RIDLEY NOAHの新型に見える方向性
RIDLEY NOAHの新型が発表された。
“遂に来た”感が大ありの「ブレーキ作りつけエアロロードフレーム」である。
昨今のTTフレームの趨勢を見ている限り、ブレーキ内蔵ロードフレームを
「いずれ出てくるだろうな」
と思っていた人は多いと思う。TREK Speed Conceptほどではないにしろ、一昔前の“タイムトライアル用フレーム”よりよほどシッカリと空力を考えてある造形だ。ヘッドチューブがはっきり長いとか、そのあたりがいかにもロード用ではあるけど。
これで先鞭を付けたメーカーが出たので、あとは増えるだけだと思う。
何故ならフレームはこれ以上異様に軽量化したところで「ごくごく一部のマニアには売れても、一番宣伝になる、観客が押し寄せTV中継されるビッグレースでプロを乗せて走らせることはできない」からだ。UCI管轄レースでは6.8kg未満の自転車は出走できないからね。そして自己目的化した軽量化は、少し宣伝にはなっても競争モンだからすぐに次の最軽量が現れてしまう。それを繰り返しているので、いい加減に開発費の回収が怪しくなってきてるんじゃないか?
6.8kgが「軽量化の結果」だったのは「今は昔」のハナシだ。
2011年6月現在、カーボンホイールを必要とせず6.8kgを達成できるフレームがゴロゴロ売っている。トップレンジどころか2番目3番目グレードでさえ完車6.8kgを切るメーカーが幾つもある。もはや軽いのは当たり前で「売り」ではないのだ。プロでパワーメーターが異常に普及したのも選手のほとんどがディープリムを使うようになったのもの、この軽さと無縁ではないだろう。今やトップグレードのフレームで普通に組んだら6.8kgを切ってしまうからだ。パワーメーターを装着しカーボンディープリムを履かせてなお、特に軽量化したつもりがないのに油断すると6.8kgを切ってしまうので、意味のないパーツを付けてみたり最悪錘を入れるようなやり方も相変わらず行われている。
昨今、ハンドルやステムで異常な軽量パーツは増えておらず、この分野は2009年くらいから進歩がほとんど止まっている事に気付いていた人はいるだろうか?
特に軽量化を謳っていないハンドルが普通に実測180g前後を記録したあたりで軽量化の歩みがドンと鈍くなり、それどころか昨今はそれなりに高価格なトップレンジの新製品として200g以上あるカーボンステムや250g近いカーボンハンドルが“高剛性”をセールスポイントとして売り出されたりするようになった。つまり、プロシーンではハンドルで微々たる重さをセーブし剛性を妥協してまで狙うべき軽量化などもうどこにもなくて、それよりも「どうせ6.8kgに合わせなきゃいけないんだから、基本性能さえしっかりしてくれたらむしろ少し重いくらいでいいよ」となってくる。ハンドルとかステムで変に軽量化しても代わりにどこか重くして辻褄を合わせなければならないのが鬱陶しいわけだ。
対して、エアロはUCIからダメを出されない限り幾らでも追求できる。記憶力のよい読者なら思い当たる通り以前にも取り上げたのだが、エアロを追求する商売には限りがない。軽量化は明確な数字となって現れるがエアロは具体的に比較可能な数字にし難いし、一旦良好な数字を出したとしても今度は「斜めからの風の抵抗を減らした」ような追求が幾らでも可能なので、やり出したらきりがなくて果てしない。全部を一気に解決する理想の答えも無いと思う。例えば以前取り上げたユニークな形状のディスクホイールZIPP Sub-9などは、様々な角度からの風への抵抗値を調べると同じディスクホイール同志で比べて「どの角度からの風にも最良最高ではない(ベストの形状が他にある)代わりにどの角度にも決定的弱点がない、特定の方向に極端に優れるのではなく様々な角度からの風に満遍なくそこそこ低い空気抵抗値を示す」非常に面白い風洞実験結果になる。この特性は他にない特異なもので、伊達に変わった形をしていないわけだ。これなどは詳細な実験データを詳細に比較して初めて分かる特性であり、数字を1個や2個抽出して単純に優劣を比べられるようなものではない。空気抵抗の追求は、軽量化のように一つの数字ではっきり比較する訳にいかないのだ。
今後、メーカーの開発力は「どのくらい優れた空力の専門家がいてどれだけ高いシミュレーション環境を持ち、風洞実験も飽きるほどバンバンやれるか」が決める時代になるのだろうか。
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コメント
NOAH FBのブレーキ、面白いですね。"こう来たか"と。
このブレーキの備え付け方はTTフレームでも使えますし。
軽いこと=高性能とは言えないところもありますからUCIの6.8kgルールは今尚絶妙なのでは。
投稿: yuwskey | 2011年6月26日 (日) 14:55