その名はBambino
時代はショートテールである。
いや本当に。
エアロフレームもエアロヘルメットも。
そこで、エアロな人(どんな形容詞だよ)からアツい視線を浴び続けていたヘルメットがある。
Team Skyが使っていた、KASK Helmet謹製のアレだ。
あの、かなり極端な、もうちょっとでトラック短距離競技用エアロヘルメット(≒尾っぽ部分がない)に近いショートテールヘルメット。2010年、姿を現したコイツに注目し早速問い合わせた勇者に対し、KASKから「2012年までは発売予定ないよ」とおそろしく商売っ気のない返事が来た事件には仰天させられたが、商売する気があるのか無いのかよくわからないKASKの超のんびり商法でも遂に名前が決まり、INTERBIKEで展示された。
KASK Bambino
だそうだ。
コレね。(画像 http://www.tririg.com/)
確かにSkyが使っていたやつよりもぐっと商品らしい外観になってきた。発売時期や値段等はまだ未公表。
意外と面白いギミック?が付いていて、バイザーはマグネットによるワンタッチスナップなのだそうだ。
デザインの主眼は疑いようもない。
「顔の凸凹を覆うため巨大なバイザーを付け、下を向いてモガいた時に空気抵抗にならないようにMinimizedされたテールのみ造形する」
だろう。つまり「最適化する」加点法ではなくて「欠点を少なくする」減点法により作る。長所を作ろうとせず欠点をツブす発想だ。各社のエアロヘルメットも、真面目に研究しているところほどこの傾向になってきている。実はGIROもUVEXも、未市販プロトタイプでこのBambinoレベルか更に短いくらいの、大型バイザー付きでほとんど尾っぽ部分が存在しないものを作ってプロに使わせてテストしている。GIROなどは複数のベリーショートテール試作をテストしている。
風向、いわゆるヨーアングルが0度の状態で使う限り、NACA翼断面が一番空気抵抗が少ない。
これは議論の余地がない。
だが、完全なNACA翼断面を持っていると、斜めから風が当たった時にはテールの影となる部分がドラッグを生み、空気抵抗を少なくするために造形された筈の長いテールがむしろ空気抵抗の発生源となる。
のである。この問題に着眼されたのはそんなに昔ではない。そこで工夫の余地が再発生し、自転車に限らず各社いろんな智恵を絞って今に至っている。最近の処理方法としてはNACA翼断面の後端をストンと切り落としたような形状が主流(自動車等でも)で、自転車のフレームでこの考えを取り入れたのがTREK Speed ConceptやBMC timemachine TM01、SCOTT FOIL等である。リムではZIPP FIRECREST、ENVE Smart ENVE systemあたりがこの思想に則った最新型だ。
ヘルメットの場合は乗車フォームが色々でかつ前向いたり下向いたりと忙しいので、完全な解を見つけるのは一段と難しい。まさにデザイナーのセンスとR&Dの両輪が噛み合わないと良い物は出来ないだろうし、乗り手との相性もあるだろう。
エアロヘルメットは最もコストパフォーマンスの高いエアログッズである。
エアロの研究はコンピューターの進歩と二人三脚で進んできたので、日増しに良くなるのは間違いないし、これからも面白いものが出てくるぞ、きっと。
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コメント
エアロヘルメットの進化を見ていると、空力に対する理論の変遷が手に取るように分かって面白いですね。
あとはUCIが余計なことをしてくれないことを祈るばかりです。
投稿: tossy | 2011年9月16日 (金) 18:35
通常のヘルメットにレースのグループ分けなどに使われる薄いカバーを被せるだけでも効果あります。と、敢えて断言。ベンチレーション穴を内側からテープなどで塞いで無効化すれば外見を保ったまま空気抵抗が削減できる…かな?
あと、1989年のツールでLeMondがFignonに最終TTで逆転して勝った時のヘルメットの尾っぽが切断されていることが興味深い。LeMondのことだから絶対に狙ってやっている…!筈…。URLは載せませんがYouTubeで見られます。
顎を引く程良いということは丸いヘルメットを被り出来るだけ下を向いて走るのが実は最適ということなのでは…。などとも。
投稿: yuwskey | 2011年9月19日 (月) 13:00