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2009年8月31日 (月)

WERA ZYKLOP

以前に書いた通り、ワタシはSnap-OnのフレックスラチェットTH737とFHC737を絶大に愛用している。

…が、総合的にそれを超えたと感じる商品が遂に現れた。

Mk2n8622s

WERA ZYKLOP 8000シリーズ

見ると「ああ、TH737/FHC737を徹底的に研究したんだなあ」と思う。手にしたときの「道具としての精密感」は、比べるべくもなくZYKLOPが上だ。逆に故意のつや消し処理となっているZYKLOPと違ってSnap-Onのハンドルはメッキのキラキラした輝きが綺麗だし、このあたりは好みだろう。

  1. 全サイズのヘッドでプッシュキャンセル実装
  2. 全サイズのヘッドで72枚ギア実装
  3. ラチェットが軽くなめらか(特に3/8サイズである8000Bの軽さ・滑らかさはFACOMに匹敵する)
  4. 握りやすいことで定評あるWERAのドライバー用エルゴハンドルをそのまんま使用
  5. 首角度が固定されるため、首が“揺れる”ことが原因でナメたり抜けたりしない
  6. 直立させての早回しを更にやりやすくするため、中央部に垂直方向へフリーに回るカラーを付けた
  7. 直立状態でもプッシュキャンセルボタンが押せる
  8. 表面処理がメッキではなく梨地(つまり油が付いても滑りにくい)

など。
WERAはこのZYKLOPシリーズにかなり力を入れて売る気のようで、エクステンションなどの周辺グッズも同時発売している。そしてこれは力を入れて売るに値する商品だろう。

プッシュキャンセルでないのは、Snap-On 737系最大のウイークポイントだったと思う。これは実際に作業しない人には分からんことだが、油にまみれた手で触ると工具はすぐ滑りやすくなり、ソケットを「挿す」ことはできても「抜く」事がいきなり困難な作業になってしまう。工具が油で滑りまくるからだ。ましてやSnap-Onはピカピカのメッキ処理がご自慢なので油が付くと余計滑りやすくなる。このメッキ処理に絡んでの使いにくさはSnap-Onをコレクター向け床の間工具だと揶揄する人の突っ込みどころの一つになっており、実際ドイツの有名工具メーカーであるSTAHLWILLEやHAZETは、同等品がSnap-Onよりも更に高いくらいのおそろしい高価格製品群なのに梨地処理にこだわり続け、ピカピカした見栄えの良い「見た目の高級そうな」工具を作らない。しかも、FHC737のソケットは理由がよく分からないが抜き差しが異常に渋く、全く油が付いていない状態でも「ペンチで引っ張って抜きたい」と思うくらい抜けない事がしばしばある(1/4のTH737はさすがにそんなにキツくない)ほどで、作業を繰り返し油がベトッと付いた状態で抜くのは3桁の握力の持ち主でもない限り不可能に近い。またプッシュキャンセルの良さは、嵌合がユルめのソケットを使っているときでも不意にソケットが脱落することがない時にも光る。32mmのディープであるとか、ソケット側の方が半端なハンドル並にズッシリと重いソケットを使っていると、マジで「ソケットの自重でソケットが抜ける」事があるのだ。首振り+プッシュキャンセルの構造的欠点ともなりがちな「直立状態ではプッシュキャンセルボタンが押せない」問題も見事にクリアしている。

Mk2n8632

全ヘッドでキッチリ72枚ギアにしてきたところも素晴らしい。ラチェットハンドルを使いたい場合とは大抵「振り」が全周囲確保できない場所になる(逆に360度の振りが確保できるならラチェットを使う意味はあまりない)わけで、空転角度が少なければ少ないほど確実に作業時間が縮まる。FACOMの72枚ギアが長い間珍重されてきた理由もそこにある。Snap-Onは耐久性重視なのかラチェット数を徒に増やさないので、ラチェット数が荒いTH737/FHC737に対して大きなアドバンテージだ。

フレックスラチェット最大の長所の一つであった「直立状態での早回し」を、これ以上ないくらい徹底強化したのはZYKLOPの最大特長だろう。なんせハンドルがドライバー用をそのまんま用いているうえに直立状態での固定が利くため、直立させればほぼ完全にソケットドライバーとして使え、そのまんま本締めに移行できるし、逆もまた然り。ラチェットレンチとして弛めたネジ/ナットを、そのまま直立させドライバーと同じかむしろ速いくらいの勢いで弛められる。中央部に付いているカラーを持ちながら回せるようになっていることがそれを可能にしている。

Mk2n8631s_2

表面処理が梨地であることのメリットは既に述べた通り。見た目のピカピカ感では劣るが「工具とは何をするものか」を考えれば合理性はこちらにある。

欠点はたぶん2つ。1/4の8000Aはほぼあらゆる点でTH737に勝るが、3/8ヘッドの8000BはFHC737よりも重い。これはTH737に後から3/8ヘッドを組み込んだ作りであるFHC737に対し、全てが3/8専用設計されている8000Bの設計思想の違いがもたらす差だ。FHC737はヘッド以外の全ての部分が1/4用の作りであるため3/8ヘッドを持つラチェットハンドルとしては強度が低く、3/8だと思ってトルクをかけるわけにはいかない(自転車の整備ごとき作業では全く問題にならない領域の話だが)リスクを承知の上で使う工具で「メーカー自身が作った改造ラチェットハンドル」と呼んでいい、少し特殊な製品だ。Snap-Onにとって本来3/8用のラウンドヘッドラチェットは最初から3/8用として作られたFH747であり、これは逆に8000Bよりも重く大きいしラチェット数もZYKLOPには敵わないがFHC737より多い。汎用性を捨てた特殊ニーズ用ファクトリー改造品として作られたFHC737は軽くて当然なのである。それよりも最大の相違ポイントは、固定される事でブレを押さえ力が入るようにした首振り機構が「固定されてしまう」デメリットとなる可能性だろう。これはある。あるが、仮にSnap-Onのようにフリーだとしても現実には40度付近より“立った”角度でラチェットハンドルとして機能させることが可能かと問われれば、そんな浅い角度でかけられるトルクやカムアウトしてしまう可能性を考えるとノーなのが実際だから、作りとして無段階ではあっても実際に“使える”角度が全域あるわけではなく、力を入れたければ自ずと直角付近での使用しかあり得ないし、直立付近では変に動くと“揺れ”が生じて早回しの障害になるときも少なくない。実際、ZYKLOPで作業してみてもそんなに不利は感じなかったし、直立させて早回しするときは固定され軸が安定する事による高速回転を実感した。

まだ使い出して間がないのであらゆる場面での真価を見極める段階までは行っていないが、ギア数の増加やプッシュキャンセルの実装、定評あるグリップの採用など「同じ総合作業をするときにどのくらいの時間で終わるか」を比べたときZYKLOPは737を打ち負かす可能性が高い。特に、FACOMに固定ファンが付いた大きな原因ともなった72枚ギアは振りのスペースが取れないときはっきりとしたアドバンテージがあるし、Snap-Onがギア数を増やすのに熱心でない以上、大変明快な「他社の付け入る隙」だ。

もちろん、商品開発は後発の方が有利。

次はZYKLOPが追われる番だ。

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