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2010年1月 8日 (金)

チタンチェーンふたたび

YBN(ヤーバン)が210gのチタンチェーンを出すそうだ。
後述理由により「オール」チタンではないと思うが、出れば世界性軽量ロードチェーンとなるだろう。ただしSHIMANOが114LINKや115LINKの重さを公表しているのに対してこの重さは110LINKのものなので“大本営発表”指数を割り引いて見る必要はある。

お値段は180ドル予定。

いわゆる「車体も財布も軽くなる」系のパーツだ。

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YBN自身はチェーン生産専業企業で、自転車用にとどまらず、自動二輪車用やエンジン内に使われるカムチェーンの類まで作っている。自転車関連「メーカー」向けにOEM生産も請け負っている「隠れた大手会社」なので、チェーンとしての出来そのものの心配はさほど必要ナイ。あとは信頼性と耐久性だ。常識を覆すような特性の新しい合金が発明されない限りアルミチェーンは無理っぽいので、現状最も軽く作れる可能性があるとすればTi-6Al-4Vチタン合金で全部作ってしまう方法なのだろうが、

  1. もともと「難加工で歩留まりが悪いこと」が最大の欠点であるTi-6Al-4Vチタン合金で「同じカタチの細かい部品を大量に組み合わせて一つの商品」であるチェーンを作るなど、狂気の沙汰と評して良い類の商品企画である。値段はロードバイク1台分必至で、しかも信頼性が怪しいだろう。
  2. 実は、Ti-6Al-4Vチタン合金にとどまらないチタン系の大きな欠点は「摩耗に弱く、焼き付きやカジリが発生する」事で、これはチェーンの用途から鑑みるに「最も欠点が目立つ使われ方」である。超高級素材を使用してわざわざ最も欠点が目立つ使い方をするなど、この点でも最悪の商品企画である。
  3. Ti-6Al-4Vチタン合金の大きな長所は「高温環境に強く、高温下でも強度を保ち続ける」ことだが、この性質は自転車のどの部品に使っても活用されない。

そしてそこまでして作っても、そんなに物凄く軽くは作れない可能性が高いので、コスト的に全く見合わない。個人的にはあれば面白いグッズだと思うが。

ソコソコ軽量だが図抜けて世界一高価なチェーンだった事で知られたWippermannのチタンチェーン(これもオールチタンではなかった)もSHIMANOの10s化以降はとんと名前を聞かなくなり、Campagnolo 10s用までは出したようだがSHIMANO 10s用は出せないままラインナップからフェードアウトした。SHIMANO 10s用すら出せなかったのでCampagnolo 11s用はもちろんナイ。

YBNのチタンチェーンも今のところアナウンスされているのは10s用と9s用(どちらもSHIMANO用を指しているものと思われる。実はSHIMANO 10s用チェーンはCampagnolo 10sに転用すると下手したら純正よりもゴキゲンに動作するので実質的にはコレで何の問題もない)で、Campagnolo 11s用はまだだ。

れっきとした消耗品に180ドル。

だが

「1Kmあたりの単価はVELOFLEXのServizio CorseRECORDより全然安い」

と考えれば全くあり得ない高コストでもないのか。

チタンチェーンに金使うくらいなら高価なタイヤを惜しみなく使い捨ててゆく方がよほど“漢”であり“お大尽”でありまた「こいつは“走り”をワカっている」とは思うが。前にも似たようなことを書いたが、フレームに70万出せても1000kmでダメになるタイヤに1本1万はけっこー難しい。後者は「小銭を貯めた人」ではない金持ちの経済感覚でないと出来ない。同じ70万のフレームでも思いつきでポンと買う人と違い、粒々の小銭を長期間に渡って貯めに貯めて定価69万8000円のフレームを買うような人(ワタシもそのような人間の一員だ)にとって「消耗品」に高いモノを使うのは自己否定に近い。高い消耗品を使うこととは、粒々の小銭を営々と貯めて70万円に積み上げるアプローチの不成立を意味するからだ。1000kmでダメになる1本1万のタイヤをどんどん使いツブして行く走りを展開しながら粒々の小銭を貯めることはできない。逆に、非常によいタイヤをどんどん使いツブしていって平気の乗り手は「いつか買う○○」のために「いま」を犠牲にしない生き方をしている。これは「昔ながらの貯金好き日本人」には少ないタイプだ。どちらが出来る・出来ないは性格に依存しており、お互い簡単に真似できない。粒々の小銭を高いフレームを買えるほど貯められるタイプは高い消耗品の買い方や使い方がヘタで、高い消耗品を容赦なく使いツブして行けるタイプは粒々の小銭を貯めるのがヘタだ。

閑話休題。

チェーンは自転車の中でも高速で動いている部品の一つなので、軽くする意義は充分あると思う。
ましてやワタシが一貫して愛用し続けるO,SYMETRICでは構造的にペダリング中「チェーンが上下に踊り続ける」状態となるので、チェーンの軽量化はけっこうキクのではないだろうか。

レース本番及びその前後用としてのみ使うなら、アリかも知れないな。

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コメント

こんにちは。
以前新品のServizio Corseをエリート(トレーナー)で使って30分で駄目にした事が有ります(苦笑)
もう狂気の沙汰ですね…
周りから『勿体なっ!』と言われまくりました。。。

投稿: Lightweighter | 2010年1月 8日 (金) 20:20

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