗っている自転車がまだアルミパーツだらけな初心者です。締め付けに関していきつけの自転車屋は「回した感触ですよ」と言うのですがそんな違いがわかりません。

前からトルクレンチがあればカーボンパーツに踏み切れるのになーと思いながら、ネットで調べていてその誤差は大きすぎて初心者は使うべきではないという話が多くいまだできずにいます。どうも規定値まで連続して締め続けていった場合とキツくなったところでいったん緩めてからもう一度締め直すのでは値が違うといった、使う側の誤差の要素が多いようなのです。車両用の大きいトルクではなくカーボン向けな小トルクレンチならではの問題の様です。

とはいえ今冬には踏み切るつもりでいますが、そのへんをlivestrongさんがどのようにお考えか時間がある時にでも教えて頂けませんでしょうか?よろしくおねがいします。

トルクレンチはLivestorngさん推薦の物を前から購入しようと思っていたので安心しています。


投稿: おまんじゅうimac | 2009年8月28日 (金) 21:58

おまんじゅうimac さんはじめまして。
これからもよろしくお願いします。

機械ですから、使い方による誤差は当然あります。

世間は広いので、WERAのヘキサゴンレンチを菜箸の代わりにして「WERAは使いにくい」って怒る人だっているかも知れません。想像も付かない使い方をして失敗する人はいるでしょう。ではそれを恐れる余り何もしないのがいいんでしょうか。

日本人は「正しい」ことに異常にこだわり、何かしなければならないその時に「正しく」あろうとしすぎてフリーズする人がよく見受けられます。往々にして「間違って」いることへの凄まじい恐怖心すら持っていますよね。で、何が正しいかに口角泡を飛ばして議論するんですが、その間に作業していたら10回やり直せるくらいの時間を無益な議論に費やしたりします。

この場合必要なことは「締めすぎでパーツを壊さず、締め足らなくて外れたり回ったりしないこと」で、それ以上ではありません。規定トルク値をキッチリ叩き出す競争をしているのではないのです。必要なことを満たせばよしでしょう。

投稿: LIVESTRONG 9//26 | 2009年9月 2日 (水) 21:02

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: マジで「一家に一本」ですから。ええ。:

« 日本初、LIVESTRONG センチュリーライド | トップページ | アレがこんなところに »