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2011年12月15日 (木)

彼らは選ばなければならない

2011年秋に走行不可なPrototypeのモックアップがスクープされ一部で話題になっていたが、cerveloから2012年に「P5」が出る。

スクープされていたプロトのままであるなら、今度こそ以前cerveloがP4発売前に出願して「これはP4か!?」と話題になったフォークと一体化する専用ステム/ハンドル周りの特許がカタチになる。

P4は、長らく一線級で居続けた名作P3に比べて短命に終わりそうだ。

発売された時点で既に「P3の細部を煮詰め改良したのは分かるが、革新性はボトルくらいしか見あたらない、他は素人でも考えつきそうな基本デザイン」だったのでこれは仕方ないだろう。革新性で売ってきたcerveloらしからぬ、傑作P3から大幅に変える事をビビって前衛的な造作を捨てP3に妥協したような作りだったからな。

今、タイムトライアル用フレームは一つの転換期に来ている。
これに対してcerveloがどのような答えを出すのかが興味深い。

P4では、デビュー直後にP4のデザイン上で最も革新的であり大きな売りの一つだった筈のフレームと一体化するボトルがUCIからダメ出し喰らったのが水を差した。このようにUCIルールに適合するように作る限り自由なイノベーションは著しく抑制される。おまけにこのルールブックには緩和の二文字は存在しないらしく、年々細目が追加され厳しくなる一方。しかしこのルールをクリアしなければ世界的な自転車レースのほぼ全てに出場できない。四の五の吐かさず従う以外の選択肢はないように見える。

そこで一つ大きなポイントがある。

かつてKING of TRIATHLON BIKEだったP3(当時はP3Cと呼ばれていた)の時代から比べれば、ライバルの台頭により随分シェアを落としてしまったトライアスロン市場だ。いま北米で明らかに盛り上がっているトライアスロン市場に対してcerveloはどのような答えを出すのかが問われる。トライアスロンはITUの管轄下で行われており、UCIのルールとは違うレギュレーションで動いている。例えば、当Blogでも以前取り上げたようにUCIルールではサドル先端はBB中心直上から最低でも5cm以上後退していなければならない(最近、これにサドルに形状加工を加えてはならないルールが加わったので、かつて流行したサドル先端を切り落とす細工は違反となった)が、ITUルールだとBB中心直上から5cm前までオーケーだ。なんと10cmも違う。これだけサドル位置が違うとポジションから使う筋肉から全然変わってくる。これはもう全く違う自転車だ。つまり、SPECIALIZEDが「トライアスロン専用設計、UCIルール無視!」のShiv TRIATHLONをコナ・アイアンマンでデビューウィンさせ「トライアスロン用バイクは専用設計こそ最強!UCIルールにも適合するような“妥協した”バイクなどもはや陳腐」レース結果で示したように、P5でトライアスロン専用設計思想を持ち込むのか否かだ。

Shiv TRIATHLONは、Shiv TTに部品を足したり引いたりした程度ではないイチからの完全専用設計だ。UCIルール適合に色気を見せたらあんな作りはできない。ヤルとすればShivのようにUCI適合バージョンとITU適合バージョンの二本立てが必要だ。そこで「cerveloの技術力とブランドネームがあればUCIルールに適合する作りであってもShiv TRIATHLONを打ち破れる」とくるのか?P4でP3ほど成功できなかった今のcerveloにそこまで自信があるだろうか?

cerveloがP5として出す答えに興味津々だ。

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コメント

モックアップを見る限り、フォークとシートステーにスリットが無いこと以外はUCIルールに適合しているTTフレームとしては現時点で最良の部類。しかし…。

まだその上があると分かっている以上、私としてはやってほしい。けれども…。

TM01のように設計だけして、とりあえずスポンサードしている選手に使ってもらって、そのあとは売るけれどもヘッド周りの設計からして必然的に完全オーダーなので凄く高い。けれども在庫を抱えなくてもよい。という方式でどうだろうかなぁ…。最早TTフレームは完全オーダーとしないとその性能を最大限に発揮できない領域に来てますし、流れもそっちに向かってますから。

RRのフレームも実はそうなんですけど、それはまた別の話ということで。

投稿: yuwskey | 2011年12月15日 (木) 15:59

Click and hold で多段シフトとどこかの記事で読みました。

投稿: Shinichi Hashimoto | 2011年12月16日 (金) 12:01

ttp://www.jitensya.co.jp/?menu=know&kid=33751
shivと同じく2系統できるみたいですね。
個人的には、UCI規定無視を謳うならブーメラン形状や昔のファニーバイクのような造形にするくらいのことをやってほしいと思います…
ITUの規則についてはほとんど知らないので、それが許されるのかどうかも分からないんですが。

投稿: 774 | 2011年12月23日 (金) 04:29

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