「友達には首根っこ掴んででも読ませたい」と思った本
「高地トレーニング」について2009年現在これ以上の本はないのではないか?と思われるほど内容の濃い一冊。
とにかく、読んでいて「へえ!そうだったのか」「なるほど!」連発また連発。
「高度が及ぼす影響は何も運動していない人よりも非常に良く鍛えられた選手の方がよほど大きく受ける」
「自転車競技に於いて、高度が高まることによるパフォーマンス低下と空気抵抗の減少を天秤にかけた場合、最も好記録が期待できる高度は何メートルか」
「高地に滞在するだけでも水分消費量は劇的に増加する(どれくらい増えるかは読んでのお楽しみ)」
「高地滞在すると同じ運動をしても糖質と脂質の消費割合が変化する」
のような、知らない人にとっては目ウロコな内容大連発。面白いのは、特に自転車競技に限った本では決してないのに、自転車競技における実験結果が豊富な点。エルゴメーター等での実験が行いやすいからではないかと思うのだが、この点は読んでいて「どうしてこんなに自転車競技における実験結果が載っているんだろう」と気になったくらい。自転車乗りにとっては願ったり叶ったりの本だ。
「高地トレーニング」はナチュラルに体内のEPOを増やす方法だから有効だとされているのだが、実際EPOが増えたらどう変わるのかの人体実験結果(いわゆるErythropoietinを人為的に投与した結果)もちゃんと載っている(どのくらいのレベルの選手でどう投与するとどのような運動でどのくらいパフォーマンスアップしどのくらいで効果消失したかまで)など、とにかくきちんとエビデンスを確かめて書いてあるし、エビデンスのはっきりしないコトに関してははっきりしていないことを明記してあるだけでなく「効果はなかった」とする論文までもがきっちり掲載されている(理由の推察付き)など、ハウツー本であったり指南書であったりしないれっきとした学術書の域で書かれている。それゆえシャレとかジョークの類は一切登場しない。カタい本を読み慣れない人にとっては最初の数ページで目眩がしたりするかも知れない。
ここで相手がワタシの友人だとする。バカほどよく考えないとダメだから何だろうと読まんか!と命令さえするだろう。カシコイ人は、習慣づけなくても必要なとき必要なだけ考えてスマートに正解を導ける。バカはカシコイ人よりもうんと考えないとスットコドッコイな回答を出して自爆するのに、バカだから考えない。バカが考えもしないで選んでまともな道を歩めるハズがないのにだ。バカだから考えられねー、じゃない。バカほど考えなきゃダメなのだ。ここを勘違いしてはいけない。意識しての熟慮が必要ないのは、カシコイ人だけ。なのにバカは考えずカシコイ人ほど考えたりするのが現実だから余計に差が開く。自分でカシコイ人だと確信を持てないなら、意識して考えろ、と。友人でないなら、申し訳ないがどうでもいい。人には「いずれ失敗すると分かっている選択肢を選んで自滅する自由」もあるからだ。
この本、高いと思うかもしれないが驚くべきコトに訳本なのに原書より安い。これも信じがたいくらい有り難いことだ。
高地トレーニングに興味が無くても物凄く意義深い内容が洪水のように載っているこの本は決して高くない。
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コメント
たびたび意味不明なコメントするごんです。琴線に触れました。バカほど考えなきゃダメだと。バカだから分かんないと思ってました。バカだからこそ考えようと思います。友達じゃなかったけど助かりました。12月また京都行きます。そのころ地元では自転車は乗れないので仕事の出張なのに自転車もって行こうかとさえ考えています。やっぱりバカだ。
投稿: ごん | 2009年10月31日 (土) 09:16