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2012年3月30日 (金)

1ヶ月6kg

先日痩身ネタについて取り上げたところ物凄い反響があった(直近4ヶ月における最多アクセス記事)ので、調子に乗って第二弾。

基本的に、痩身方法は日常的に運動している人とそうでない人で別物。

例えば1日30分のウォーキング程度の運動は誤差レベルの違いしかもたらさないし、ストレッチで痩せると思っている人は死ぬまで脇腹の脂肪とおさらば不可能。痩せるには前回書いたとおり「摂取熱量よりも消費熱量を多くする」以外の方法は一切ない。ここを誤魔化すと絶対に上手く行かない。

「運動では痩せない」とする主張は、上記のような誤差程度の運動を取り上げ運動全般を否定する紋切り型の思考誘導で、現実には運動量が多ければ絶食よりも早く痩せることが可能で、ある程度以上の強度と量を伴った運動には運動を中断している間も長時間にわたって基礎代謝を上げる作用があり、また運動で刺激を受けた筋肉を維持する作用もあるため、ナンセンスなダイエット(食事制限のこと。日本ではダイエットが痩身の意味で広く誤用されているが、必要なモノは食べるのもダイエットに含まれており、ダイエットとは痩身ではない)で筋肉を衰えさせてしまった事により引き起こされる「行き過ぎた摂食制限>代謝量減少>ますます痩せなくなり、より非現実的な摂食制限を必要とする体になってしまう」の悪循環に陥らない。

運動能力には大きな個人差があるので具体例を書くのは必ずしも良い結果をもたらさないが、ワタシの場合を挙げてみよう。

朝3時に起きて、朝7時までに2000〜2500kJの仕事量(=人間のエネルギー変換効率では消費エネルギー2000〜2500kcal)の運動を行う。もちろんこれだけの運動を飲まず食わずで行うなど人間には不可能な相談であり、むしろどう補給を行うかは必要不可欠なノウハウとなってくる。今のところワタシのLSDレベルの運動は730〜800kJ/HRであるが、LSDレベルにおいては脂質と糖質はほぼ1:1で消費される。仮に2000kJの運動を行ったとして、糖質だけで1000kcalを使用する計算となる。

絶食や徹夜でもしていない限り筋肉や肝臓にグリコーゲンとして少量の糖質が蓄えられている(寝ている間に脂質やタンパク質から糖再生が行われる)が、これは1時間程度で終わる運動でなければ期待しない方がいい(逆の観点から見れば、1時間以内に終わる運動で補給補給と血相変えて騒ぐ必要はさほどない)。特に肝臓グリコーゲンはこれを使い果たすと脳が自動的に運動停止命令を出すようにできており、この自動能は生命維持に最低限必要なグリコーゲンを確保しようとするもので、バイパスする方法はない。スポーツ界でハンガーノックと呼ばれている現象の多くが肝臓グリコーゲンを使い切った事により起きている。つまり、補給の誤り。ハンガーノックを起こした事を「そこまで追い込めたオレすげえ」的な自慢話のように語る人がいるが、大便を漏らしたのを自慢するのとあまり変わらない。

運動中の糖質摂取はハンガーノックの防止のみならずパフォーマンスの維持にも役立つ事が実験で確かめられており、運動の質を維持する観点からも「運動しながらちびちび糖分を補給する」のがベストの運動方法だ。そこでマルトデキストリンが登場する。残念ながら以下の数値は個人的経験に基づいたノウハウに過ぎないのでエビデンスがはっきりしていないのだが、1時間あたり250kcal相当の糖質をマルトデキストリンで、1.5gの塩分と合わせて供給し続けると何時間足を止めずにローラーを回し続けてもハンガーノックは起きない。200kcalにすると危険域となり150kcalだと遅延効果はあっても最終的なハンガーノック完全防止は難しい。この数字は仕事量(出力)によって左右されるので、体重が軽くて出力も低いならもっと少ない糖質供給でも運動し続ける事は可能になると推定される。が、なにぶん自分でしか試していないのでそのあたりは不明である。自分では1時間あたり50kcalから50kcal刻みで600kcalまで何度も試した(単発なら700kcalまで)が、300kcal以上では効果が飽和(4時間運動を継続している時点でも血糖値が100〜120前後に保たれた)して意味がなかった。

で、前出の通り総仕事量2000kJの運動を行った場合、使われる脂質が1000/7(kcal/g)≒143(g)で、運動により脂肪を143g燃焼する。ここで「脂質は1gあたり9kcalではないのか?」と思った人はエネルギーの基礎知識を有しているが、脂質独特の性質に付いての知識がない。脂質は9kcalのエネルギー価を有しているが、脂質1gからは7kcalの熱量しか取り出すことはできない。残り2kcalはエネルギーを取り出すプロセスそのものに消費されてしまうのだ。それだけ脂肪をエネルギーとして使うのは複雑で効率が悪く余計な体熱を生じ水と酸素を余計に必要とする。プロセスが複雑な脂肪燃焼回路は急激な出力の変化に弱く、いわゆる「スパート」時のエネルギーはほぼ100%グリコーゲン消費により賄われることもわかっている。マラソン競技においてアタックは1回で決めるべきだとされている理由でもある(何回もアタックをかけるほどグリコーゲンを消耗しトータルタイムは落ちる)。

運動後、寝るまでに生活で消費するエネルギーが2000Kcalとして、1200〜1500Kcal程度の食事をすれば1日あたり200gペースで脂肪が減少する(運動をしているので筋肉は増える可能性がある)。実際には、前回書いた通り糖質の減少に伴って水分も抜けるため開始初期には体重計ベースで1日あたり3kgくらいドカンと減ったりするが、水分が抜けただけで実質ではないので驚いたり喜んだりする対象ではなく、続けていくと計算値に収束する。

1ヶ月で、運動能力を向上させつつ脂肪を6キログラム減量できる。

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コメント

毎朝2500kcalの運動とは物凄い数値ですね、一般的な成人男性の一日の消費カロリーを超えているのではないでしょうか...

刑務所生活で激ヤセしたホリエモン氏について述べている管理栄養士さんのブログ記事なのですが
やはり消費カロリーVS摂取カロリーという結論になっています。
刑務所のかなり質素な食事でも65kg程度で釣り合ってしまうようなので、運動習慣のない中年男性がみんなメタボ化してしまうも無理はないですね・・・
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20120316/1331876352

投稿: ももい | 2012年3月30日 (金) 00:43

>大便を漏らしたのを自慢するのとあまり変わらない

深夜に大爆笑させていただきましたwww
この抱腹絶倒の言語センスがたまりませんwww

投稿: かげふさ | 2012年4月 2日 (月) 01:39

うーん、消費>摂取は確かに真理なのですが、
例えば私のような人間は明らかに摂取カロリーが上回っていても太らないですし、経験則から言って長期間運動を止めても筋肉落ちて若干脂肪が付くだけで体重自体は寧ろ減少傾向です。
(もちろん摂取カロリーも減りますが消費量の減少の方が顕著です。まあ筋肉→脂肪に変わって体重が同じなら蓄えているカロリーは大分増えていることになりますが苦笑)

消費>摂取を計算するにはLIVESTRONGさんの書かれた内容に加え、エネルギー吸収効率と代謝効率の個人差も勘案する必要があるのではないかと。
LIVESTRONGさんの場合日頃からの節制により吸収効率が上がっているため理論値が出ているのではないでしょうか。

それといくら消費>摂取とは言え無闇に飢餓状態を作り出すと吸収効率自体が上がってしまいますので、脂肪の燃焼で賄えない程に摂取を減らさないような配慮も必要ですね。
個人的にスポーツ選手としての最善は「LSDで脂肪は燃焼させつつも食事は充分に(消費以上も可)摂り、余剰分が出ても良いがなるべく余剰が脂肪ではなく筋肉の修復&生成に回るような配慮をする」ことが最善ではないかと思っております。

投稿: taa | 2012年4月 2日 (月) 12:13

どういった意図で敢えて一般の方は認知度の低いjを使われたのかはわかりませんが。
1calは4.1868jです。
jで書くと混乱しますのでcalとの併記などは控えられたほうがよいと思います。

投稿: コメント | 2012年4月 2日 (月) 12:33

お初にコメさせていただきます。ここの徹底した実践・検証にはいつも感心させてもらってまいす。
 

何とも30分程度のウォーキングでは誤差程度とのことですが、自分はメタボな友人には30分程度のウォーキングをおすすめしてますよ。
確かに運動自体の消費カロリーは誤差レベルかもしれませんが、そのことによって何もしないより筋肉量が維持されて、筋肉は常に無駄にカロリーをしてくれるので、意外とばかにならないと思います。
むろん、自転車乗りが付けるべきはそのような無駄な筋肉ではありませんが…
 

ちなみに、ローラー台を回してる間どうやってモチベを維持しているか、というような内容の記事を書いていただけるとありがたいです。
自分も朝回そうとがんばってはいるのですが、酷い時は30分くらいで飽きます…

投稿: ぞん | 2012年4月 2日 (月) 16:39

いつも、楽しみにブログを拝見させていただいております。
この話題は自転車乗りとしても、そうでない人にとっても興味深いものですね。

「コメント」様
1cal = 4.19J ではありますが、人間の消費エネルギーがすべて仕事(=エネルギーと等価)に変換されればその公式どおりになります。
つまり、1Jの仕事をするのに、ロスがなければ人間が必要とするエネルギーが1/4.19calとなります。
さらに、人間が1calを消費するようであれば、4.19Jの仕事ができるはず。
しかし、人間が消費するエネルギーと実際に行うことができる仕事の間には、大きなロスがあり、それが経験上1Jの仕事をするのに、1calのエネルギー消費を必要とするということです。
つまり、消費したエネルギーの1/4以下しか、仕事として取り出せない、非常に非効率な運動機関ということになります。

ちなみにご存知だとは思いますが、1J(ジュール)は1W(ワット)の仕事率を1秒行ったときの仕事なので、パワーメータの測定がWである以上、運動した内容としてJの単位を使うのは自然な流れだと思います。
また、JもWも国際単位系(SI、物理などの学問使われるべき単位))で、calはそうでないのですが、あまりに浸透してしまっているために、食べ物や消費エネルギーとしてはcalが使われている、という現状です。

コメント欄、おじゃまいたしました。
これからも興味深い記事を楽しみにしております。

投稿: Outsider | 2012年4月15日 (日) 13:15

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